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天才王女の優雅な一日(仕事編)

「王女殿下、以前からご指示のあったホルク川の河川工事が終了したと」


「ありがとう。流量などに変化はあるかしら?」


「おおむね、殿下が予想された通りの数値を推移しております。ここからは現場の技術職員の私見でございますが、氾濫の危険性はほとんど消えたということです。まあ、技術者の老人の予想ですので、どこまで信用性があるかは分かりませんが」


「そう……現場で働く技術者の予想は、時として未来予知にすら迫る確度を持つことがあるわ。数字を追いかけている私より見えているものもあるでしょう。水位の計測は今後も続けるとしても、氾濫の脅威は取り除くことが出来た、と考えていいと思うわ」



 建築課の官吏が頭を下げて後ろに下がると、住民課の官吏が代わって一歩進み出ました。



「ホルク川の上流部、ちょうど旧共和国との国境付近で不穏な動きがあると、地域住民から報告がございます」


「小国連合が共和国を占領してから一ヵ月、そろそろ国境付近の守りを固めてくるころかしらね……ケーネ、北方警備兵の中から調査団を編成することは可能かしら?」


 

 この場で一番軍部の動きを把握しているケーネに話を振ると、彼は一瞬の逡巡の後に口を開きました。



「難しいな。渓谷付近は今でもピリピリしてるし、それでなくても国境付近の兵を動かすべきじゃないと思うぞ」


「なら、私の方で別に調査隊を編成しておくわ。報告を上げた住民には、もう少し詳しい状況を聞きたいわね。

 現地の情報をできる限り詳細に吸い上げて、なるべく早く私に報告書を回して頂戴」


「了解いたしました!」



 私の指示に、住民課の職員が一つ頷いて走っていきます。その間に私は、手元の手帳に『お母様に軍部の様子を聞くこと!』と記入ししてパタンと閉じます。


 私が書き終えたのを見計らい、アルカルトが私に書類を差し出します。



「王女殿下、小国連合の内情、軍備に関する報告書でございます。やっと諜報部の方から報告書が届きましたので、執務室に置いておきました」


「目を通しておくわ。……それにしても貴方の編成した諜報部、どこから情報を集めてくるのか知らないけれど凄まじいわね」


「恐れ入ります。蛇の道は蛇、ということですな」



 アルカルトとミリダが主体となって設立した諜報部は、発足してからまだ時間が経っていないにも関わらず欲しい情報を的確に上げてきていました。各国の情勢から世情、果ては軍事機密に至るまでどんな情報でも『欲しい』と声を掛ければ持ってきてくれるのです。


 本当に、どこから情報を引っ張ってくるのでしょうね。味方として動いてくれているから助かっていますが、敵に回せばこれ以上恐ろしい集団はないでしょう。怖い組織を作ってしまったものです。



「小国連合はもちろん、帝国や各国の動きにはこれからも注意しておいて頂戴。平時の間に、できることはしておかないとね」


「御意に。諜報部にもそう伝えておきます」



 アルカルトが廊下の向こうへ去っていくと、私の目的地である執務室が目の前に迫ります。ドアに手をかける寸前、経理課の官吏が私に書類を差し出しました。



「姫殿下、先の戦争の決裁書と、新たに見つかった金鉱脈を加味して再編成した予算案が完成いたしました。遅くなって申し訳ありません」


「いいのよ、頑張ってくれていたことは知っているわ。目を通しておくわね」



 できれば直視したくありませんが、見ないことには始まりませんよね……


 私は執務室に入ると、椅子に座りながら書類をペラりとめくりました。



「うわぁ、収支だけ見たらシャルロット商会の方がずっと健全という……何よこの予算案……」



 情けない声をだしながら机に伏せた私の手から、ケーネが書類を抜き取ってざっと目を通します。


 次に彼の口から出てきたのは、呆れと苦笑が混じった声でした。



「これ、本当に国家の予算案か? 中小商会の収支報告書って言われた方がまだ納得できるんだが」


「私とケーネが揃って桁を三つぐらい少なく見ていない限り、紛れもなく王国の予算案よ。私たちが揃って老眼になったと言われた方が、まだ信用できる?」


「いい勝負だな……いや、これは悲惨すぎる……」



 なんでこうも戦争とはお金がかかるのでしょうか。物語の世界ならもっとスマートな戦争が繰り広げられているはずなのですが、現実ではそうもいかないようです。

 これで金鉱脈が見つかっていなければ、いよいよ財政が立ち行かなくなっていたかもしれませんね。



「アンネには支払いを済ませたから、当面は何とかしのげるでしょう。とりあえずケーネ、私たちの給金は覚悟して頂戴ね」


「俺だけならまだしも、王族のエレナも金がないとかひどすぎるだろ! なんで働けば働くほど給金が減るかなあ……」


「下手に税金を増やして、民から反乱を起こされて槍玉に上げられるよりはましじゃない?

 さあ、今日も頑張りましょう。仕事は私たちの事情なんて気にしてくれないんだから」



昨日、よもぎ団子さんから感想を頂きました。Thank you for impression!


誤字報告の赤文字に戦慄しながら修正し、さあ今日の更新分を書こうとホームに戻れば感想の赤文字に出迎えてもらえる幸せ……本当にありがとうございます!


このポンコツ筆者、誤字報告は自分の力不足でよく見かけるのですが(というか毎話見かけるのですが……)、それと同じぐらい感想も欲しいなって。

え、強欲だって? よく言われるんです! 小さい時は別のクラスまで給食をもらいに行っていましたので!


というわけで皆様、感想など頂けたら幸いです(率直)

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