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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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121/128

121.豪華で密やかな結婚式

 失われていた新たなる血族の発見により、皇族が3人増えた。お披露目はせず、彼や彼女らの結婚報告のみ行われる。


 報告の為の謁見で、最前列に並んだ3つの公爵家は、それぞれに配偶者を輩出した。アゲートはサザランド公爵家、ジェードはガスター公爵家、アンバーもアディソン公爵家と婚姻関係を結ぶ。結婚式は身内のみで行う旨を通知し、シェンは頬を緩めた。


「守護神シェーシャ様のご加護を」


 結婚式で必ず口にする挨拶が、各公爵家へ向けられる。当主が進み出て、一斉に頭を下げた。これで報告も終わり。公爵家と皇族、今回は僕や他国の王族が参加して結婚式を行う。これはエリュの望みだから。


 叶えられる限り、あの子の望みは受け入れるつもりだ。両親がいないのなら、ベリアルとリリンが穴埋めを。魔力や後見が足りないなら、僕がサポートすればいい。これは僕の贖罪だった。






 報告から半月後、花嫁や花婿が互いの配偶者との愛を誓った。見届けは蛇神シェーシャである。いつもの幼女姿のままだが、祭壇前に用意された椅子に腰掛けた。当然のごとく、隣に座るエリュも着飾っている。


 二人で双子のように同じデザインで、色だけ正反対のドレスで出席した。ナイジェルとリンカも、各々、民族衣装で参加する。ベリアルは正装で微笑み、リリンは胸元から首筋までレースに覆われた赤いドレスだった。


 幸せそうに微笑み合う花嫁のドレスはすべて白、花婿の正装も白で統一される。胸元に飾る花を、それぞれの公爵家に合わせて変えていた。


 公爵家の一族も集まったため、参加者を限定した割には大規模な結婚式である。集まった者の肩書きを考えても、非公開とは思えない豪華さだった。様々な料理が並び、酒が運ばれてくる。侍女バーサやケイトも駆り出され、青宮殿は留守番役のメレディスに任された。


「ケイトやバーサも、一段落したら宴に加わってよ」


「そうだね」


 皇帝であるエリュやシェンに言われたら、断る理由はない。離宮の侍女にも声をかけ、全員総出で祝った。笑顔が溢れる宴が終わり、離宮は再び静けさを取り戻す。エリュと手を繋いだシェンは、隣を歩く友人達を見上げた。


「リンカ、ナイジェル。ありがとう」


「どういたしまして。皇族と公爵家の極秘結婚式に呼ばれて得した気分だ」


「そうだよな、俺らは特別扱いされたんだぜ。幸せそうな新婚を3組も見たら、いいことありそうだ」


 二人で前向きな発言をして笑う。その笑顔に嘘はなかった。彼らと知り合えたことが、エリュにとっても良い方へ働いている。学校で学ぶ彼らに触発され、最近は勉強を始めた。文字の読み書きを終え、もうすぐ歴史の授業に入るらしい。


「この国はさ、神様の距離が近いだろ? 俺の国はそういうのないから、羨ましいかな」


 人族であるナイジェルにとって、神は届く距離にいない。神殿は金の無心に忙しく、あまり好印象がなかった。魔族は常に神の手に守られている。それが羨ましくもあり、どこか不思議な感覚をもたらす。地続きなのに、異世界にいるような違和感だった。


「人族を守護するのは、確か……狐の神じゃなかったかな?」


 記憶を探り、かつて顔を合わせた同族を思い浮かべる。シェンの呟きに、リンカも会話に参加した。


「私のところは犬神様だぞ」


「神様ってたくさんいるんだねぇ」


 感心しきったエリュの声に、皆が「そうだね」と相槌を打ち、到着した青宮殿を見上げる。明日からも同じ日常が続くのに、新鮮な気がした。

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