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天才王女の大誤算

風邪を引いてしまいましたがなんとか更新!

 ……さて、私が商会を設立してから半月が経ちました。商会の名前はシャルロット商会。『シャルル』に対して、女性名の『シャルロット』にしたらいいんじゃない? というアンネの意見を丸パクリした形ね。

 王家としては特定の商会を贔屓してはいけないのでしょうけど、今回のことは彼女の力を大きく借りているから無下にもできなくて。これでアンネは『王家の後ろ盾を得た商会』という強力なカードを手に入れたことになるという。


 全く、さすがはアンネだわ。


 

 ウチの商会も、ものすごい勢いで成長しているところ。初めは平民たちにタダ同然でサプリメントをばらまいて宣伝を行い、ある程度広まったところで王家主催の夜会で貴族用のサプリメントをお披露目したの。

 そうしたら売り上げが爆発的に伸びて、今では需要に生産が追いつかないほど。さすがの私もここまでは売れると思ってなかったから、コツコツ作りためていたストックはあっという間に消し飛んでしまった。慌てて薬師を雇って生産体制を整えたんだけど、まだ少し足りていないのよね……。まあ、ちょっと足りないぐらいの方が稀少性があっていいかもしれないけれど。

 そうそう、アンネの出資のおかげもあって、学校の設立資金は無事に貯まって現在建設中。王都の学校は半分ほど完成しているけれど、遠隔地のところはそうもいかないみたい。運営開始は年明けぐらいになっちゃいそうね。



 ここまで聞くと、いたって順調に聞こえるでしょう? 

 

 けれど、実は大きな誤算があって———



「お嬢様、こちらが新商品の必要経費をまとめた書類になります」


「あー、それはちょっと時間がかかりそうだからそこの書類の山においてちょうだい。あと、そっちの山は目を通してサインもしたから持って行って構わないわ」


 わかりました、と一礼してミリダが出ていく。寸刻空けずに書類を抱えた男性が入ってくる。


「エレナ王女殿下、こちらが学校設立、商会設立に対する各領からの返答です」


 ナンコーク王国は15の領と王家が直轄する王都で構成される連邦的な国家なの。それぞれの領を有力貴族たちが代々治めていて、残りの貴族たちが王都に暮らしている。

 当然、王家の決定や裁量はとても大きいものだけれど、勝手に領地に学校を設置することはできない。だから設立する前に書面で説明したのだけれど、やっとその返答が届いたのね。


「おおむね好意的に捉えている領主が多いようです。建設費を王家が全額負担すると表明なさったことで、自領の雇用拡大に使えると考えたのでしょう」


「それもあるだろうけど、この状況で王家に反発することにメリットを見出さなかったのでしょうね。だから、戸籍調査の方も早く済ませるように伝えて。はい、これがその催促の手紙よ」


「各領からは人手が足りないと返答が来ておりましたが……」


「王都から住民課の人間を各領に派遣して対応してちょうだい。すでに王都の戸籍調査は済んでいるから、それで片がつくはずよ」


 了解しました、と一礼して出て行く男性。と同時に、別の男性が入ってきた。


「失礼いたします。先日王女様からご提案ありました、学校への編入年齢について決定稿をお持ちしました」


「ありがとう。……初等部は7歳、中等部が13歳、高等部が16歳になったのね。まあ、妥当なところでしょう。ちなみに、この案は誰が提案したのかしら?」


「人事部のナギという男です。これまで目立った功績は立てていませんでしたが、上司の体調不良によって会議に参加していたようです」


「そう、そのナギに褒賞を出してちょうだい。この案はよくできているわ。今までこんな人物を眠らせていたなんて、自分が恥かしいぐらいだわ。

 彼をここに呼べたりする? そんなに急いでいるわけではないけれど、執務の後ぐらいにお話ししてみたいわ」


「そのお言葉、彼に直接お伝えくださればと思います。スケジュールの調整をしてきますので、私はこれで失礼いたします」


「あ、ちょうどいいからこの所得税に関する説明書と税収の報告書に対する回答を経理課に回してちょうだい」


 かしこまりました、と一礼する男を見送ると私は大きく伸びをしました。



 そう、私は完全なオーバーワークに陥っているのです。


 これまでもかなりの仕事量だったのに商会にまで手を出したから、もはや処理量に追いつかないほど仕事が増えてしまったの。少し落ちけば誰かに仕事分担していきたいけれど、現状の仕事量ではその人材を探す時間がないのよね。



 私はすっかり冷めてしまった紅茶に口をつけると、書類の山に伸ばしました。



 



 

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