天才王女は天才商人に窘められます
昨日、シュレディンガーの猫さんが感想とレビューを書いてくださいました。Thank you for impression!
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、『天才王女』の連載が始まって以来のレビューです。要するに初めてのレビューです。とっても嬉しいです!(語彙力……)
その威力はすさまじく、PVがいつもの倍ぐらいに跳ね上がってました。いやはやすごいものですね……
猫さんの素晴らしいレビュー、皆さんも読みに行ってくださいね!
かの御仁も感想欄で仰っていましたが、筆者も『天才王女』の感想欄が盛り上がればいいなーなんて思いながら日々更新しております。一言でも酷評でも、読者様からの反応があるということはモチベーションに繋がるのです。
皆さん、何でもいいので感想をくださいね!(強欲)
「はい、これで今日の分は終わったんじゃない?」
「ええ、お疲れ様ですお嬢様」
「ぐぁあああ……」
私は叩きつけるようにハンコをグリグリ押すと、乙女にあるまじき声を出しながら椅子の上で姿勢を崩しました。
ああ、どんどんお淑やかさをなくしている気がするわ……まあ、今部屋には私以外にミリダとケーネしかいないからいいでしょう。
「ほらこれでも飲んでちょっとは休め。エレナの好きなカモミールだ」
「わあ、いい香り……ケーネ、ありがとうね」
ケーネの淹れてくれた紅茶に口を付けると、優しい香りが身体中に染みわたります。ミリダもケーネも、私の疲労度によって淹れ方を変えたり茶葉を変えたりしてくれて、こうして私は仕事終わりの一杯を楽しめるというわけです。
「エレナちゃん、お久しぶり。遊びに来たよ」
「まあ、アンネじゃない! 本当にお久しぶりね」
ふわふわのくせ毛を揺らしながら入ってきたのはアンネでした。服装も口調もラフなままやってきたということは、本当に遊びに来ただけなのでしょう。
アンネは現在、彼女のシャルル商会の業務に加えて学校設立にも尽力してくれていますから、私と同じぐらいかそれ以上に忙しい毎日を送っているはずです。
そんな彼女が私のところに遊びに来た……一体、どうしたというのでしょう?
ケーネがアンネの前に紅茶を出し、彼女がカップから口を離したのを見て私は切りだしました。
「ところでアンネ、今日はどうしたの? 前みたいに遊びに来てくれたことは嬉しいけれど、多忙な貴女がただここに来ただけってのは考えられない。何かあるから来たのでしょう?」
「んー、まあさっきまではあったんだけど、エレナちゃんの顔を見たら『あ、蛇足だな』って思ったからナシ。だから本当に、今日は羽を休めに来ただけなの」
「そう、なら気が済むまでゆっくりしていって頂戴。ミリダもケーネも、いいわよね?」
「ああ。幸いにも明日は予定がないからな。遅くまで起きていても問題ないだろう」
「私も、久々にアンネちゃんとお喋りしたいのでゆっくりしていってください。それにしても、お嬢様とケーネ、アンネちゃんに私がこうして話すのは久々ですね」
そう、ね。昔はそこにリダも混ぜてよく遊んでいたけれど、大きくなるにつれてそれぞれがやるべきことをしていたら、なかなか時間が合わなくなってしまったものね。仕方のないこととはいえ、こうして改めて考えると寂しいものね。
みんなそれを感じてか、口々に近況を報告しあっては昔のように話に花を咲かせます。アンネは最近気に入っている化粧品の話を、ケーネは昨日お父様と話した内容を、ミリダは入浴剤について。気付けば日付が変わり、話が途切れたところでアンネが口を開きました。
「エレナちゃん、明日は予定ないって言ってたよね?」
「ええ。確かなかったはずよ? まあ、細々した仕事はあるけれど」
「なら、国境沿いの温泉街に行かない? この四人と、明日はリダも入れて」
「それは魅力的なお誘いだけど……唐突にどうしたのよ?」
戸惑う私に、アンネは書類を差し出します。同じものが2部用意してあって、ケーネとミリダにも手渡します。
「ウチの商会がつかんだ情報なんだけど、明日国境沿いの王家療養地に帝国の皇子たち、エレナちゃんのご両親、そして件の大臣がやってくるらしいのよ。エレナちゃんはこれをどう見る?」
いきなりの問いかけに固まる頭を無理やり動かしつつ、私は書類から情報を読み取っていきます。これらの人物が国境沿いで鉢合わせすること、この時期に鉢合わせすること、そしてアンネがこれを私に伝えたこと———
そこから考えうる答えは、そう多くはありません。
「お父様が大臣に網を張った……? 皇子たちは大臣が襲撃してきた時の証人として呼んだってところかしら。さすがはお父様、やることがえげつないわね。
貴女もえげつないわね。こんな情報、どうやって手に入れたのよ?」
私の答えに、アンネは両手を合わせながら嬉しそうに微笑みます。童顔のアンネ、しかしその笑みは見る者に『妖艶』という印象を与えるそれです。
「さすがはエレナちゃん、私も諜報部も、今のエレナちゃんの予想と同じ考察をしたわ。けどこの短時間でそこまで正確に読み取るなんて普通の人にはできないよ。
で、私がこれを手に入れた理由? それはものすごく簡単ね」
アンネは踊るように、楽しげにその小さな唇を開いて続けます。
「ほら、私は商人でしょう? 商いをする者にとって情報は信用の次に大事なもの。情報の有無によって売り上げが大きく変わる世界で、知らなかったなんて口が裂けても言えないわ。
エレナちゃんは王女だけど、同時に商会の会長なのでしょう? 情報に関しては、もっと貪欲になった方がいいと思うわ」
「そうね、気を付けるわ。しかし、どうしようかしらね……行くもよし、見逃すもよし。安全策を取るならここに残るべきでしょうけど……とりあえず明日の朝、お父様と話してくるわ。それまで待ってくれる?」
「もちろん。じゃあ今日はエレナちゃんの部屋に泊めてね?」
「では、私はベッドの準備をいたします。お嬢様とアンネちゃんはお風呂に入ってきてください」




