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とある秘書と使用人の独白

またもや19時更新!


このままだと、明日は某国民的アニメとかぶりますね……(笑)

 俺、ケーネの朝は早い。


 エレナが起きてくる一時間前には必ず起きて、王女の秘書として恥ずかしくないだけの身だしなみをする。別にここまでしなくてもいいんだが、俺のせいでエレナの評価が下がるのは気にくわない。それは俺の美学に反するのだ。


 準備が終われば、すぐさま部下たちに指示を飛ばす。自分はエレナのボディーガードも兼ねているので、日中は彼女のそばに付きっきりなのだ。物理的に不可能なことは、エレナにもらった部下たちに割り振ってこなしている。

 もちろん、彼女の秘書は自分が一番適任だとは思うが、それ以外の仕事が自分に合っているかはわからない。無用な意地を振りかざしてエレナの邪魔をするより、その道のプロに任せた方がずっとエレナのためになると考えた結果だ。


 そうこうしているうちに、炊事場がにわかに騒がしくなる。おそらく、侍女長のミリダが朝食の指示を出したのだろう。あと五分もしないうちにミリダはエレナの部屋に向かう。俺はその前に彼女を起こすべく、書類を整理してから立ち上がった。


 

 エレナの部屋は王宮の二階。一番南端の大きな部屋が彼女の部屋だ。扉をそっと開けると、俺は滑り込むように部屋に入った。


部屋の真ん中には大きなベッド。エレナは反対したのだが、ミリダが『お嬢様にはこれが似合います!』と押し切って部屋に置いたのだ。まあ、確かに俺もそう思う。エレナがちっさいベッドで丸まっている姿など想像できない。


 

 ベッドに寝ているのは、間違いなく絶世の美少女。雪のように白い肌に、美の神が本気を出したのだろう、整った目鼻。今は布団の下に隠れているが、細身からは考えられないほどのプロポーションをしている。

 カーテンの隙間からかすかに差し込む朝日。その光を受けた彼女はまるで、おとぎ話に出てくるお姫様そのものだった。


 この朝の時間帯が、俺は実は好きだったりする。当然、そんなことは死んでも口にしないが。



 しかし、こうしてもいられない。あまり長居すると、後でミリダにからかわれるのだ。あいつはこの時間帯に気が付いている節がある。


「ほら、もう朝だぞ? 早く起きて顔を洗ってこい」


「あふ……ああ、おはようケーネ」


「おう、おはよう」


 このあどけない表情。否応なく眼前の少女がまだ17歳の女の子だということを意識させられる。こんな少女の肩には、王国市民の命や生活がかかっているのだ。


 『俺が、俺たちがエレナを支える』


 幼き日に誓った大切なものを、毎朝思い出すのが俺の日課だ。








 私、ミリダの朝は少し遅いのです。もちろん早く起きてもいいのですけれど、あまり早く起きすぎるとケーネの楽しみを奪ってしまいますから。


 準備に時間はかけません。昨日の夜のうちに畳んでおいたメイド服に袖を通し、髪を整えれば準備完了。すぐさま厨房に向かいます。



「本日の朝食はパンと牛乳、ソラマメのスープをお願いします。ああ、お嬢様の大好きなイチゴのジャムは忘れないように」


 私としては少し少ない気もしますが、お嬢様は朝に強くありません。そういう配慮も、侍女としては大切なことなのです。


 ちらりと時計を確認すると、お嬢様がいらっしゃるまでまだ少し時間があります。かといって何かをするには時間が足りませんので、つい考え事をしてしまいます。



 ……帝国からの縁談の申し込み、聞いた時には腸が煮えくり返りそうになりました。あの美しく、可愛らしいお嬢様が縁談? しかも相手は第二皇子? ふざけるのも大概にしてほしいものです。


 そりゃ、いつかはお嬢様もご結婚なさるのでしょう。その時にはちゃんと祝福いたしますが、相手はこの私が認めた相手……とまでは言いませんが、少なくともお嬢様を幸せにできる人間でないと。


 やっぱり、少なくとも今回の縁談は論外です。なんとしてもお嬢様を帝国の魔の手から守りつつ、『帝国の内情を探りたい』というお嬢様の目的も全力でサポートしましょう。



 お嬢様に拾われた命、お嬢様のために使ってこそでしょう。私はそう決意を新たにすると、お嬢様の部屋に向かいます。



 

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