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百合の勇者と犬耳兵士~いいのか?私はいちゃいちゃするほど強くなるんだぞ?~  作者: テモ氏
第二章 伝説の魔術師を訪ねて山登りしたらえっちなお姉さんと決闘することになりました
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 瞬くより早く間合いに飛び込まれ、反応速度を超えた一撃目がセレステを捉えた。


「くっ!?」


 迫りくる拳をなんとか戦棍で受けるが、その威力は尋常ではない。やはり魔力を強化していない状態で魔族と戦うのは、かなり分が悪そうだ。

 よろめくセレステを見て、ヘルミナは意外げに首をかしげる。


「あら……どうしたの? 調子が悪いのかしら」

「ちょっと、ね!」


 セレステは苦し紛れに横薙ぎを返すが、ヘルミナは僅かに身体を反らせて軽々と避けた。手応えのなさにセレステが二撃を放つ前に、高速充填したヘルミナの〈衝撃弾〉が至近距離で炸裂する。

 避けることも防ぐこともままならず、直撃したセレステは派手に吹き飛ばされた。


「セレステ!」


 受け身すら取れずに無様に転がるセレステに、魔力壁の外からジルが叫ぶ。歯がゆそうな表情は、見ていることしかできない故か。


「が、頑張るのじゃ! ぬうう、なんとかできぬか……!」


 ティオもまた、なんとか壁を開けようと必死に魔術書を操作していた。しかし上手く行かないようで、悔しげに呻くばかりだ。

 セレステは痛む身体を叱咤して、よろよろと立ち上がる。


「くっ、結構効いたな……」


 これは、なんとか自力で切り抜けるほかなさそうだ。

 流れを断ち切るように、セレステは戦棍を一振りした。

 魔力の充填を開始しつつ、急いで対応策を練る。魔力強化ができていないからといって、大人しく負ける気はさらさらない。

 セレステの心が折れてないと見てか、ヘルミナは嬉しそうに笑みを浮かべる。


「うふふ、そうよ。そう来なくっちゃ。早くあの時みたいに本気を出して、溢れそうなぐらい湧き上がる魔力を見せて。今のままの魔力量じゃ、私を愉しませることなんてできないわよ?」

「関係ないね」


 吐き捨て、セレステは魔力の充填を開始する。深く呼吸するとともに、生み出される魔力を両足に集めていく。全身の強化に充分でなくとも、こうすれば一箇所までならあの時と同じように動かせるはずだ。

 セレステはヘルミナを見据えて、言い放つ。


「魔力があろうがなかろうが、私は――野望を叶えるまで、絶対に退かない」


 ヘルミナは目を細めてその言葉を受けると、恍惚とため息を漏らした。


「素敵……やっぱり、貴方こそ私の求める相手ね!」


 再び、予備動作なしにヘルミナは突進する。間合いを瞬時に詰めたかと思うと、先程よりも明らかに疾い打撃を腹部に放ってきた。

 なんとか腕で防ぐが、骨まで響く威力に思わず苦鳴が漏れる。

 それが聴こえたのだろう。口の端を吊り上げたヘルミナは、続けざまに顔めがけて拳を振り抜いた。これを紙一重で避けつつ、セレステは下段からの戦棍で反撃を試みる。

 しかしヘルミナは踊るような足捌きで下がったかと思うと、そのまま〈火焔弾〉を連発する。

 一撃目をなんとか側面に跳んで回避するが、着地地点に向けて間髪入れずに二撃目が飛来する。これを避ける頃には、すでに近距離戦の間合いではなくなっていた。


「避けるだけで精一杯? これじゃあ他の勇者と大差ないんじゃないの?」


 ヘルミナはあざ笑うような声とともに、次々と容赦なく魔力弾を放っていく。

 隙間ない攻撃になかなか突入できないまま、着弾地点の誤差は徐々に縮まってきていた。あと数発以内に、確実に当てられるだろう。

 だが、こちらの準備も間もなく終わる。


「あら、そろそろ限界かしら?」

「――そうだね、そろそろいいかな!」


 勝ち誇るヘルミナに不敵な笑みを返して、セレステは地面を蹴った。

 充填した魔力で脚力を強化し、一気呵成に距離を詰める。

 迎撃の〈火焔弾〉が飛んでくるが、避けることはない。白い魔力の軌跡と共に振るった戦棍が、魔力の炎を打ち砕く。〈術式破壊〉だ。

 セレステはヘルミナが次弾を放つ前に、戦棍を全力で投げつける。容易く薙ぎ払われるが、そこまでが計算である。目的は、一手稼ぐことにあった。

 あと二歩、一気に踏み込む。迎撃の一撃が飛んでくるのをくぐり抜け、最後の一歩。顔ごと突っ込んだ先は――ヘルミナの胸だった。


「きゃっ!? な、何!?」


 脚部に集中させていた魔力を全て腕に回し、がっちりと抱きついて、セレステは五感と顔中でヘルミナの胸に溺れた。


「――っ!」


 セレステは顔を包む感触に悶絶する。想像以上だった。

 大きさは勿論ながら、柔らかくそれでいてしっかりと張りもある。肌はすべらかでひんやりしていて、何より見た目からはあまり想像できない優しく甘い香りが心地よい。

 一秒ごと、一瞬ごとに魔力が身体の芯からどくりどくりと音を立てて湧き出てくるのを感じる。凄まじい勢いで身体中に溢れていく魔力は、早くも白い光となって体を包みはじめる。


「ちょ、は、離れ……ど、どこにそんな力を……!」


 異変に気づいたヘルミナはなんとか引き剥がそうとするが、一度飛び込んだ胸から簡単に離れるセレステではなかった。

 乳圧を楽しむようにぐりぐりと顔を押し付けると、思わず鼻息が荒くなってしまう。


「むっ、むふっ……!」

「やっ、ひぅっ!?」


 息が当たったためか、あるいは刺激されたためか、ヘルミナは思いの外可愛らしい声を上げた。途端、飛躍的に魔力が高まるのを感じる。

 もしかしたらこのまま戦わずして勝てるのでは――そう思ってセレステが手を臀部に下げていこうとしたところで、ヘルミナはついに術式を展開した。


「〈衝撃鎧(ショックアーマー)〉!」


 全身から発される衝撃波でセレステは引き剥がされ、そのまま吹き飛ばされる。

 しかしほとんどダメージもなく軽やかに着地すると、弾き飛ばされたまま転がっていた戦棍を拾い、ぐるりと回した。


「はぁっ、はぁっ、な、何のつもり……?」


 混乱に息を乱し、ヘルミナはすっかり態勢を立て直したセレステに問う。

 セレステは身体の調子を確かめるように伸びをしてから、独り言つようにしみじみと言った。


「ふぅ……私の見込んだ通り、最高のおっぱいだった……」

「おっ……あ、貴方、ふざけてるの……?」


 正気を疑うかのような表情のヘルミナに、セレステは真面目な顔で言い放つ。


「私はいつでも真摯だよ。女の子といちゃいちゃすることに関しては!」

「くっ!?」


 言うとともに飛び出したセレステを、ヘルミナは両手二発の〈火焔弾〉で迎撃する。しかしセレステは一発目を戦棍で破壊、もう一発は着弾寸前に横に跳び、瞬時に間合いを詰めていく。


「は、疾いっ!?」


 先ほどとは比べ物にならない速度の突進に、ヘルミナは驚愕の声を上げた。

 その刹那にはすでに戦棍を振りかぶり、セレステは攻撃射程に飛び込んでいた。

 頭上から打ち下ろされる一撃を後退して避け、ヘルミナは至近で再び〈衝撃弾〉を放とうとする。その腕めがけて振り上げた戦棍が、黒い魔力光ごと掌を跳ね上げた。


「ぐっ……!」


 痛打に呻くヘルミナの頭部に、白銀に輝く鎚頭が突きの軌跡で迫る。

 たまらず飛び退るヘルミナめがけて、セレステはそのまま戦棍に魔力弾を充填した。白銀の魔力が変化するのは烈火――〈火焔弾〉だ。


「もらった!」

「っ!」


 放たれた炎の弾丸は、着地するヘルミナに過たず直撃する。とっさに翻したマントがその身体を守るが、魔力抵抗を遥かに超える威力がその布地を焼き焦がした。


「やってくれるじゃない……!」


 ちりちりと裾の燃えるマントを脱ぎ捨て、ヘルミナは挑戦的な笑みを見せる。

 マントの下の服装は、想像よりもさらに上を行く露出度だった。

 元からよく見えていた胸元や胴体の部分は言うに及ばず、肩が見えている割に長い手袋をしているところや、ほぼ裸と同じぐらいに見えている背中、そしてほとんど下着のようなボトムス、そしてやはりその割にはしっかりとしたブーツと、ここまでくるとむしろ裸のほうがマシなのではないかと思わせる。

 身体のラインどころか一部の大事なところ以外が露わになっているその格好に、セレステは思わず見とれて追撃を忘れてしまった。

 しかしヘルミナは全く頓着しない様子で、変わらず不敵に笑っている。もしかすると、魔族にとってあの露出は一般的なのだろうか。


「貴方……抱きついた途端、急に強くなったわね? ……ふふ、相手の身体を触ることで魔力を得る、ってところかしら」

「まあ……そんなところかな」


 流石に胸に顔を埋めた途端に強くなったら気づかれるかと思ったが、ヘルミナの答えはもう少し真面目なものだった。とは言え、当たらずといえども遠からずと言ったところではある。それになにやら勝ち誇った様子なので、真実はあえて言わずに曖昧に頷いておくことにした。


「じゃあ――これなら、どうするかしら?」


 ヘルミナが舞うようにくるりと回転すると、地面に黒い魔法円が浮かび上がる。そのまませり上がる黒紫の魔力に身を包まれたヘルミナは、次の瞬間その姿を変貌させていた。

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[一言] どすけべ魔族の方でしたか……
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