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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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27.これは取り替えっこの遊びだよ

 以前、エリュを守る侍女は複数だった。減らして一人しか侍女がつかなくなった理由は、シェンの存在だ。圧倒的強者である蛇神は、魔族にとって最強の代名詞である。シェンがいるから、警備を緩めた。だが、他にも理由がある。


 今の段階でエリュを狙う者を炙り出す。彼らが手を組み大きくなる前に、芽を摘み取る予定だった。今回隙を見せて誘ったのも、そのせいだ。シェンは姿を変える魔法を使い、髪色を銀にした。瞳はそのまま赤だが、エリュの瞳が虹のように変化するので誤魔化せるだろう。


 お揃いの服を着て、ターゲットによく似た幼女が二人。迷ったのは一瞬で、二人一緒に攫われた。大人しくするよう言われていたので、エリュは両手で口を押さえて我慢する。叫んだり泣いたりしてはいけない。シェンが一緒だから平気と言ったのは自分だ。エリュは幼いなりに自分にそう言い聞かせた。


 エリュの心境を覗き見るシェンは、状況をつぶさに観察する。幼女だから問題ないと舐められたのか。それとも始末する予定だから気に留めなかったか。目隠しもされず、眠らされることもなく、二人は大きな屋敷へ運ばれた。


 宮殿の警備をどう掻い潜るのかと思えば、食料品を納品に来た商人の荷車に便乗した。これは羽のない二本足のドラゴンを走らせるもので、乗り心地は悪い。引かれる荷車の幌に隠れ、木箱に詰められた。そこから出された後は、屋敷まで一直線だ。


 ちなみに装飾品はほぼ取られた。戦利品というより、追跡魔法を警戒されたのだ。その時点で、ある程度範囲が絞れる。少なくとも、爵位持ちが関わっているはず。


「入れ」


 促されたのは地下牢ではなく、窓のない物置のような部屋だった。外へ出入りできる扉はひとつだが、続き部屋があるらしい。広さはエリュの私室の半分ほどか。悪くない。穴倉育ちの蛇神はそう判断するが、怯えたフリでエリュと手を繋いだ。引き離されないためだ。


 無言で中に入ると扉が閉められる。鍵を掛ける音が響いた。物理的な隔離だけらしい。そこでようやく声を出した。もちろん結界を張ることは忘れない。声が外に漏れたら、どちらが皇帝かバレてしまう。


「エリュ、よく我慢できたね。偉い。僕がエリュのフリをするから、エリュは僕のフリをして? これは取り替えっこの遊びだよ」


 事実上の囮だが、エリュに知らせる必要はない。遊びだと言い聞かせた。困惑した顔ながら、エリュは頷く。


「わかった。また話したらダメなの?」


「うん、僕が君をシェンと呼んだら黙っててね」


「いいよ」


 素直に頷くエリュの手を引いて、突き当たりに置かれたベッドによじ登る。高さが大人用なので、エリュとシェンには少し高かった。並んで座り、足を揺らす。


「ミリア、ケガしてない?」


「もちろん無事さ。それより、帰ったら一緒にお風呂で泳ごうよ。お湯をぬるくしたら遊べる」


「いいの?」


「ご褒美だからいいよ」


 嬉しそうに笑ったエリュだが、扉が開く音がした。錠を解除する音に、小声で「シェン」と呼びかけ合図を送る。ぴたりと口を閉ざしたエリュは、緊張した面持ちでシェンの手を握り返した。

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