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帝国紳士は天才王女に一目惚れします

この作品、投稿してから秒速で誤字を指摘くださる読者さんがいらっしゃるんですよね。


本当に毎話、ありがとうございます……! 名乗り出てくださってもいいのに……なんて思っている毎日です。

 自分は帝国の、さる貴族だ。『なぜ帝国制なのに、貴族がいるんだ?』なんて考えてはいけない。私の家は帝国が建国するよりも昔から領地を治める地主であり、それは今でも変わらないのだ。


 さてさて、今日は帝国主催のパーティーに招待された。私も多忙の身、断ってもよかったが今回は各国の要人もやってくるとか。慌てて領内の仕立て屋にタキシードを仕立てさせた。


 そんなことを考えていると、続々と迎賓館の大広間に人が入ってきた。まず最初に入ってくるのは帝国の官吏や大臣たち。その中には悪名高く、そして私の嫌いなザルバ大臣の姿もある。

 あの男にはまるで帝国の紳士としての気概や誇りが感じられない。見れば見るほど肥え太ったネズミに見えてくるから、私は嫌いだ。


 次に入ってくるのは、各国の官吏や大臣、侍女たち。当然ながら皆正装だが、その中にも異国の情緒が感じられる。むしろ、それを感じるためにわざわざ早く大広間に入ったのだ。

 王国の人間は細身のシルエットが優美なドレスを身にしているし、共和国の人間は金糸をふんだんに使った衣装が特徴的だ。ちなみに帝国は、つや消しの黒を基調としたタキシードやドレスが一般的である。


 彼らの間である程度談笑が進んだ時、入り口の方がにわかに騒がしくなった。私も会話の隙をついて目を向けると、ちょうど帝国第一皇子のポール様と第二皇子のジルレ様が入ってくるところだった。以前まではそのそばに王がいらしたが、すでに他界されている。改めてその事実を実感しつつ、私はかの偉大な皇帝に内心で哀悼の意を表した。


 彼らが大広間の中央にやってくると、次々と人々が挨拶に向かう。あの二人も慣れたもので、一人一人にさほど時間をかけずに応対していくそのためにわざわざ中央までやってきたのだろう。

 だが私はあえて、その人の流れには乗らない。この情勢下、今の段階で彼らに迎合するのは早計に過ぎるからだ。私と同じ考えか、さりげなく人の流れから外れて脇に立っている人もちらほら見える。

 

 そもそも、彼らが参加者と同じ入り口からやってきたことにも問題がある。皇帝の喪に服したいという気持ちもわからなくはないが、二人とも同じ入り口からやってきては『まだ権力争いをやってます』と言っているようなものだ。

 小賢しいと評判の第一皇子に、愚鈍と評判の第二皇子……いっそのこと、賢君と名高いエレナ姫が治める王国へ亡命した方がずっと利は大きいかもしれない、そう思わせる後継者二人に、さぞ亡くなられた皇帝は悲しんでおられるだろう。


 それにしても、王国の人間は侍女でさえこのような聡明さを見せるのか……眼前でにこやかに挨拶する女性に会釈を返しつつ、内心驚愕していると入口がまた騒がしくなった。私は侍女との話を切り上げると、入口の方に顔を向けた。


 ———なんと美しい。


 脳裏に浮かんだのは、その一言だけだった。


 肩から流した絹のように艶やかな金髪も、くっきりとした目鼻立ちも、白磁のような真っ白の肌も、今まで見たことがないほど洗練されていて美しい。そんな彼女の魅力をはね上げるが如く主張する見事なプロポーションや、その身体を包むドレスも言わずもがなだが目を惹きつけて離さない理由の一つだろう。


 はっきり言って一目惚れだ。私が帝国の人間でなかったなら、間違いなくアプローチをしていたであろう。


 だからこそ、惜しい。私は複雑な気持ちで彼女———エレナ王女殿下の後ろにひっそりと佇む少年を眺める。


 漆黒の髪に漆黒の瞳。きりりと引き結ばれた唇も、ともすれば睨みつけているように感じさせる鋭いまなじりも、れっきとした被差別人種———メタナリア人の特徴だった。


 私はメタナリア人だからといって差別する気はない。あの聡明な王女殿下がわざわざ帝国のパーティーに連れてくるぐらいなのだから、相当に有能なのだろう。機会があれば、ぜひとも話してみたいものだ。

 だが、この場にいる多くの人間が彼を侮蔑の表情で見ているのも事実。特に最も差別が激しい帝国へ連れてくるのだ。王女殿下の側にいなければどういう扱いを受けるかわかったものではない。



「おやおや王女殿下、先ほどぶりですな。ところで、その黒犬はこのような場所に連れてくるべきではないのでは?」


 

 一同が王女殿下にどのように声をかけるか迷う中、巨漢の大臣の甲高い声が無遠慮に響いた。


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