天才王女は指令を出します
「ケーネ⁉ 今、私たちは会合中なのだけど」
「そんなことは分かってる! 急ぎの用事だから来たんだ!
さっき、共和国が正式にウチに宣戦布告してきたんだ!」
やはりと言いますか、まさかと言いますか……
ある程度予想はしていました。ですが、ここまで早いとは……
対策もあります。備えもあります。ですが『宣戦布告』という言葉の圧に押され、頭の中で纏まっていた思考が霧散して———
「エレナちゃん! しっかり!」
「お前がパニックになってどうする! 落ち着け!」
ケーネとアンネから飛んできた鋭い声が耳朶を叩き、霞がかかった脳内を霧払いしていきます。
ここで私が判断を誤れば、この国がどうなるかなど明白です。しっかりなさい!
「ケーネはすぐに王国軍に連絡を。北方に駐在している軍は防衛線を築いて、敵兵の国内への侵攻を防いで。役所の職員は住民の避難誘導をして頂戴。
アンネとスミスさんは、北方の従業員たちに避難命令を。出来れば物資を提供してくれると嬉しいのだけど……」
「この国が潰れれば私も困るの。半日くれれば、共和国との戦争に必要なものは全てかき集められると約束するわ。もちろん、特別価格でね」
口元を歪めながら挑戦的に微笑むアンネに、私もまた笑みを返して応じます。
「さあ、みんな動いて。私たちの住む場所を守るわよ!」
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「一応、以上のようにケーネとアンネ、スミスさんには命じておきました。お父様の方で被害状況などは入ってきておりますか?」
「いや、侵攻自体はまだのようだ。そもそも相手とて数万単位で軍を動かすのだから、そうそう戦局は動かんよ。
北方の防衛はどうなっている? 人員が足りないようなら、王都の警備兵からも少し派遣することも検討するが」
「はっ! 北方からの侵攻ですと、おそらく本軍は山脈の間を抜けてくると予想されます。ですので砲台を谷の上に設置し、また我が軍も砲台の周辺に展開しております」
北方の警備を一任していたドラン将軍が、お父様の質問に淀みなく答えます。
さすがは歴戦の将、この事態にも一切動じていない様子。頼りになりますね。
ですが———
「敵も砲台に兵が集中していることは読んでいるはずよ。それに全軍が山脈の間を素直に進んでくれるとも思えないわね……
お父様、王都にいる兵を少し派遣してもよろしいでしょうか?」
「ふむ……その心は?」
「ウチを北方から攻め入るには、必ず山脈が難所になるということは向こうも承知のはず。それを分かっていながらこの時期に宣戦布告してきたということは、何かしらの突破法を持っていると考えるべきでしょう。
ですので遊撃と偵察を兼ねた兵を山脈に伏せておくことによって、相手の想定の裏をかこうかと。そもそも相手の思惑が分からない以上、むやみに兵をぶつけ合うのは危険すぎると思うのです」
戦争において、相手の動きを読む際には悪い方へ考えておくべきだと兵法書に書いてありました。特に現在のような『相手の思惑が分からない』場合には、より一層の警戒が必要でしょう。
「そうだな……ドランと言ったか、人選は君に任せよう。選んだ兵を連れて北方の警備兵と合流し、作戦伝令後は各隊の司令官として着任してくれ」
「了解いたしました。すぐさま警備兵と合流いたします」




