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天才王女と天才商人は会合します

 演説が終わった後、私とアンネは王宮へ戻りました。今日はシャルロット商会の会長として、また王女としてシャルル商会のアンネと会合があったからです。



「それでは、大臣はやはり共和国に……? また厄介なところに逃げ込まれたものね」


「私も部下たちから報告が上がってくるまでは半信半疑だったけどね。エレナちゃんにお願いされて情報収集してたら、意外とあっさり見つけられたわ」



 事も無げに言い放つアンネに軽く恐怖を覚えつつ、手渡された書類を眺めます。物資、金品の移動が詳細に記され、最終ページには彼が車に乗って国境を越えている写真が張り付けてありました。

 さすがに写真付きで報告が上がってきたのであれば、疑問を挟む余地はなさそうですね。むしろ、情報の検証をする手間が省けたことを喜ぶべきでしょう。



「……それにしても、こんな情報どこから引っ張ってきたのよ? すごいとは思うけれど、ここまで来れば脅威すら感じるわ」


「ま、情報源に関しては『善意の市民』ということで。どれだけ情報を隠蔽しようとしても、おおよそのことは善意の市民たちが知っているのよ。私たちトップは、上がってきた情報を精査するだけでいいのだから」



 『善意とは、そう名乗った時点ですでに悪意である』という格言は誰が言った言葉だったかしらね。確かにアンネの言う通り、重要な情報の多くは市民たちがひっそりと抱えていることが多いものです。


 しかしそれを的確に聞き出し、精査する能力は誰でも持っているものではないのです。アンネは簡単なことのように言ってのけますが、ここまでの速さと精度で情報を集めてこれる人間を、少なくとも私は知りません。



「では、これはお父様に伝えておくわ。ありがとうね」


「どういたしまして。エレナちゃんや国王様に売っておく恩ほど、高値のつく商品はないもの」



 そう言いながらふんわりと微笑むアンネ。そこまで私たちを買ってくれるのは嬉しいのですが、考えがあまりに彼女らしくて思わず苦笑します。


 タイミングよく紅茶のおかわりを持ってきてくれたミリダを座らせ、三人でゆっくりカップに口を付けました。



「……そうそうエレナちゃん、今日のスピーチ感動したわ! まあ、あんなスピーチをされては生徒たちをウチの従業員として引き抜くのが難しくなっちゃうけど」


「あら、アンネこそインパクトのある演説だったわよ? むしろ生徒たちからすれば、私のように堅苦しい話よりもアンネのように力強い話の方が印象に残るんじゃないかしら」


「いえ、お二人とも印象が強すぎて困惑した生徒が大半でしょう。お二人の近くにいる私でさえ、演説の後には呆然と致しましたから」


「そ、そう? ミリダにそう言ってもらえるのは嬉しいわね……」



 思わぬところから褒められ、少し胸が熱くなります。ミリダが私たちの会話を力強く否定すること自体が珍しく、だからこそ彼女が本気で言っていることが分かります。



「じゃ、じゃあ私はお父様のところへ行ってくるわ。アンネはもう少しゆっくりしていく?」


「ええ。今日は特に緊急の仕事はないから、もう少しここにいるわ」







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