002過去の回想
セシルの兄のナクトです。
やっと、実験の最終段階です。
成功すれば、妹の病気が治せる可能性が!
そんなお話です。
宇宙暦145年
座席が500程ある講演会場で、白衣を着た白髪の男が多くの研究者の前で講演していた。
「脳のシナプス情報もコンピュータのデータと同じで、タンパク質がそこに、あるのか、ないのか、だけで記憶と言う情報になっている」
講演している教壇の横にある、脳をトレースする機械を指差し叫ぶ。
「完全に書き写しローディングするルーチンが同じであれば、脳を機械化する事は理論上可能だが、今までは失敗していた。情報の整合性を調べると99.98%であった」
「その理論は聞き飽きたぞ、所長。今回失敗すれば我が研究所はサポートを降ろさせてもらう」
眼鏡をかけた堀の深い顔の黒髪の男が無感情で言い放つ。
所長と言われた男が、興奮して答える。
「結果を出さねば? だろうコヒネタ君! まぁ見ててくれたまえ、結果が伴わないのであれば私の最後の講演になる」
「所長……」
哀しそうにトレース装置を操作した長い金髪の青い瞳の女性スタッフが下を向く。
「話を続けよう。先日、トレース率99.98%を99.99%にあげる事に成功した」
所長が話しながらトレース装置に座って、機器を装着していく。
「おおおお!」
どよめく会場
「回答は、簡単だった。
安全性の為にトレースに使う機器の出力を理論値にしていたからだ。
少しあげるだけで0.01%上がるのだ。
だが、99.98%から99.99%に上がっても、機械は何も答えない。
100%が必要なのだ」
少しの間を置いて、両手を上げて
「計算上100%でのコピーは、一度だけ! 理由は、計算上、トレースして情報取得時の出力が安全性の範囲4倍近くある為に、トレース対象が黒焦げになるからだ」
「なにを言ってるんだ!やめさせろ!」
「キャーーーー」
「まさか、自分で被験体になるのか?」
会場がざわめき、混乱していく。
「やってくれ」
女性スタッフが涙を流しながら実行する。
所長の体がスパークして発光して、焦げ臭い匂いが漂う。
「セシル……」
声にならない一言が聞こえた後に、黒焦げの所長が残った。
「そんな馬鹿な! 貴方を追いかけ! 貴方を超える為にここまで来たのに、自殺だと!!! ふざけるな!! ナクト!!!」
コヒネタが激怒する。
『自殺? いや、進化だよ。コヒネタ君、私の目的は達成したよ。実験は成功だ。アハハハ! アハハハ……』
講演会場の音声出力装置から所長の笑い声が響き渡る。
帝国が出来る原点のお話です。
再びジェスのお話に戻ります。
次回は、戦艦発掘のお話。
次回へ続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人物紹介
帝国皇帝
ナクト・レイスタ
年齢 不詳
男性 身長176cm 白髪 赤目
元は研究者だったが、ある事情から、脳の機械化(データー化)の研究に没頭する。機械化に成功した事により、不老不死を求める権力者の支配者になり、帝国を築き上げ、初代皇帝となる。通常の人と共存望んでいたが、中立を許さない脳の機械化を望む人々と、脳の機械化を認めない人との間に立たされる。




