お嬢様は大臣と食事をします
昨日『誤字修正で指摘してください!』とお願いしたところ、なんと9件もの誤字報告をいただきました。本当にありがとうございます! 読者の皆さん、少し優しすぎません? いやもう本当にいつも助かっております……
しかもそのあとに感想欄で『ページ内検索を使えば楽ですよ!』って教えてくださる方まで現れたんですよ。皇女と王女問題を気づかせてくださったオルロワ様と、今回のページ検索について教えてくださった骨皮筋左衛門様、本当にありがとうございました! Thank you for impression!
骨皮さんに関しては、『ポーラが女性名だった問題』でもお助けくださってますからね。もはや聖人じゃないかと思ってます。
これからもこのポンコツ筆者を支えてくださいね!(オイ)
……もう、やっぱり来るんじゃなかった……断っておけばよかったわ。よく考えたら、来る意味も義理もほとんどなかったんじゃないかしら?
押し寄せてくる後悔を笑顔の裏に隠しながら、私はザルバ大臣の話に耳を傾けます。
こんな思いをしているのも、昨日の休暇の時に届いた手紙が元凶だったのです……
「あとお嬢様、このようなお手紙も届いてございます……」
あら、なぜまとめて渡そうとしなかったのかしら?
そんな疑問を抱えつつ受け取り、送り主をを確認してああ……と得心がいきました。
「例の大臣からでしたので、お嬢様にお渡しするか迷いましたが一応はご報告を、と思いまして」
私がザルバ大臣を嫌っていることを、侍女たちは知っています。ですから、彼女も配慮して迷ってくれたのでしょう。
「ありがとう。でも、さすがに無視するわけにはいかないから一応読んでおくわね。
そうそう、あれから腕の調子はどう?」
「お嬢様から頂いた湿布のおかげで、私たち三人とも痛みは引きました。まだ少し違和感はありますが、もう大丈夫かと。
本当にありがとうございます!」
「いいのよ。また何かあったら、遠慮なく言ってちょうだい」
彼女に対応しつつ、私は手紙の封を切って中を読みます。
あの大臣、筆まめというか筆跡はとてもかっこいいのよね。人は見かけによらない、ということかしら。
「あの大臣も、どうやら私のことをパーティーに誘いたいそうよ。昨日の夜会での無礼を謝罪する意味も込めて、大臣と私の二人で話したいんだって」
「エレナ、やめといたほうがいいんじゃないか? あいつと二人なんて、何をされるかわかったもんじゃない」
「そうですお嬢様、せめて行かれるのならケーネか私を連れて行ってくださいませ」
私も二人の意見に全面的に賛成。まあ何かをされることはないでしょうけれど、心情的にはあの大臣ともう顔も合わせたくないのよね。何せ、ケーネをバカにしたんだから。
でも———
「……とっても嫌だけれど、行くしかないわね。とっても嫌だけれど」
「無視してもいいんじゃないか? 公然であれだけの無礼を働いたんだ、いくらでも断る文句は立つだろう?」
「それもそうなんだけど、ここで断っちゃうと大臣と私の対立構造が明確化するわ。しかも、私のことを『相手の謝罪を受け入れない、狭量な女』と考える連中も出てきそうだわ。
まだまだ帝国と正面からやりあうには、準備が足りなさすぎる。端的に言えば、今は敵を作りたくないってところね」
避けられる争いなら、避けることが肝要でしょう。私個人のことなら突っぱねてもいいのですが、王国の民を預かる身として個人の感傷は二の次です。
……行かなくていいなら、絶対に行きたくないですけど。
「さすがに一人で行くのは心細いから、ミリダについてきてもらおうかしら。ケーネは今回、お留守番ね? 次の日にスティアー卿とのお食事だから、その準備をお願い出来るかしら」
「なんでだよ、と言いたいところだが妥当だろな……ミリダ、エレナのことを頼むぞ」
「もちろんよ。私がお嬢様をあんな奴の毒牙に掛けるわけがないでしょう?」
かくして、大臣との食事会が決まったのでした……
「今日は秘書の彼は来ていないのですか……できれば、直接謝りたかったのですが」
大臣が珍しく殊勝なことを言うので、私の意識が戻ってきます。本心では『あなたに会わせたくなかったのよ!』と言いたいところですが、そうも言ってられないので笑顔を作って答えます。
「いえ、彼にも用事がありまして。このように景色の綺麗なお店を用意していただけでも、大臣のお気持ちは伝わっていますわ」
帝国の中でもかなり高い建物のほぼ最上階、おそらく政府関係者の御用達であろうレストランに私とミリダは連れてこられたのです。静かな雰囲気に眼下の夜景が素敵なレストランです。
「失礼いたします。前菜のオードブルでございます」
三人の前にしずしずと料理が差し出されました。盛り付けもきれいで、次はケーネと来てみたいですね。
「お嬢様、私がこのようなお食事をいただいてもよろしいのでしょうか……?」
「いいのよ。ですよね、大臣?」
「ああ、構わんよ。ミリダ女史もエレナ殿下の大切なご友人、なれば一緒に食事を摂るのが道理でしょう」
「ですって。さあ、食べましょう?」
ふふ、私とミリダを『友人』と表現したのは素晴らしいわね。わかってるじゃない。
機嫌をよくした私は、大臣の浮かべる笑みの不気味さに気づかなかったのです……




