030鷹の爪の正体
真紅の聖騎士の零です。
ラクアと組んで、パワードスーツでモンスターの討伐依頼をこなしています。
あまりの戦力差で、パワードスーツの操作練習になりません……ジェスさんを襲った方が良さそう。
今回は、ジェスさんが男爵に対して何かをするお話。
今日も零封亭で朝御飯を3人で食べている。
零さんの身体の調整まで、あと2日。
世話になったルークの町の懸念事項の処理に動こうと思っている。
「零さんとラクアは、冒険者ギルドで依頼を受けてパワードスーツの訓練お願いします」
「ジェスさんは、何するの?」
ラクアが聞いてくる。
「悪い噂のフェレディ・アーギス男爵を改心させてくる」
「そう簡単に、出来るものなの?」
「ふふふふ!」
「ジェスさん怖いです」
私の笑いを聞いてラクアがきみわるそうに、こちらを見る。
「ジェスさんやっと、まともに歩ける様になって来たね」
零さんが生身の私の筋力を評価してくる。
今は、3人ともパワードスーツを脱いでいる状態だ。
「全身が筋肉痛ですが、毎日リハビリしてます」
「ジェスさんに会ってから、鍛えて無いのに力が上がって来てるんですけど、これ病気か何かですか?」
ラクアが目の前で、リンゴを握りつぶしてコップに入れて飲み干す。羨ましいすぎる。
「この世の中のルールで、モンスターを倒すと倒した人へモンスターの力の一部が移ると思ってください。何故か私には、その恩恵はないですが……」
「そんなルールだったんですか! 一杯、倒して来ますね」
いつも、お気楽で、明るいラクアであった。
解散してパワードスーツを装備してから町を1人で出る。
町の入り口で、ギルドマスターに話かける。
「ギルマス!行って来ます!」
「う! 誰から聞いたんだ!!」
「キャサルさんですよ」
「隠れて影から治安を守っていると言うのに! ジェスさん、この事は内密にしてください!」
そう言って門番っぽいライトプレートのハーフフェイスの兜を脱ぐ。
隠れていた長髪の銀髪と銀色の目が光り輝き、超イケメンが現れた。
「な!」
「いつも驚かされてたジェスさんから、やっと一本取れましたね。聖剣のルスターク・エオと言います。よろしくお願いします」
「……も、元1級冒険者って聞いたんですが、1級昇格試験受けたいです。どうすれば良いのですか?」
「1級ですか? 1級は各国の王都で受験出来ますよ。
国によって審査基準が違うのですが、何処でも1級を取得すると冒険者1級として世界共通で使えます」
「他の国でも?」
「冒険者ギルドは、永久中立の組織で全ての国にあります。
目的がモンスター討伐と未知の地域への調査ですから、国にとらわれず各国で税金を正確に支払っているので各国で歓迎される組織です。
ジェスさんとラクアさんですよね。4級からだとギルドマスターの紹介状が必要ですね。用意しますので王都で受けてみてください。
キャサルに渡すように、言っておきます」
「ありがとうございます」
「あ、獣王の国では、試験を受けない方が良いですよ。難易度が1番高い国です。落ちられると紹介状出したギルドマスターの信用が落ちるので、避けてください。ジェスさんなら、王都の1級は大丈夫です」
今後の目的の一つだった1級の紹介状は、問題なくゲットできそうだ。
ギルマスと別れて人気がない森に入る。
過去に帝国の施設から持ってきた、ハミングバード型ドローンを大量に森に放す。
1時間ほどで盗賊団鷹の爪のアジトを発見する。
アジトを分析すると、予想通りだったので盗賊団を殲滅から改心させる方向性に作戦を切り替えた。
いつから、こんなに優しい人になったのだろう?
連邦時代のジェノサイドを思い出して、不思議に思う。
大盾を転送装置に変換して、ゲートを開きアジトへ侵入する。
アジトには、盗賊の男達と女性と子供がいて生活していた。
過去に出会ったバレルがいるので話しかける。
「リーダーに会いたいんだけど、取り次いでくれないか?」
「な! お前は、前の仕事で妨害した奴じゃないか!」
「金になる話を持って来たって言ったら?」
「なんだと! 少し待ってろボスをよんでくる」
よく見るとバレルの歩き方が変であった。
予想通りの様だ。
リーダーが来たら聞いてみよう。
「オメェ! 前のフルプレートじゃねえか! 金の話ってどんな話だ! ちょっとこっち来い! 剣とかそこ置いてから入れ」
剣と盾を液体金属状に変形させて背中の飛行用のランドセルに再構築した。
「収納出来るから大丈夫ですよ」
「オメェ何ものだ? 魔道具なのか?」
案内されて会議室のような部屋についた。
部屋の中心へ歩いて行く。
他の盗賊の男衆と数人女性が混じっているが、20人に囲まれた。
「これだけの人数に囲まれても、躊躇せずに無問題で来るって凄いな、お前は」
「どちらも得する話なので問題ないです。話に行く前に質問です。この質問に嘘は挟まないでください。言いたくない場合は黙秘でお願いします」
「何仕切ってやがる!」
バレルが叫んだ。
「質問一つに金貨1枚出します」
「わかった答えよう。嘘だったら、此処から出れないと思え」
「リーダーのお名前は?」
「…………。」
「黙秘ですね。リーダーの方は左手が義手ですね?」
「なんでわかった? その通りだ」
「ロッキーは、目があまり見えていないですね?」
「!? なんでわかるんだ?」
「バレルは、右足の付け根から義足ですね?」
「!? そうだ!!」
「その他の人も、なんかしら障害があって引退した冒険者ですね?」
「「「そうだ!!」」」
「お前は、こんな質問で金貨5枚だぞ! なんの意味があるんだ?」
ランドセル付近に収納している、金貨を左手に流して、金貨5枚を、リーダーの目の前に並べる。
「あなた方の信用を得るためです」
「な! 本当に金貨だ!」
数人が並べ金貨を確認した。
「次の質問です。とある人物から物を奪う依頼をしたいのですが、金貨何枚が相場ですか?」
「場合によるが、3枚から請け負う」
「男爵から受けた時、いくらもらえました?」
「……5枚だ!」
「護衛の騎士が怪我をしていましたが、トドメを刺していませんでした。なるべく殺さない事が鷹の団の方針ですか?」
「そうだ! 無用な殺生はしない」
「男爵の名前は、フェレディ・アーギスですか?」
「…………。」
「もしもあなた方の怪我が全て治り、なおかつ戦闘力が数十倍になって、支度金で一人に金貨2枚づつ差し上げるなら私の配下になりますか?」
「そんな夢の様な話があれば、配下にでもなるが不可能だ。有り金、全部置いていけ」
先ほど出した5枚の金貨に、更に5枚の金貨を加算する。
「それが有り金全部か?」
「いいえ、20人ほどいらっしゃるので、支度金も出しましょう」
ゆっくりと40枚の金貨をさらに積む。
金貨は50枚になる。
「な、なんなんだ! お前は!」
見たこともない様な、金額に絶句し始める。
騎士の年収が平均金貨6枚の世界では、結構な金額だ。
稼いだばかりのお金だが人助けなら良いだろう。
「あとは、怪我を治します」
「な、何を言ってるんだ!」
「リーダーさん左手を見せてください」
リーダーが恐々ゆっくり、左手を出す。
私も左手を出して握手する。
「2分耐えてください」
リーダーの義手部分を全て、私の左手のナノマシンから大気中のナノマシンに干渉して、大気中のナノマシンを凝縮して入れ替えて変化させていく。
最後に肉体との接合のリンクをして制御用のナノマシンを体に流し、使用方法をインストールしていく。
最後に義手部分を肉体との全く同じ外見にする。
「出来ました」
「な! 俺は奇跡でも見ているのか! 俺の左手が! 左手があるぞ!? 感覚もある!! 冒険者に戻れる!」
リーダーが涙を流してる。
「本当の左手ではなく、本当の左手以上の義手です。力が通常の10倍以上あるので気をつけてください。あと刃物も通らないと思いますから、防具や武器として左手が使えます」
「え???? えええ!!」
残りの人もどんどん治療していく。
「目が! 目が見える!! 見えすぎる!! なんだ自由に透けて見えたり! リーダーが裸に見える! 凄いことになってる!!」
ロッキーが、興奮しまくる!
女性の方を見た途端、鼻血を出して倒れた。
「俺の足が治った!! ジャンプもできる!!」
ドカ!!
ジャンプして天井に頭を打ったバレルが、頭を抑えて転がってる
そして、この場にいる20人を全て治し終わった。
「私の名前はラッキだ。感謝する賢者様。貴方の配下に喜んで入ろう」
リーダーがそう言うと、一同ひれ伏す。
「では、この中で顔がバレていて、指名手配されている物はいるか?」
「7人いる。私も名前はバレてないが顔を見られている」
「名前と顔を捨てれますか?」
「もちろんだが、どうするんだ?顔を捨てるって?」
顔が指名手配されている人を全て、ナノマシンを利用して整形していく。
「前よりイケメンになった!!」
「すげえよ!! ハゲが治った!!」
「神だ!私、女神みたいになった!!」
みんな、良い方向に整形したので大満足したらしく、整形した人だけは、私を見る目が完全に狂信者っぽい……
「依頼したいことは3個あります。全員が冒険者復帰をしてもらい、ルークの町を守る自衛団の設立、フェレディ・アーギス男爵を没落させてください」
「喜んでやらせてもらうが、あんたなら自分ですぐ出来るんじゃないか?」
「実は、長い旅に出る予定で、お世話になったルークの町に、恩返ししたくてね」
「そんな、理由で俺たちを助けてくれたのか? 帰ってくるまでに最高の町にしといてやるぜ!」
「私のことは、内密におねがしまします」
「それは、出来ない相談だな。俺の中で一生ついて行く兄貴になっちまった」
ラッキが怖い発言してきたので、撤収を急ぐ。
「よ、よろしく!」
「え? あ! 待ってください!! 兄貴!!」
転送装置でゲートを開いで逃げ帰った。
強化された冒険者の自衛団が創立!
これで、この町は安泰でしょう。
次回、この世界の謎がわずかに紐解かれるお話




