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お嬢様は追っ手を撃退します

「お嬢様、なるべく中央に寄ってくださいませ。窮屈と思われるかもしれませんが、どうかご容赦ください」


「私を心配してのことでしょう? なら大人しくするのが筋というものだわ」



 ミリダはこう言っているけれど、実は全く窮屈じゃないのよね。そもそもベックが用意してくれた車と、スティア―卿が用意してくれた車に分乗している時点で窮屈なはずないのよ。合計3台、計25人乗れる車に護衛の人たちも含めて15人しか乗ってないんだからむしろ広々と使ってるぐらい。

 

 まあ、私はミリダとケーネに挟まれる形で座らされているから、それを心配してくれたのかもね。けれどミリダにもたれかかれば優しく受け止めてくれて甘い匂いがするし、ケーネにもたれかかれば嫌々だけどしっかり受け止めてくれて柑橘系の匂いがするのよ。むしろ私が汗臭くないかな……なんて気にしてるぐらいなのに。



「二人とも……いえ、みんなありがとうね。私のために気を張ってくれて、いつ来るかもわからない敵を警戒してくれてるんだから」


「何言ってんだ、それが俺らの仕事じゃねえか。まあ秘書の仕事でないのは確かだが、雇い主がいなくなったら困るから仕方ねえ」


「お嬢様に命を拾われた時から、私の身も心もすべてお嬢様のものです。お嬢様のいるところが、私の居場所なのです」



 二人が言い終わると同時に、運転をしてくれている侍女以外のみんなが私に礼をします。侍女たちは王国式の敬礼を、護衛の人たちは帝国式の敬礼を。内心はそれぞれ思うことがあるかもしれませんが、こうして人からの好意や敬意を衒いなく見せられると照れますね。



「こ、こらくっつくな暑苦しい! ええい、これが終わったら給料倍付けにしてもらうからな!」


「お嬢様……私はもっと、抱きついていただいてもいいのですよ?」



 ふふ、嫌と言ってもやめませんよ。というか、しばらくこのままでいたいのです。私は元々、そんなに荒事が得意な訳じゃじゃなくて、今も震える身体を懸命にこらえているの。

 多分、二人がいなかったら逃げ出してしまうぐらい今の状況が怖い。



「……」



 それを察してか、初めは嫌がっていたケーネもそっぽを向きながら背中をさすってくれます。昔に小さな手で懸命にさすってくれていたのも好きでしたが、今のように大きな手でゆっくりさすってくれるのも安心しますね。


 しばらくそうしながら目を閉じていると、突然二人のぬくもりが離れました。驚いて目を開けると、二人とも険しい表情で外を眺めています。



「お嬢様、先頭を走っていた車両が襲撃を受けたとのことです。これから少し運転が荒くなりますが、どうぞご容赦ください」



 ミリダが言い終わると同時に車が加速し、左右に進路を変えます。私の位置からは窓の外がみえませんね。狙撃を恐れて、あえてそうしているのでしょうけど。



「……敵はやはり、大臣の私兵かしら? 今の人員で対応できそう?」


「さあ、そこまでは。ですが追手もそう数は多くないようです。恐らく、すぐに戦闘は終わるかと」


「お嬢様、ミリダ様、衝撃に備えてください!」



 運転手の侍女が叫んだ寸刻の後、身体が激しく揺さぶられます。口から飛び出そうになる悲鳴をこらえつつ、私を守るように覆いかぶさるケーネにしがみついて揺れに耐えます。


 数度の揺れの後、不意に車はゆっくり減速して完全に止まりました。体感ではとても長く感じましたが、おそらく時間にして五分といったところでしょうか。



「……どうしたの? 何かあった?」


「どうやら戦闘が終わったようですね。念のため、お嬢様は車内で待機を」



 そう言い残してミリダが車外へ出ます。ちらりと見えた灰色の建物、あれが目的の病院でしょう。


 やはり追手は病院の近くで網を張っていたのですね。もし準備していなかったら……そう思うと心の奥に冷たい何かが走ります。

 

 

昨日、とある方がわざわざTwitterのDMで『天才王女』の感想をくださったのです。すごくないですか!(自慢)


それを講義中にニマニマしながら読み返していたら、隣に座っていた友人にドン引きされました。でもやめるつもりはありません!


そんなわけで(どんなわけで?)、感想等お待ちしております!

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