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王女殿下の評価は最高です

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 ナンコーク王国の南方には、マルク帝国が隣接しています。大陸のなんと三割以上もの国土を持ち、西は海に面しているため交易、漁業共に盛んです。北方には鉱山が多く存在しており、様々な鉱物を王国などの隣国に輸出しています。

 当然、周りの国からはその資源を狙われますが、帝国は何度もその侵攻を跳ねのけてきました。その結果、どこの国も攻められないような『大陸随一の軍事国家』が誕生したわけですが……


 要するに、マルク帝国は王国の何倍も豊かな国なのです。



「——————ここまでが、エレナ王女の情報になります」


「うむ、ご苦労」


 秘書からの報告を、スローダは鷹揚な頷きで応じました。


 三十代後半でしょうか、今風に整えられた髪に細身の顔は、理知的な印象を感じさせます。

 それもそのはず、彼はナンコーク王国へ派遣される予定の外交官でした。


「やはり、噂通りの王女であったか」


「はい、仁徳に溢れて芸術にも明るく、治世も優れておられるとか。大陸一の賢君と名高いのも頷けます」


「これでナンコークが豊かな土地であれば、今代で勢力図が一気に変わってくるかもしれぬが……」


 そう、ナンコーク王国はお世辞にも良い国土を持っているとは言えない国なのです。大陸のほぼ真ん中に位置しているため降水量が少なく、土地も比較的痩せているのです。

 

「前王が床に伏したという知らせを聞いた時、王国もここまでかと思っていたが……こうも賢君の時代が続くのならば、もっと王国との関係を築いておくべきだったな」


「仕方のないことでしょう。何代も続いて有能な指導者が続くなんてことはそうそうありませんし」


 確かに、歴史上賢王や賢帝、有能な為政者が連続してトップに立つことはほとんどない。初代が優秀でも次代はその努力を忘れ、三代目には権力を振りかざすだけの愚王になることが多い。


「今日の会談で、王女殿下はどのような話をしてくるでしょうか……」


「まあ、妥当なところだと先の大戦の清算だろう。前王と一応の不可侵条約を結んでいるとはいえ、かの国が負った被害は多い。ここでうちの国から譲歩を引き出さねば反乱が起きかねんからな」


 先王の時代——————今から30年ほど前、ナンコーク王国の西方に位置する小国が結託して帝国に侵攻しました。侵攻の際、中継地点として利用されたのがナンコーク王国の南西部。帝国が小国連合を蹴散らすまで、王国南西部は実質小国連合に支配されていたのです。


「今はかの地も復興が進み、住民の感情も落ち着いているとの話ですが……」


「無論、表向きはそうだろう。だが、一度自分たちの住む場所を蹂躙された怒りはそうそう消えるものではない。しかも、王宮が位置する王都からは山脈を隔てた遠隔地。先王の威光も、なかなか届きにくいというものだ。まあ、王女にとっては頭の痛い話だろうがな」


「ではやはり、王国の要求は飲まない方針で?」


「ああ。連合の侵攻に関しては同情の余地があるが、帝国の関知するところではない。支援の要請は受け入れられないな」


 固く口元を引き締め、スローダは会談の場へと向かうのでした。



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