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天才王女は全ての準備を整えます

「お久しぶりです、スティアー卿。その節はお世話になりました」


「いや、私もあの時は力不足を嘆いたものだ。改めて、君たち夫妻と彼には申し訳ないことをしたね」


「いえ、卿は最後まで尽力してくださいました。そのことはリクルーゼも———」



 ちょっと待って。リリンフェルトさんとスティアー卿の間に面識があることは想定していたけれど、ここまで関係があったとは思わなかったわ。

 聞いた感じ、リクルーゼさんとリリンフェルトさんの失脚事件のさい、スティアー卿が力を貸したようだけど。まあ今は関係ない話だから、改めてリリンフェルトさんから聞けばいいでしょう。



「ザルバ大臣のところにいた君が、姫とともに私のところに来るか……これはいよいよ、姫の言葉を信じざるをえなくなってしまったな。

 エレナ王女殿下、先ほどの無礼をお許しいただきたい。貴女の言葉を疑ってすまなかった」


「いえ、卿の反応は当然のことと思いますわ。ですが私の言葉が真実であれば……」


「ええ、由々しき事態ですね。一国の姫を監禁したばかりか、卑劣な行為に及ぼうと画策していたなど紛れもない国際問題です。だが何故、ザルバ大臣はそのような危険なことをしたのだろうか……よもや、そのリスクが判らなかったわけではあるまいて」


「小国連合が、王国へ侵攻しようとしていた……そう言えばお分かりになりますか?」



 私の言葉に『いやそれは……』と否定しようとして目を見開くスティアー卿。これだけの情報で答えに行き着くとは、どんな洞察力をしているのですか⁉︎

 やはりこの人も、お父様やお母様と同じ洞察力おばけなのかもしれませんね。



「姫が未だここにいるということは、何か策は講じておられるのだろうが……確かにそれは、食事会どころではないな。

 私も同じ国の人間として、今回のことを謝罪させてくれませんか。その上で、姫の護衛に私の部下を連れて行っては、と思うのですが?」



 ……本当ににいいのでしょうか? スティアー卿の部下が私を護衛していたとなれば、仮に私が大臣に捕らえられたときに言い訳が立たなくなりますよ?

 そりゃあ、護衛が増えればその分襲われる心配も少なくなりますけど、この申し出は卿に不利益しかないはずです。

 そんな私の内心を見透かしてか、スティアー卿は少し大げさな身振り手振りで説明を始めました。



「姫はこの後、王国へ戻られるのでしょう? ならば追手はその道中で網を張るのではないでしょうか。そういう観点からも護衛は、多いに越したことはないはずです。

 私のことは心配しないでください。帝国からの、せめてもの謝罪と考えてくれれば幸いなのですが……」



 なるほど、これは私が一本取られたようです。卿にそこまでの覚悟があり、ここまで言われて断るのは逆に失礼ですね。ここはありがたく受け取っておきましょう。


 しかしスティアー卿、その大げさなジェスチャーでさえかっこよく見えるのはなぜなのですか……『貴公子』と呼ばれる所以がだいぶわかってきたように思います。



「それでは卿のお気遣い、遠慮なく受け取らせていただきますわ。ちなみに人員は如何ほどで?」


「そう多くても目立つだろうから、十人余りを想定しています。姫はそれでよろしいですか?」


「ええ、それだけいれば襲撃者を返り討ちにできるでしょう。ちなみに事態が収束した後、護衛の皆さんはどのように遇せばいいでしょうか? 私としては、自分のために尽力してくれた者たちなので食客以上の扱いをしたいのですが……」


 欲を言えばウチで働いて欲しかったりしますが、少なくともきちんとした対応はしなくてはならないでしょう。そんなつまらないことで卿と揉めたくないので、あらかじめこうして聞いたのです。



「そうですね……彼らの疲れが癒えれば、すぐにでも返していただきたいですね。お恥ずかしながら、我が領も人材は不足しておりまして……だからこそ、姫の学校設立には光明を見たように感じました」



 それもそうよね。卿が私の護衛に選ぶぐらいの人材なのだから、相当に有能なはず。そんな人間なんてそうそう替えが効くはずもないものね。


 私が一つ頷いて首肯し、卿に別れの挨拶をします。


 これで準備はすべて整いました。あとは実行するのみです。



ちょっと引っ張りすぎましたかね? でもスティアー卿って書いてると出しゃばてくるんですよね……ただでさえエレナ姫が出しゃばりな女性なのに、二人合わせたら物語が全く進まないんです……

やりすぎだよ! って感じた方がいらっしゃいましたら、遠慮なく感想欄などでおっしゃて下さい。できれば修正したいと思います。


でも、次話からは物語が進みます。乞うご期待ください!

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