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天才王女は帝国の守衛と仲良くなります

 目が覚めてから体感時間で3時間ほど経ち、やっと自分の置かれている状況がわかってきました。


 まず私のいる場所は、ザルバ大臣の別荘の地下だそうです。通路には大小様々な部屋があって、その入り口には太い鉄格子がはまっています。もちろん、私の閉じ込められている部屋にも鉄格子がはまっていて、私が起きた時に大臣は鉄格子の外に椅子を置いて会話していたそうです。

 

 あ、ちなみに私の拘束は解かれています。クッション性の欠片もない粗末な台に、手と足をくくりつけられていたので全身が痛いですが。


 私の拘束を外し、これだけの情報を教えてくれたのは———



「姫さん、あんたに頼まれてたのってこれでいいのか?」



 ひどいダミ声に赤焼けした顔、ガチむちな身体が特徴的な守衛さんです。大臣が去った後、私が台の上でジタバタしていると見るに見かねて、拘束を外してくれたのでした。



「ええ、注文通りだわ。けれど、貴方はこんなことをして大丈夫なの?」


「構いやしねえよ。俺は昔からあの大臣が大っ嫌いだ。しかもこんな別嬪さんを閉じ込めておくなんて、同じ男としても胸糞が悪いったらありゃしない。姫さんがあのブタにどうにかされちまったら、俺も寝覚めが悪いってもんだ」



 そう言いながらガハハと笑う守衛さん。私は目を凝らしてみてみますが、彼の表情や言葉に怪しいところは感じられませんでした。


 ならば、私もその恩に報いなくてはなりません。



「……あなた、王国に来る気はない?」


「はっ! さっき大臣が『王国は滅ぶ』って言ってたじゃないか。アイツはいけ好かない奴だが、いい意味でも悪い意味でもやるといったことはやる男だ。誰が好き好んで亡国に行くんだよ」


「彼の言葉通りなら、ね」



 私の含みを持たせた言葉に、笑っていた守衛さんはぴたりと声を潜めます。



「なんか対抗策があるってのかい? こんなところに囚われたままの状態で?」


「そもそも、私が何の手立てもなく囚われたと思ってる?」


「不意を突かれたのかもな? 聞いたところによると食事に薬を盛られたって話じゃないか」



 不意、ですって? あの大臣と食事をしながら、私が油断するわけがないでしょう。



「あのね、どんな睡眠薬でも料理の味を壊したり、色味を変えたりするものなの。大臣が私に薬を盛った料理は途中で出てきたそら豆のスープだけよ。あれだけ薄味の料理に薬を入れて、本当に気づかれないと思ったのかしら?」



 なめられたものよね。今この世界に存在している睡眠薬のうち、およそ八割ほどが私の開発した薬だというのに。もともとは被験者を眠らせるために作ったモノなんだけど、この世界では要人の誘拐や暗殺に使われてたなんて。

 当然その危険性や副作用も知ってるし、何なら拮抗薬だって作れるわ。


 まあ、私に薬を盛りたいならもっと勉強してこないとね?



「私がここに来たのは、あの大臣を徹底的に潰しておきたかったからよ。大臣が私をここに閉じ込めている最大の理由は、『私が王女でなくなる』という予想なのよね。

 じゃあ、その予想が裏切られれば? 王国が本当は滅ばずに、私が王女のままであり続ければ?」


「……他国の王族を監禁したってことで、重罪は免れないか。けどよ、それって姫さんの『王国は滅びない』っていう予想に基づいた話だよな?」


「だから、そっちの方も大丈夫なんだって。多分だけど……」



 私が言葉を濁したのは、まだ打った手に対しての返答を小国連合から受けていないからです。こちらとしては十分な条件を提示したつもりですが、さてどうなるでしょうか……


 本当なら今日のお昼ぐらいには連絡が来るはずだったのですが、囚われの身なので確認できないのです。



「なんだ、じゃあ王国は滅びないのか……」


「だからそう言っているじゃない。仮に私の目論見が外れたとしても、王国にはお父様とお母様がいらっしゃるのよ? あの二人が何もせずに手をこまねいているわけないじゃない」



 もしかするとお母様の『もっと周りの人を頼りなさい』という言葉は、こういった状況を予想して放たれた言葉なのかもしれません。だとしたら、本当にお母様はすごい人です。


 さあ、私はケーネをバカにしたクズ野郎に天誅を下しましょうか。



 



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