#1 開幕は祝祭の夜に出会う[シーン1]/THE OPENING INTO CARNIVAL NIGHT [scene.1]
本編第一話のシーン1です。
2019年5月22日:サブタイトル英文修正
2019年6月19日:サブタイトル変更
2020年4月19日:微調整および空白行追加
2020年5月9日:微調整
2020年9月13日:加筆修正
<聖歴2500年3月5日(金)[午後 9:30]/H.A.2500/3/5(Fri) [PM 9:30]>
アイチ王国の城下町は、夜になっても祭り騒ぎで賑わっていた。そんな中、一人の少年が黒い外套に身を包み、気配を絶ち、大通りを歩く。路地裏には人はおらず、少年は悠然と路地裏を歩く。曲がり角を曲がった際、前方から肌の露出が多い格好の朱色の髪をした少女が歩いてくる。そしてすれ違いざまに目線を一瞬合わせ、少女は少年に一枚の小さな紙切れを目立たない様に手渡す。その後は何もなかったように離れる。
◇
少年は町の一角にある円形の隧道の前で手渡された紙切れを広げる。
『調べでは十三人の警備兵が巡回している。お目当ての宝玉は三階の宝物庫に保管されているらしい。兵士の巡回経路は、いつものよ。私はいつもの場所から見張っておくから丁寧な仕事でね』
「丁寧な仕事……か」
少年は黒い外套を脱ぎ捨て、左腕に射出式鉤爪を装着、左足には漆黒の脚鞄を装着、腰には護身用の短剣を装着、そして漆黒の鉢巻きを頭に巻きつける。
「……」
全ての準備が整ったのを確認した後、少年は空に浮かぶ月を見上げる。その日の月は、青白く輝いていた。そして少年は円形の穴の中へ入る。
◇
ナゴヤ城の地下倉庫にて、床の一角がズレていく。そこには木と竹で作られたはしごが立てかけられている縦穴がポッカリと口を開けていた。
「よっと……」
少年は穴から這い出るや、すぐさま近くの木箱の陰に身を隠す。
「……おかしい……」
しばらくして、少年は異変を感じていた。普段の警備体制なら地下倉庫には常駐の警備の兵士が二人配置されているはずが、今は誰もいない。そして、ツンと鼻につく鉄の匂い。
「……!」
暗闇に目が慣れてきたところで少年は異変の原因を目撃した。警備の兵士が死体となって転がっていたからだ。鎧と甲の間から血を流している。
――この手口……まさか暗殺者に?
落ち着きを取り戻した少年は、死体の様子を見て一つの可能性をはじき出す。
――嫌な予感が……早く終わらせよう。
その時、どこからか硝子の割れる音が鳴り響いた。
第一話の序となる部分です。
魔銃士とタイトルにあるけど今のところ魔銃が出る気配ゼロです。