お嬢様は反撃の準備を整えます
太平洋高気圧をぶち抜いてシベリア高気圧ぐらいになりましたね。ありがとうございます!
それでは本日の更新分、お楽しみください!
「その準備力、想像力、そして俺を前にして臆しない胆力……本当にいい女だな。冗談抜きで、俺の女にならないか?」
「ふふ、ありがとう。でも、遠慮しておくわね?」
ベックも本気ではなかったのでしょう。笑いながら私たちに椅子を勧めます。
「俺はベック、情報屋だ。情報屋なんて名乗っちゃいるが、要ははぐれ者、ならず者の類いと同じなんだ。そんな俺に対して王女のあんたが『命令』ではなく『協力』を望んでんだ。『万能の天才』の名にかけて、あんたの望みを叶えてやるよ」
「ありがとう、ではあなたの力、頼りにさせてもらうわね」
よし、これで情報戦に関しては遅れをとることはないでしょう。あとは私が王国へ帰還できれば、ほぼ勝利条件が揃います。
そのためにも、まずはスティアー卿のところでケーネたちと合流しなくてはなりません。
「けど姫さん、エスティア女史を拾うのとあの貴族のところへ行くの、どっちを先にするつもりなんだ?」
「うーん、それが悩みどころなのよね。ちなみにエスティアさんがいるのはどこなのかしら?」
「こっちに来てくれ。これが帝国の地図なんだが……そして、ここがエスティア女史のいる病院だな」
広げられた地図にマークされた場所……これなら、後の方が良さそうですね。
「ここ、地下水路が通っているのよね。なら、先に卿のところへ向かいましょう。この水路を抜ければほぼ真っ直ぐスティアー卿の領地に入れるわ。そこから車で邸宅に向かい、その後でエスティアさんを引き取るのがいいと思うわ。
病院への手引きは任せていいのかしら?」
「それは問題ない。車の方も用意しておこう。だが、そう決めた理由を聞かせてもらってもいいか?」
「病院の方は大通りからも外れていて、病人を運ぶには足が必要じゃない? あと、大臣はすでに私とリリンフェルトさんが脱出したことに気がついているはず。なら病院にも見張りがいると考えたほうがいいでしょう。
そんな場所へこのまま向かうのは下策じゃないかしら?」
「確かにな……じゃあ、俺の方は病院に配置されている人員の調査と、あんたらの分の武装を用意しときゃいいな」
「そんなこともできるの? 本当にあなた有能ね……情報屋よりも、何でも屋って名乗ったほうがよくない?」
なんで帝国はこうも有能な人間を放置しているのかしら? これだけの情報網、人脈、物流網……私だったらすぐさま取り込んでたくさん動いてもらうのだけど……
いっそのこと、私が取り込んでしまおうかしら?
「すべての準備が整うのに、さほど時間はかからない。そこの服を適当に見繕って、姫さんはすぐに脱出してくれ。リリンフェルトは姫さんの護衛を頼む」
「ああ、わかっている。姫さんもそれでいいよな?」
「ええ、道中お願いするわね。それとベック、一つ追加してもいいかしら?」
「俺には『さん』がないのかよ……で、なんだ?」
私は手近な紙に絵を描きつつ、ベックに見せます。エスティアさんが結核だというなら、そのまま運ぶのはあまりに危険すぎます。
「こんな感じの気密ベッドってないかしら? 彼女をそのまま連れ回すのは、疫病を撒き散らしているのと同じだもの」
「なるほどな、それなら病院の設備に似たようなものがあったと思うぞ」
なら、心置きなく彼女を運べますね。彼女を治すはずが、私まで罹患してしまっては元も子もありません。
さあ、反撃開始です!




