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王女殿下は帝国に到着しました

 真夏の日差しに、かすかに聞こえる潮騒が運ぶ潮の香り。


 湿気の多い空気を貫くが如くそびえ立つ摩天楼が、この国の国力を示しています———



「……さすがは帝国よね。大陸広しといえど、ここまで工業国として発展した国はないんじゃない?」


「確かになあ。つか海に近いくせに金属が錆びてないとか、どんだけ金かけてんだよ……」


 

 マルク帝国のメインストリートを走る馬車、その窓の外から見える景色に、エレナとケーネは嘆息しました。


 二人と幾人かの従者が向かうのは、通りの先に見える巨大な建物———帝国の迎賓館です。



「お嬢様、本日の夜会は19時からでございます。このままお部屋に向かわれて準備をなさった後、帝国の大臣と会談が入ってございます」


「えー……あの大臣、あからさまに目つきがいやらしいからヤなんだよね……」


「お嬢様にそのような目線、本来なら私が抹殺しておくのですが……これからでも手配しておきましょうか?」


「あの、ミリダ? ここ帝国なんだから、冗談でもそういうことを言うのはやめてね? と言うかあの大臣だって、まさか一国の王族に対して変な気は起こさないでしょう」


「お嬢様がそうおっしゃるのならば自重いたしますが……命拾いしたな、大臣め」



 ここにはいない大臣に対して舌打ちをするミリダに、エレナは苦笑して応じます。エレナも普通ならたしなめるのですが、それほど大臣のことが苦手なのでしょう。


 実際、セクハラまがいの発言や態度は相当頭にきていました。しかし、相手は一応友好国の大臣。あまり無碍にはできません。


 エレナとミリダ、そしてケーネまでもが深々とため息をつく中、馬車は迎賓館の方向へ走ってゆくのでした。





「———遠路はるばる、帝国へよく参られた。大臣のザルバだ」


「わざわざのお出迎え、ありがとうございます。病床に伏せる父に代わってご挨拶いたしますわ」



 迎賓館の入り口にて、甲高い声をあげる二十代半ばの男。


 顔も体型も肥え太っていて、全身から『だらしなさ』を醸し出しているにもかかわらず表情にはどこか他人を見下すような雰囲気を漂わせる男。


 エレナは、はっきり言ってザルバが嫌いでした。



(うわあ……いつ会っても好きになれないわ……というかその体型、前に会った時よりもひどくなってない?)


(おい、表情が崩れてるぞ? ほら、話途切れたらまずいって)


 ケーネの表情にハッとしたエレナは、慌てて表情を作りながら口を開きました。



「私もザルバ大臣にはお会いしたいと思っておりましたので、こうして機会があって嬉しく思いますわ。しかし、私が到着したと同時のお出迎えとはいささか突然では? 何か早急の用事でも?」


 

 エレナの言葉に、ザルバはニチャリとした笑みを浮かべます。



「いやなに、別にそのような用事があったわけではないのだがね? エレナ嬢が王国の摂政に就任なさったと聞き及んで祝いたくてね? 迷惑だったかな?」


「いえいえ、そういうことでしたか。大臣殿のご配慮、とても嬉しく思いますわ」


(と言うしかないよね……てかさ、淑女に着替える間も与えずに挨拶って無礼すぎでしょ。新手の嫌がらせか何かなのかしら)


(いや、まったく何も考えていない可能性もあるぞ)


 

 普通、遠路からやってきた客人を玄関先で引き止めるのはありえないのです。すぐさま部屋に案内するのがマナーであり、現にエレナの後ろでは主人よりも先に入ることをためらっている従者たちが待ちぼうけを食っています。


 ちなみに、ミリダやケーネなんかは鬼の形相で大臣を睨んでいます。


 そんな二人の反応に対し、帝国側の従者たちは申し訳な表情を浮かべて立ち尽します。


 誰もが困惑するであろう状況で、軍服の男だけが俯きながら何かに耐えていました。




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