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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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101/128

101.実践で覚えるマナー

 夜会は昼間の祝賀会より豪華な食事が並ぶ。種族ごとに食べられるものが違うこともあり、料理の種類は多種多様だった。卵料理だけでも16種類ある。


 壁際はびっしりと料理の机が並んだ。中央はダンス用のスペースではなく、料理を食べるための机や椅子が置かれている。夜会というより、どこかの広場の屋台村に近かった。


「魔族は料理を重視するんだよね。もてなしといえば料理」


 飲み物や酒も重要だが、まずは食べ物だ。きちんと種族特性を理解して料理を用意する、その気持ちが重要視されてきた。ふむふむと頷くナイジェルは、国に話を持ち帰って利用すると言う。魔族の貴族と交易があるので、彼の国は他国より一歩抜きん出た対応と評価されるだろう。


 友人にこういった話をして優遇しても、特に問題視されないのが魔族だ。基本的に大らかで己と違う外見や能力の種族を尊ぶ。人族や妖精族にはない気質に、リンカも感心した様子だった。


「リンカ様にはこちらを」


 ベリアルが侍女に用意させたのは、希少な葡萄や木の実であるナッツの盛り合わせだ。妖精族が好む通り、加工をせず並べていた。


「ありがとう」


 礼を言って受け取ったリンカは、すぐに葡萄を口に入れた。これは妖精族の特徴で、嬉しいと示すために行われる返礼のひとつだ。ベリアルは外交も担当するため、リンカに一礼して感謝を示した。


 互いの風習を理解しているだけで、外交はこんなにスムーズに行うことが出来る。ベリアルは身をもって、主君であるエウリュアレに教えるつもりだった。


「ナイジェル様はこちらにご用意しました」


 リリンが運ばせたのは、柔らかな白パンに挟んだ肉料理だ。野菜と肉を香辛料で炒め、甘辛くしてパンに挟む。食べやすいよう数カ所にナイフを入れてあった。


「うわっ! もう懐かしく感じる。ご馳走だな。気遣いに感謝する。ありがとう」


 受け取ったナイジェルは、口頭で礼を伝えた。リリンが目を伏せて下がるのを待って、パンを齧る。もらってすぐ人前で食べるのは、人族では卑しいとされてきた。この習慣も知っていれば、人族が喜んでいないと勘違いするミスを防げる。食べるのを期待して見守れば、相手が口を付けられないと理解することも大切だった。


 二人の行動の違いに、エリュは素直に質問した。リンカやナイジェルも隠すことなく答える。逆に魔族について質問され、エリュは胸を張っていくつか説明した。この交流を見守る貴族の目は優しく、まるで孫や娘を見守る家族のようだ。


 穏やかに過ごす夜会は、エリュにとって貴重な体験となった。眠くなり目を擦るまで、自ら帰ると言い出さないほどに。楽しい経験をさせてもらったようだ。満足げなシェンは、集まった貴族達に小さな加護を与えた。


 帰るまで事故や病に苦しまぬよう。それは小さな小さな期限付きの加護だが、遠くから来た貴族は感激して深く頭を下げた。子ども達が部屋に戻れば、再び宴会が始まる。隠していた酒が大盤振る舞いされ、盛り上がった数人の貴族が窓を割って叱られた。


 そんな大騒動を知らず、青宮殿へ帰った子ども達はベッドに潜り込む。明日から通常に戻る時間が、少しだけ遅く来るよう願いながら。

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