共和国軍は攻勢に出ます
昨日、シュレディンガーの猫さんから感想を頂きました。Thank you for impression!
感想を頂くこと自体が結構久しぶりで、今まで貰いなれていたんだな……と自分の贅沢さを実感しつつ幸せな気持ちに浸っておりました。
皆様からの感想を心からお待ちしておりますので、ぜひよろしくお願いします!(直截的すぎたかな?)
開戦から四日が経ち、戦場には奇妙な停滞感が漂っていました。
進軍したくても渓谷を抜けられない共和国軍と、兵力差から谷上の砲台付近を動けない王国軍が互いに睨みあいを続けているからです。派手な衝突をしたのは初日と二日目だけで、三日目からは小規模な小競り合いはあるものの目立った被害は両軍とも出ていませんでした。
動きがあったのは、四日目の深夜でした。
共和国軍の斥候隊が発見した坑道の入り口、その脇の茂みにはには百人以上の共和国兵が集まり、先頭の集団が火のついていない松明を手に、後方の集団が武器と掘削工具を構えてじっと時を伺っていました。
坑道から数人の王国兵が出てきた瞬間———
「火を灯せ!」
突如として現れた、暗闇を払う無数の光。松明の明かりは共和国軍の威容を照らし、同時に茂みに伏せていた兵が洞窟へ向かって突撃します。
「敵襲、敵襲だ! 坑道へ戻れ!」
「全軍、突撃! 一人も逃すなよ!」
共和国軍の指揮を任されている指揮官は、自らも兵の最前線を駆けながら会心の笑みを浮かべました。
(やはり、総司令官殿が予想された通りだったな……)
「いくら王国の司令官が愚鈍といっても、坑道が王国軍にとって敗着のきっかけになりうることぐらい気付いているだろう。もし仮に谷上へとつながっているのならば、なおのこと調査はしているはずだ」
総司令官の言葉に、天幕の中にいる全員が得心したように頷きます。
「できることなら、王国側としては坑道を埋めておきたいところだろう。だが奴らはそれが出来ない、いや、しないはずだ」
「それは如何な理由で?」
「考えてもみたまえ、奴らが陣を敷いているのは谷上だぞ? わが軍が谷を包囲すれば奴らは降りてくることもままならないという状況。避難経路として坑道は何としても確保しておきたいはずだ。
それに、谷上からでは届かないわが軍の本部へ、奴らが奇襲をかけられる唯一の経路だ。戦術的にも埋めるのは下策だな」
「では、どうなさるので?」
「まず、こちらからは何も仕掛けない。戦闘は今まで通り消極的な小競り合いを続けるが、兵の損耗はなるべく避けるように厳命しろ。
同時に、坑道の周囲に兵を二百ほど伏せておけ。夜を待って奴らが見回りに着た瞬間、数で圧倒して坑道を制圧するのだ。見回りが本隊へ報告する前に我が軍が谷上に上がることが出来れば、こちらの勝利は確定する。
何せ、兵力差は圧倒的なのだ。谷上の兵さえ蹴散らしてしまえば、明日には王都を制圧できるだろう」
かくして総司令官からの命を受けた斥候隊の指揮官は、こうして坑道に逃げ込んだ王国兵を追い回しているのです。
「絶対に逃がすなよ! 逃がせば何倍もの反撃があると覚悟しろ!」
後方から追随する兵に檄を飛ばしつつ、自身もまた武器を片手に薄暗い洞窟の中を駆けていました。
こうして王国兵が内部へと逃げ込んだことから、坑道が谷上へ通じていることは確定です。このまま奴らを追っていけば王国軍本隊の後方、谷の向こう側へと抜けられるはずです。
「しかし、王国兵は逃げ足が速いのが自慢だったか! だがこちらとて足自慢だ。追え!」
叫びながら王国兵を煽りつつ、しかし指揮官は息が切れてきたことを自覚します。
いくら訓練を受けた兵とはいえ、こうして武器を持ちながら全力疾走すれば息が切れるのは仕方のないことです。また、自分たちが疲れてきたということは、相手も弱ってくるはずで———
(あれ、なぜ距離が変わらないのだ? 離されるならまだしも、追いつきもしないとは……何かがおかしい)
完全に不意を突いた強襲。坑道内の様子を知っている相手に分があるとはいえ、きちんと装備しているこちらが優勢のはずなのに、なぜこの段階になっても付かず離れずの距離に敵がいるのでしょう?
嫌な予感がします。走っているせいか、上手く頭の中で情報が整理されず、言葉にはできませんが嫌な予感がするのです。
(そういえば、士官学校で読んだ兵法書に同じような状況が載っていたような……確か、あれは相手の強襲に対してカウンターを仕掛けるときの———)
そこまで思い出し、慌てて後方の兵たちに転進命令を出そうとした次の瞬間。
頭上で轟音が鳴り響き、同時に全身へ走る衝撃と共に意識がブラックアウトしたのでした。




