天才王女の両親は、大臣を向かい撃つ準備を進めます
昨日、落とし神さんから感想を頂きました。Thank you for impression!
端的に『面白い』と言ってくださり、本当に励みになりました。感想が頂ければ、それだけモチベーションになりますからね。本当にありがたいことです。
そんなわけで、このポンコツ筆者は感想を読みながら今日も更新するのです。おらに感想を分けてくれ!(某国民的ヒーロー風)
「などと考えているのだろうな、大臣とドランは」
奇しくも大臣が指令を飛ばしていたのと同時刻、王宮ではエレナの父———第十二代ナンコーク国王、トラン国王はそう笑いました。
「本当に……? 私はこんな見え見えの策に、あの大臣が飛び込んでくるとは思えないのだけれど……」
その言葉に応えたのはレーナ———ナンコーク王国の王妃です。今は政務中とはいえ、執務室には二人きり。口調も自然と砕けたものになっていました。
「まあ、いつもの大臣ならこんな罠に引っかかたりしないだろうな。そもそも大臣がエレナを監禁していたことをこちらが知らぬはずもなく、父親としても、また一個人としてもそんな彼女を国境の近くで療養させるなど考えるはずもない」
しかし、とトランは続けます。
「間違いなく、大臣はこの罠に飛び込んでくる。むしろ、エレナが飛び込ませるというべきか」
レーナは首をかしげながら口を開きます。
「あの子が国境にいるから? まあ、こっちがそういう噂を流したのだから、確かにそうなのかもしれないけれど……」
「それもある、だが、本質はそうじゃないんだ。
今の状況は、大臣にとってまさに絶体絶命。だがそこに見つかった助かるかもしれない道———まともな精神状況なら判断できることでも、今の奴にはすがるしかないってことだよ」
「だから、大臣が食いついてくると……?」
「それに『情報』ってのは恐ろしいものでな。時の黄金国家ですら噂で滅ぶことだってある。情報は手に入れなくても、入れてもその効力を発揮する。
例えば手に入れた場合、それは今回の大臣が当てはまる。大臣は『エレナが国境沿いで療養し、国境を超える機会がある』という情報を手に入れたからこそ、こちらの思惑通り動くわけだよな。
逆に手に入れなかった場合、それは帝国から逃亡してきたエレナが当てはまるんだ」
「エレナが……? ああ、そういうことね」
思い当たることがあったのか、レーナはやっと得心したように頷きました。
「そう、あの時の帝国はエレナを捕らえる体制を完全に整えていた。私が手配していたとはいえ、この早さでエレナが帝国から出てきたことは奇跡としか言えん。
だがもし、エレナが帝国の包囲網の全容を知っていたら? あの子は優秀だから突破したかもしれんが、悩みはしただろう。存在するだけで影響力を持つ、それが情報というものなのだ」
トランは壁に掛けられた大きな地図を眺めます。そこには敵兵の行動予想が詳細に書き込まれ、同時に自軍の動きが何パターンも想定されてメモに張り付けられている。
「大臣が追い詰められれば追い詰められるほど、奴の判断は鈍っていく。判断が鈍ればミスが生じ、それはやがて撤回できないほど膨れ上がっていく。結果として、王国の望む方向へ転がってくるという寸法だ」
「そのためにリダに帝国へ潜入させたのね。わざと偽の情報を流し、大臣に最後の一歩を踏み出させるため……」
「そう、そして国境沿いに役者が全員揃えばすべてが終わる。大臣の破滅というわけだね」
そう言いながら、トランは真っ白なピンを壁の地図に刺します。にやりと笑う彼を、レーナは肩を竦めながら見つめます。
「まあ、怖い人。エレナにはこうなってほしくないわね」
「何を言うか、レーナの方がはるかに怖いぞ? 知ってるんだからな、あの大臣がエレナに指一本でも触れた瞬間、奴の首を飛ばせるように影に潜んでいただろう?
止めようとそなたの部屋に行ってみればもぬけの殻で、さすがの私の肝を冷やしたぞ」
「私はエレナの意志を尊重するし、あの子が選んだ道を邪魔することは絶対にないわ。だからこそ、その邪魔は誰にもさせないってだけ」
妖艶に、しかし獰猛に微笑むレーナ。
「さあ、可愛いエレナを傷つけた罰は受けてもらうわ。その身で贖いなさい」




