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魔銃士物語 -FarFutureMagicGunslingerStory- 【打ち切り】  作者: Dolenon
【序】覚醒/【Act.1】THE AWAKENING
3/6

#1 開幕は祝祭の夜に出会う[シーン2]/THE OPENING INTO CARNIVAL NIGHT [scene.2]

2019年5月22日:サブタイトル英文修正

2019年6月19日:サブタイトル変更

2019年6月29日:本文一部修正

2020年4月19日:微調整および空白行追加

2020年9月13日:加筆修正

「……嫌な予感が……早く終わらせよう」


 その時、どこからか硝子の割れる音が鳴り響いた。


「!」


 少年は一瞬だけ身体を強ばらせる。


「……行くしか無い……か」


 しばらくしてから意を決して、少年は地下倉庫から出る。


「音の位置と俺の位置から逆算して……こっちだな」


 少年は音の大きさと反響で向かうべき場所を把握していた。少年は迷わず向かう。


 ◇


 少年が通る道には、息を引き取った兵士の死体が転がっていた。少年は死体から目をそらし、己の意識を音のした場所に集中させる。


「……宝玉だけのつもりが暗殺現場とご対面とは聞いてない」


 少年は腰の短剣を取り出す。


「出来ればやり合うハメだけは勘弁してくれよな」


 祈るように少年はつぶやく。窓の外は相変わらずの祭り騒ぎの喧騒と共に花火が打ち上がり続けていた。


 ◇


「ここか」


 しばらくして少年は目的の場所に到着した。そこは豪勢な装飾が施された扉があった。だが、扉は中央からひしゃげたように折れていて、扉としての機能を果たしていなかった。


「この装飾……王族か役人の部屋……」


 少年は扉のあった場所少し離れた場所から耳をすませる。


「……中で誰かが争っている?」


 金属のぶつかる音が少年の耳に届く。少年は気配を更に殺し、そっと部屋の中を覗き込む。中には二人の人影が対峙していた。一人は闇よりも深い漆黒の出で立ちで鉤爪をした男、一人は純白の礼装姿で剣を手にする少女。


 ◇


<数分前/FEW MINUTES AGO>


「はぁ……はぁ……」


 純白礼装の少女は走る。漆黒の暗殺者から逃れるため走る。護衛や警備の兵士はすでに暗殺者の手によって全員殺されていた。


「いきなり何なの!」


 純白礼装の少女は走る。漆黒の暗殺者は脇目も振らず少女を狙っている。


「!」


 少女は豪勢な装飾が施された扉を見つけた。


「あそこなら!」


 少女は迷わず扉を開け、部屋に入る。そこは少女の自室だった。そして壁には一振りの剣が飾られていた。少女は迷わず剣を手にし、扉へ振り返る。刹那、扉が勢いよく開く。暗殺者が入ってくる。


「一体あなたは何者なの! 私を誰だか分かっているの?」


 少女は暗殺者に問いかける。暗殺者はクックッと笑い声を漏らす。


「ああ、知っているさ。シェリア・アイチ姫殿下、これも仕事なのでね。悪いが死んで貰う!」


 暗殺者は駆け出す。手には血まみれの短剣を逆手で持っている。


「くっ!」


 シェリアは手にしていた剣で短剣の斬撃を防ぐ。短剣と剣がぶつかり、ガキンと音を立てる。


「これはこれは……ただの箱入り娘かと思えば」

「なめない……でっ!」


 シェリアと暗殺者はお互い後ろに飛び退き距離を離す。


「短剣じゃ分が悪いか」


 暗殺者は手にしていた短剣を放り投げる。放物線を描き、重力に従ってカランと音を立てて床に落ちる。


「では……これならどうかな?」


 暗殺者が両手を大きく振ると、ジャキンと音を立てて鉤爪が現れる。


「今度は短剣のようには行かないぞ!」


 暗殺者は一気にかけ出し、勢いをつけてシェリアに襲いかかる。


「っ!」


 振り下ろされる鉤爪を剣で受け止める。それを見て暗殺者はニィっと笑う。


「かかったな」


 刹那、暗殺者の鉤爪の周囲を白いもやが包み込む。その合わせるかのように鉤爪は徐々にシェリアの剣に食い込む。


「くっ……」


 そしてシェリアの剣は耐えきれずに折れる。その勢いで鉤爪ははシェリアの礼装を引き裂く。引き裂かれた礼装からはシェリアの乳房があらわになる。


「ひゅー。いい乳してんな、これだから王族関係の仕事は最高だぜ」


 そんなシェリアを見て、暗殺者はニタニタと下品な笑みをする。


「……卑怯で下品な」


 シェリアは暗殺者を睨む。


「いいねぇいいねぇ、実にそそる……安心しな、()ってから()るぜ」


 暗殺者の下品な台詞にシェリアの表情は怒りで更に歪む。


「ひゃははっ!!」


 暗殺者の鉤爪がシェリアを引き裂こうと振り下ろされる。だが、鉤爪の刃は空を切る。


「なんだっ!?」


 暗殺者は狼狽する。今までそこにいたはずのシェリアの姿が消えたから。



<現在/PRESENT TIME>


 少年は暗殺者とシェリアの戦いを気配を絶つことを忘れないようにこっそりと静観していた。


 ――鉤爪の奴は……暗殺組合の連中か、もしくはこの国の人間じゃない。この国の暗殺組合の信条から考えると、後者でなおかつ国外の暗殺組合所属か。


 微かな状況から暗殺者の正体の一端を把握していた。アイチ王国における暗殺組合は"悪しき者のみ排除すべし"を信条としており、殺しを必要悪と捉え、決して快楽に浸ることは無い。


 ――このまま静観して見殺しにするのは目覚めが悪い。


 少年は靴のかかとを軽く叩く。靴底からは車輪が飛び出した。そして、軽く床を蹴ると滑り出し、一目散にシェリアを抱きかかえる。


「なんだっ!?」


 そして暗殺者は空を切った。そして後ろに振り向くと、窓の前にはシェリアを抱き抱える少年の姿が月明かりに照らされていた。


「てめぇ……なにもんだ?」と暗殺者は問い、

「あ、あなたは?」とシェリアも問う。


「……ただのおせっかいなコソ泥です……よっ!」


 少年は答えると同時に後ろ足で窓を蹴り割った。


「宝玉盗みから誘拐に計画変更かよ」


 そう呟いて、少年はシェリアを抱き抱えたまま、蹴り割った窓から飛ぶ。

シーンを書き上げるのにかなり時間がかかりました。

シーン1は序

シーン2は破

を意識しています。


次のシーン3は当然急です


序破急

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