この世界は異端に厳しいらしい〜獣人差別で両親を殺された私は村を焼いて復讐をします
この世界はクソだ。一見全てを許容しているように見えて、異端は殺す。いや、異端を嘲笑って楽しんでいるからこそ、集団を保っているのだろう。結局はストレスに対するはけ口として差別があるのだ。
人間というものは共通の敵を作らないとまともに集団でいられないのだろうか。もしそうだとしたら、非常に可哀想な生き物と言えるだろう。
私の両親は一体、何をしたのだろう。あなた達に殴りかかったのか。それとも魔法であなた達の頭をおかしくしたのだろうか。
いや、違う。あなた達は傷一つ負ってないし、あなた達は元々頭がおかしい。
ならなぜ私の両親は死んだのか。理由は簡単だ。
この世界――村――に殺されたのだ。私の両親は。
だから私は今日、この村を焼く。私の使える最大級の炎の魔法を使って。一気に、全部。何もかも。
私はそう決意して、今ここ、チョコレート山にいる。ここから私が炎魔法を使えば、あっという間に村は火の海になるだろう。
私は杖に魔力を込めると、炎魔法を使う準備をする。すると、私の尻に生えている尻尾が足に当たるぐらい下がる。
どうやら私は自分が思っている以上に人を殺すのが怖いらしい。もう迷いは捨てたはずなのに。あの村にはクズしかいないのに。
私はそんな自分の尻尾を無理矢理立たせると、更に杖に魔力を込める。
「赤い雨」
私がそう魔法を唱えると、村の上空に炎の雲が浮かび上がる。そしてそれは、村に雨のような火を落とす。
落ちていった火は村の家々に当たり、大きな炎へと姿を変える。
私はその光景を見て、もう戻れないなと思う。もしかしたら両親はこんなことを望んでいないかもしれない。だが、私はどうしてもこの村の住民を、この村を許すことができなかった。
「馬鹿な娘でごめん。お母さん、お父さん」
私はそう独り言を呟くと、村の様子を見に山を降りる。姿を見られると面倒なので、フードを被りながら。
想像通り村は、地獄と化していた。私をいじめてきた子供達の悲鳴が横から聞こえる。私の両親を殺した村長の怒鳴り声が、村を駆け巡る。
私はそんな村の様子を見て、複雑な気持ちになる。スカッとした反面、どこか罪悪感が残る。嬉しい。寂しい。悔しい。楽しい。そんな色々な感情が私の頭をいっぱいにする。
だが、戻ることはできない。復讐を完結させるんだ。
「炎の壁」
私はそう魔法を唱え、村の周りに炎の壁を作り出す。これで誰も逃げることはできない。
そして私は村の奥にある村長の家へと向かう。両親の仇だけは、自分の手で殺す。
そのために私はわざわざ現地に来たのだから。
村長の家には鍵がかかっていた。だが、そんなもの魔法の前には意味をなさない。
私は魔法でドアごと吹き飛ばすと、目の前で逃亡の準備をし、ドアから逃げようとする村長の土手っ腹にナイフを突き刺す。
拷問などしない。絶望を与えることもしない。私はただ殺す。失敗の原因になるものは全て取り除く。
私はそのまま何回も村長をナイフでめった刺しにし、更に火炙りにする。
そして村長が灰になり骨だけになったのを確認すると、それも粉々に砕く。
村長だったものを私は背負っていた袋に詰めると、私は更に辺りに放火してからチョコレート山に戻る。私に炎は効かない。
私はチョコレート山に戻ると、骨を辺りにばらまく。こんなのでも一応植物の栄養にはなるだろう。
さて、これで私が生きる理由はなくなった。さっさと死のう。
私はそんなことを考えながら、近くにある崖に向かう。
そして私は崖に着くと、勢いよくジャンプをし、崖から飛び降りた。