#2 盗賊少年と盗賊少女と姫と暗殺少女と腕輪と [シーン2]/ THIEF BOY,THIEF GIRL,PRINCESS,ASSASSIN GIRL AND RING [scene.2]
大変長らくお待たせいたしました。
第2話 シーン2です。
――……とりあえず現状の疑問点を整理しないとな……。
少年は傍らに置いてあった紙を手に取り、羽根筆の先に黒色の墨汁を付け、疑問を書き出し整理し始める。
【疑問:なぜシェリア・アイチ姫殿下は命を狙われていたのか】
【疑問:サエキの目的とは】
【疑問:暗殺者の正体とは】
【疑問:どうやってあの窮地から脱せたのか】
「現状、俺の中での疑問は四つか……」
少年は書き出した疑問を見直し、羽根筆の先を指先で拭き取り机においた。同時にガチャリと扉が開く。少年は扉の方へ見やる。
「……あんた……」
そこにはシェリアが毅然とした出で立ちで現れた。
「……貴方は……何者?」
シェリアは問う。
「……ただの盗賊だ」
少年はぶっきらぼうに答える。
◇
しばらくして、少年とレミとシェリアは情報交換をし、その過程で少年のいくつかの疑問が氷解された。
<【疑問:なぜシェリア・アイチ姫殿下は命を狙われていたのか】→【推論:政治中枢機能の権限】>
シェリアが命を狙われた理由について本人が推測する。
「恐らく、この国の政治中枢機能を奪うために私の命を狙ったと考えるべきね。アイチ王家の人間が全て死に絶えた際、大臣以下に一時的に権限を委譲する条文があるわ。その権限を使って何らかの目的を果たそうとしているのじゃないかしら?」
シェリアの推測を聞いてレミは「そんなことの為だけに人の命を狙うなんて……」と絶句した。
<【疑問:暗殺者の正体とは】→【結論:不明だが国外の人間の可能性大】>
暗殺者の正体について少年とレミは思案する。
「鉤爪を使う暗殺者は心当たり無いな」
「それに、この国の暗殺者がわざわざ国に喧嘩を売るような依頼を受けるなんて自殺行為に等しいわ、ましてや鉤爪での暗殺は少なく事もこの国では聞いたことないね」
<【疑問:サエキの目的とは】→【結論:不明】>
この疑問については誰も結論が出せなかった。
「ま、あんな奴のことだ。きっと碌でもない目的に決まってる」と少年はボヤく。レミとシェリアは少年のボヤきに同意した。
<【疑問:どうやってあの窮地から脱せたのか】→【証言:腕輪の変化】>
この疑問についてはシェリアが答える。
「あなたの腕輪が急に光ったと思ったら大きな筒状の何かに変形したわ」
「マジで?」少年は思わず聞き返す。
「本当よ」シェリアは答える。
少年はジッと腕輪を見やる。幼き頃から……物心ついた頃からずっとある、漆黒に『47』の赤い刻印が打たれた腕輪。
――疑問の答えの先には、過去から続く疑問にぶち当たる……何かが起きる前触れか?
一つの疑問が……少年の人生に関わる疑問が、全てに繋がろうとしている。
そんな予感を感じながら少年は窓の外を見やる。薄紫色の雲に遮られた陽の光がアイチ王国を照らす。
<聖歴2500年3月6日(土)[午前 8時30分]/H.A.2500/3/6(Sat)[AM 8:30]>
◇
「おうおう、坊主ども。派手にやらかしたなオイ」
突然、部屋の扉が勢いよく開かれるや初老の男が部屋に入り込む。
「な、何ですか貴方は!」
突然の闖入者にシェリアは驚く。少年とレミは男の事を知っている故に落ち着いていた。
「……頭領……」
少年は頭を伏せながら答える。
そんな少年とレミとシェリアを見やり、頭領と呼ばれた男、すなわちゲンゴロウは己の顎に手をかける。
「ふむ……ゼックの言うとおりになっちまったか……ったく、あんにゃろうめが、俺がそっちに逝ったら、たらふく酒を奢らせてやるからな」
ゲンゴロウは呆れ顔で天を仰ぐ。
「ぶ、無礼者! 父上を……前国王を呼び捨てするとは!」
シェリアが顔を赤く染めて怒る。そんなシェリアを見て、ゲンゴロウは一瞬キョトンとした。
「あー、そっか。そう言えばそうだな」
ゲンゴロウは一人で納得して頷いた。
「坊主どもにもそろそろ言うか……」
シェリア、少年、レミを見やり、ゲンゴロウは覚悟を決める。
「では、シェリア・アイチ姫殿下殿。お初におめにかかる。盗賊組合『夜烏』頭領、並びにアイチ王国軍特別諜報班班長のゲンゴロウと申します。以後お見知りおきを」
恭しく頭を下げるとゲンゴロウは自らの正体をシェリア、少年、レミに告げた。
ようやく第二話の折り返し地点に到達。
しかし、まだ肝心の暗殺少女が出てないっ!!