お嬢様は男性陣のプレゼントを選びます
相席になった男の人たちに別れを告げ、私たちは店の外に出ます。太陽は真上から少しずれて輝き、あと数時間もすれば山の端に消えることでしょう。
お腹も満たされたので、あとはお父様とケーネへプレゼントを買ったら王宮へ戻りましょうかね。明日になれば山のように積み重なった仕事を片づけなければいけないのですし、今日見聞きしたことをまとめておきたいです。
そんなことを考えつつも、私たちは王都で有名な服飾店へ。ここは紳士服をメインに扱っているお店で、ケーネとお父様が愛用なさっているブランドでもあります。
「ねえケーネ、このネクタイなんてどう? ちょっと派手かもしれないけれど、貴方なら着こなせるんじゃない?」
「うーん、着こなせても着ていく場面がないな……秘書が主より目立つのは違うだろ。
でもまあ、デザインは好きだから買っておくか」
「ふふ、素直じゃないのね。あとこのジャケットは? 今季の新作らしいわよ」
「お、お嬢様⁉ そのように高価な服など、ケーネには……!」
私が選んできた服から伸びるタグを見て、ミリダが真っ青になります。確かに値はかなり張りますけど、絶対ケーネが好きな意匠だと思うのです。
それに……
「いいのよ。ケーネも何着か、こういう良い服を持っておくべきだと思うの。普通の秘書ならいらないのかもしれないけれど、私のそばに立っているのだからそれなりの格好をして欲しいもの」
「……お嬢様がそこまでおっしゃるなら……ケーネ、大切に着なさいよ!」
「なんでミリダに説教されなきゃいけないんだよ……でもまあ、大切に着るってところは同感だ。
エレナ、ありがとうな。色もデザインも俺好みのジャケットだ」
そう言いながら黒のジャケットを大切そうに眺めるケーネ。彼はああいうシンプルで、すらっと見せるシルエットの服が大好きなのです。
私も、ケーネには派手な服装よりもスマートな服装の方が似合っていると思います。
「お母様、お父様にはこのカフスボタンを買っていこうと思うのですが……どう思われますか?」
「そうね、お父様も喜ばれると思うわよ。というよりも、エレナちゃんが選んだものならお父様は喜ばれると思うわよ?」
そうですか……と返答しつつ、手の上に乗せた黒色のカフスボタンを眺めます。脳裏にスーツ姿のお父様を思い浮かべ、カフスボタンを合わせます。
……うん、似合いそうですね。シックな感じがお父様の雰囲気にぴったりです。
「では、お会計してきますのでしばしお待ちを。みんなは他に見たいところとかあります?」
私の問いかけに、三人は揃って首を横に振ります。
では、王宮へ帰るとしましょうか。収穫もきちんとありましたし、何より息抜きにちょうどいいのです。王都にはまだ見ていない場所がたくさんありますし、これからは定期的に街に出たいですね。
そのためにも、明日からの仕事を頑張らなきゃいけません。私のためにも、そして、王国に住むすべての人たちのためにも。
そんなことを考えつつ、私は財布から出したお金を店員に手渡すのでした。
とある王宮にて(後日談)
「レーナ、エレナが私にプレゼントを買ってくれたのだ! どうだ!」
「あら、私も髪留めを頂きましたわ。しかも、エレナちゃんから手渡しで」
豪奢な衣装に身を包んだ男女二人が、娘からもらったプレゼントをまるで宝物を捧げ持つかのように見せ合いながら言い合いしています。
周りを通った人々は二人の間に火花を幻視し、しかしこの国の国王と王妃に意見できるものなどいるはずもなく、ただオロオロと見守るばかり。
そんな中、通りかかった一人の少女がため息交じりに口を開きました。
「……お父様、お母様。私からのプレゼントをそこまで大切に思ってくださるのは嬉しいですが、宮中の者たちが困惑しております。
私に、一度差し上げたプレゼントを取り上げるような真似をさせたいのですか?」
「え、エレナ⁉ そんなことあるわけないじゃないか! レーナとは仲良く話していただけだ。そうだよな?」
「え、ええ。エレナちゃんから貰ったものは、たとえエレナちゃんでも渡せないわね」
「では、二人とも仲良くしてくださいね。お父様とお母様が仲良くなさっていることが、私にとって一番嬉しいことなのですから」
そう言い残して颯爽と去る少女。こうして、王国を二分する(?)親バカ二人の争いは吹き飛んだのでした……
昨日、シュレディンガーの猫さんから感想を頂きました。Thank you for impression!
何度見てもマイページの赤文字は嬉しいものですね。いや、誤字報告に関しては血の気が引きますが(昨日も誤字報告を受けていたとか言えない……)
随時、感想などお待ちしておりますのでお気軽に!




