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天才王女と王子は晩餐会を楽しみます

(さてプレスト王子、噂通りの人間でしょうか……確かめるには、やはりこちらから仕掛けるしかないでしょうね)



 そう考えて王子を晩餐会に招待し、こうして彼の眼前に座っているのです。相手がそう簡単にぼろを出すような人物ではない以上、時間をかけて人となりを読み取っていくしかありません。



「つかぬことを伺うのですが、今回の訪問は王子の発案なので?」


「そうですよ。こちらから縁談を申し込んでいるのに、足も運ばないなんて不誠実なことは出来ませんよ。

 しかし貴女のように美しい女性と言葉を交わせるとは、望外の喜びですね」


「まあ、王子は女性を褒めることに長けておいでですね。……しかしお恥ずかしながら私は小国の娘、その覇を大陸中に轟かせるロレンス王国の王子が、どうして直に会いたいと?」


「王女殿下は少し謙遜が過ぎるようですね」



 私の言葉に、王子は苦笑しながらグラスに口を付けました。



「まだうら若き女性ながら辣腕を振るい、先の戦では三倍もの兵力差を跳ねのけて隣国を打ち破ったと伺っております。同年代の王族として、また一人の男としてこれほど魅力的な女性はそういませんよ。

 しかし、どうやら噂通りの女性ではなかったようですが」



 首をかしげる私に、王子は悪戯っぽく微笑んで



「評判など、遙かに覆してなお余りある女性だと思います。所詮、噂は噂と言ったところでしょうか」


「あら、これは一本取られてしまいました。私の目にも、王子は素敵な殿方と映っておりますよ」



 むう、なかなか手ごわいですね。これが公式の場面でなければ、赤面が表情に出ていたかもしれません。


 照れを苦笑でごまかしつつ、私もグラスに口を付けて唇を湿らせます。



「王子もその類い稀な才を遺憾なく発揮され、ロレンス王国を躍進されたと伺っております。それも民から愛される賢君と我が方の大使が伝えておりますわ」


「なんの、私など父の威を借りているにすぎませんよ。重要なことはほとんど、父である国王陛下の了承を得ておりますから」


「それは私も同じですわ。偉大な両親を持つと、私たち子は大変ですね」


「確かにそうですな。ですがそれだけの重責、跳ねのけて見せるのが王族の務めと父から寝物語の代わりに聞かされてきましたから。学舎に通う同年代の子らが童話を読んでもらっている中、私だけ内政の勉強をしていました」



 困ったように答える王子に、こちらの侍女たちも相好を崩します。普段は凛々しい男性が、こうして弱みを見せると女性は弱いのです。



「それは私も同じですね。童話の代わりに兵法書を、絵本の代わりに帝王学を学んでおりました。侍女たちが笑ったのも、そういう背景があってのことですわ」


「なるほど、では私たちは似た者同士、ということかな? 恥ずかしながら動悸を抑えるのに苦労するよ」


「どこの王族もそのようなものではないでしょうか。似た者同士、という言葉には私も気恥ずかしさを覚えてしまいますが」



 そう口にしながら、お互いに顔を伏せて肩を揺らします。傍からは年頃の男女が気恥ずかしさに顔を隠しながら笑っているように見えるでしょう。



(━━━この王子、表向きは本気で私に興味を持ち、年頃の男の子らしく衝動的に押し掛けたという体を崩さないつもりね。全く、さすがとしか言えないわ)



 私も同年代の女性として、そのような態度を取られれば大人びた対応は取れないのです。王子の言葉を一ミリも信用していないのは当然として、私があまりにそっけない対応をすれば向こうの心象も悪いでしょう。

 今のところ、王子は姫へ押しかけた誠実な男性というポジションを確立しているのですから。


 こちらの侍女たちも、最初は王子に懐疑的な心象を抱いていたようですが、今では大半が快く思っている雰囲気。さすがにミリダとケーネからは張り詰めた雰囲気を感じますが、普通なら彼の話術と柔らかい表情で心を開いてしまうところでしょう。


 それから私たちは取り留めのない会話を続け、晩餐会が終わったのは夜も更けた頃でした。

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