天才王女はセールスがお上手です
「お嬢様、学校設立の件は私も理解いたしました。しかし、それが本日のお話ならばここに私がいる理由が見当たりません。一体、私は何の用事で呼ばれたのでしょうか……?」
不思議そうな表情でミリダが尋ねてきます。もちろん、ここに彼女を呼んだのには理由がちゃんとあります。
「あら、あなたにもお願いしたいことがあるのよ。
先ほど商売を始めるって言ったけれど、コレの宣伝をして欲しいの」
そう言いながら私が取り出したものに、部屋中の人間が不思議そうな表情をします。
「お、お嬢様、その白いものは何でしょうか……?」
一見すると、ただの白い丸薬でしかありません。しかし、これは私がこの数年間密かに使ってきた『あるモノ』なのです。
「これはね、サプリメントっていうものよ。これを飲むと壊血病も予防できるし、美容にもいいのよ」
「壊血病に効果があるのですか! そんなものがあったとは存じ上げませんでした……!」
ミリダが驚くのも無理はありません。壊血病はこの国だけではなく、貧しい地域で深刻な被害をもたらしている病気なのですから。
かなり昔から、新鮮な魚介類や野菜を食べることができない一部の平民が大勢亡くなるということが度々起きてきたのです。病気にかかりやすくなったり、歯が抜けやすくなったり、傷が治りにくくなったり。
これまで『平民病』と呼ばれてきたこの症状を、前世の私が『壊血病』として書物に残したことで広く知られるようになったのです。けれど、当時の私はこの症状に対して『栄養価の高い食事をする』という対処法しか見出せなかったのです。
「この丸薬には壊血病に効くと言われるレモンやナツメグ、ニンニクなんかの成分が入っているのよ。難しかったのは、加熱すると効果が極端に薄くなるってことね」
「だからお前は、レモンなどの輸入量を増やしたのか……あれは西方の地域でしか育たん作物だからな」
「ええ。西方の国では比較的症状の深刻度が低く、またきちんと食事をしている貴族にはほとんど見られない。そこからはじき出される原因はたった一つしかなかったので」
「お嬢様、先ほど『美容にも効果がある』とおっしゃっていましたが、なぜそんなことがわかるのです?」
「だって平民の肌って真っ白じゃないでしょう? 同じ人間でここまで違いが出るということは本来ありえないもの」
貴族のご令嬢がみんな美しいのは、きちんとした食事を摂っているからだと思ったの。そこでケーネに調べさせてみれば、案の定平民の中でも貧しい人ほど肌が赤黒く、よく血を流していることがわかった。
私が作ったサプリメントだけで効果があるとは思わないけれど、何もしないよりはマシかなって。
「で、これは売れそう? アンネはどう思う?」
「間違いなく売れるでしょう。国内への供給体制が整えば、諸外国にも輸出したいですね。もしかすると、このサプリメントというものが王国の特産物になるかもしれません」
アンネが唸るように丸薬を見ながら答えます。大商人の彼女がそこまで言うのですから、おそらく売れるのでしょう。私の思い込みではないようで、少し安心しました。
「で、このサプリメントを王家の名前で売って欲しいのよ。こっちの色が付いている方は貴族に、色の付いていない方は平民たちに。値段設定はミリダに任せるけれど、平民たちへは格安で販売してあげてちょうだい」
「よろしいのですか? それでは利益が出ない恐れがありますが……」
「いいのよ。そのかわり、貴族への丸薬は少々高くても構わないわ。そっちの方が箔がつくし、何より美容に敏感な貴族の令嬢や奥様たちは大金を払ってでも手に入れたがるわ」
それに、王家の名前で販売することに意味があるのよ。市民感情を王家に有利なものにしつつ、丸薬の効能をその権威で保証するという二段構え。これなら競合する薬師が現れても、こちらの売り上げはそうそう揺るがないはず。
そもそも、作り方を知っているのは私だけだし。
「それじゃ、すぐに準備してちょうだい? お父様はこのサプリメントの販売申請書にサインをお願いします。
何かあればすぐに私に連絡してちょうだい。さあ、頑張りましょう!」
ビタミンとか薬、病気なんかの最低限の知識はあるんですが、やっぱり作中で使うとなると難しいですね……
読者の方の中に詳しい方、専門家の方がいらっしゃいましたらお助けくださると幸いです!




