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開戦、そして進軍

 王国軍は谷上の砲台を起点として軍を展開し、共和国軍は山脈の向こうに広がる平野部に軍を展開して睨みあいます。

 両軍の配置が完了し、戦場に張られた緊張の糸を切って落としたのは共和国が鳴らした開戦の合図でした。


 地を埋め尽くすほど圧倒的な人の群れが雄叫びを上げながら谷間に殺到し、眼前の山に地鳴りを響かせながら猛烈な速度で迫ってきます。



「臆することはない! 谷は決して広くない故、万の兵士が同時に突撃してくることはないのだ!

 弓兵は指示を出している人間を狙って狙撃し、工兵は砲台にて敵の進軍を遅延させろ!」



 ドランの指示が飛ぶや否や、谷の両岸に配置された砲が火を噴きます。鼓膜を乱暴に揺さぶる轟音に耐えつつ、自身も背負った長弓を構えて司令官と思しき人間に狙いを定めて放ちました。


 もとより高所に陣取る王国の弓兵たちは、散々レーナに鍛えられたその技術を存分に発揮して容易く急所を射抜きます。急所を外した矢も、ちょうど谷底に向かって吹き降りる風に乗って鎧を貫く威力を持って敵の司令官や副官に襲い掛かります。


 戦において高所のアドバンテージは絶対であり、加えて気候までもが王国兵に味方するという状況。圧倒的だったはずの兵力差を感じさせない奮戦で敵の指揮系統を次々と破壊してゆく様は壮観です。


 凡人ならこの戦況に満足してしまうところ。しかしドランの表情にはゆるみ一つなく、むしろ険しく歪められていました。



「……何かがおかしい。あの共和国軍がこのように兵を無為に殺すような戦略を立てるだろうか? そこまで愚鈍な司令官を擁する国ならば、先の大戦で滅んでいてもおかしくないはず……」


「ドラン将軍! 報告がございます!」



 兵の報告でドランは思考から引き戻され、脳裏を掠める嫌な予感と共に先を促します。



「遊撃隊からの報告であります! 共和国軍と思しき人影が山脈越えのルートにて進軍中とのことです!

 こちらの本隊と会敵するまで、目算で十五分かと!」



 やはりその一手か! ここまで気付かなかった自分の愚鈍さを叱りつけつつ、神に祈る気持ちでドランは指示を出します。



「弓兵は谷底の敵に集中しつつ、剣士隊が山脈を越えてきた兵の迎撃に当たれ! できることなら高所を維持したまま接敵するのが理想だが、困難な場合は木々を盾にしつつ戦闘するように。第一目標は砲台及び弓兵の防衛とする!」



 敵軍がこの状況を打開するには、谷上の本隊を退けることが必須でした。谷さえ抜けてしまえば平野を埋め尽くすように兵を展開することが出来ますし、そうなれば王国には万に一つの勝ち目もありません。


 そこで谷底の兵に意識を向けさせ、強襲部隊が背後から本隊を挟撃するという作戦を取ったのでしょう。もしエレナ王女が遊撃隊について言及していなければ、あと十分と少しで戦局がひっくり返っていたことでしょう。


 そもそもこの戦は圧倒的な兵力差を強いられた不利な戦いです。数と力を頼りに軍をぶつけ合えば必ず負ける戦いであり、国王陛下が立てた綿密な作戦と王女殿下の類い稀な才覚によって何とか成り立っているのです。もしここで自分が敵の動きを読み間違えれば、王国軍の敗着は確定すると経験が告げています。



「であれば、ここが分水嶺か……工兵隊長! 弾薬の供給制限、それを現時点をもって解除する。ありったけの砲弾を谷底に降らせてやれ! 総員、ここが踏ん張りどころである! ここをしのげば勝利が確約されると心得よ!」


「「了解いたしました!」」



 停滞しかかっていた空気を一掃するようなドランの号令がかかり、王国兵の面々が反射的に呼応して攻撃の手を強めます。


 北方警備隊の決戦、その局面は次の展開を迎えようとしていました……。


「」←???

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