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お嬢様は一歩踏み込みます

「ねえ、私がここに閉じ込められてからどのぐらい経つのかしら?」



 あれから一度大臣がここにやってきてわめき散らした後、私はずっとある作業をしていました。その『ある作業』も終わったので、こうして私は柵の外側の守衛さんに話しかけたのでした。



「ん? あー時間か。今が昼前だから11時間ほどだな」


「では、もう少しで連絡が来ますわね」


「何のことだ? 前にも言ってたな、なんか知らせが来るって。そいつが誰か知らねえが、とりあえず姫さんがここにいるってことを知らないんじゃないか? 

 しかもここの屋敷、一応警備とか厳重なんだが……」


「問題ないわ。私の居場所はすでに掴んでいるでしょうし、あの子に侵入できないほどの警備を、この屋敷がしているとは思えないわ。というか、そんな警備が実在するのかしら……

 あ、噂をすればなんとやら、よ」



 私の言葉が終わるか終わらないかというタイミングで、音もなく守衛さんの後ろに小柄な男の子が立ちました。私の視線を追ってやっと守衛さんが背後の少年に気付き、ワンテンポ遅れて驚きました。


 彼の名前はリダ。私が王宮の近くを散策していた時に財布を盗まれ、ケーネとミリダに取り押さえられたところを私が拾ったのです。普通なら憲兵達に引き渡して終わりなのだけれど、財布を盗んだその手際があまりに美しかったので妙に感動したのよね。その隠密性は現在、ケーネの元で遺憾なく発揮されているみたいで嬉しいわ。


「お、お前いつからそこに居たんだ?」


「つい先刻からであります。大臣の邸宅に忍び込む無礼、お許しくださいませ。

 それよりもお嬢様、例の文書が届きましてございます」


「早かったわね。頑張ってくれたのでしょう、ありがとうね」


「いえ、もったいなきお言葉にございます」



 そっと差し出された手紙は案の定、小国連合から私に送られたものです。内容は……概ね私の予想通りでした。あちらは私が提示した条件に対し、一切の異論反論なく受け入れるそうです。まあ、あれだけ『表面上は有利に見える条件』を並べれば、ほぼ確実に受け入れてくれると思っていましたが。


 私は3通書きあげていた手紙の中から2通の手紙を取り上げ、リダに渡します。



「はい、これをケーネに、こっちをミリダに渡してちょうだい。それからあなたは一旦帝国を出て、王宮にいるお父様と合流してちょうだい。今回の事実をそのまま話して構わないわ。

 これだけのことをするの、あなたなら何日かかる?」


「1日と半日いただけましたら、完遂できるかと」


「給金を三倍にするから、その半分でお願いできないかしら? 無理をして欲しくはないけれど、貴方ならできると思うのよ」


「ええ、可能です。その代わり、お嬢様のお名前を使ってもよろしいでしょうか?」


「構わないわ。じゃあ、これを持って行きなさい。大体の無茶は通ると思うから」



 リダに渡したのは、王家の紋章が入った扇子です。工芸品としても価値がありますが、見るものが見れば私の所有物であることがすぐに分かる仕掛けが施されています。これがあれば、お父様にも容易く会えることでしょう。



「では、急ぎ知らせて参ります。ご無事で」


「ええ、あなたも気を付けて」



 私の言葉が終わると同時に、闇に溶け込むようにして去って行くリダ。ホント、彼の隠密性はどうなっているのかしら。


 さて、私も本格的に脱出の準備をしましょうか。しかし、その前に確認しておかないといけないことがあります。



「守衛さん、あなた……なんで大臣の屋敷にいるの? その目的と理由を話してちょうだい」



 私の言葉に、守衛さんの表情が変わります。酔眼は鋭い光を放ち、表情はとても険しく。


 彼は確かに嘘は言っていませんが、何か隠していることはあるようです。それを聞いてからでないと、彼を信用して行動はできないのです。



 



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