002町を目指して
作者のアイです。
未来の地球に来てしまった主人公!
どんなアクシデントが、起きるのか?
今回は、そんなお話です。
未来に来てしまった事は、理解したが腹が減った。
パワードスーツとスーツ装着用の服を着ている以外に、何も装備がない。
情報もほとんど無いために、無性に不安になる。
「食料の確保と、飲み水のを探さなければ」
周囲を見渡すと広い草原で遠くに山脈と、その手前に森が見える。
川らしきものは見当たらない。
動くものも、風になびく草原だけだ。
大気中のナノマシンの解析が終わらないと、危険がある為にパワードスーツが脱げない。
まずは地球が、どうなったのか調べよう。
【通信可能な装置が、存在するかサーチしてくれ】
『スーツ内の、情報データベースに、アクセス。
通信電波受信。
通信可能な装置を発見。
《地球の首飾り》4番衛星。
アクセス権限が無いため、ゲスト権限で通信開始。
現在待機中』
知識に無かったので、もう一度聞く。
【《地球の首飾り》とは?】
『地球の赤道上空に、設置された12個の静止衛星』
確か帝国の防衛システムとして、設置されていたのを思い出す。
1万年以上経過しているが、動いているのか?
使える可能性を信じて聞いてみる。
【衛星の状態は、どうなっている?】
『4番衛星以外とは、通信が取れないため不明』
【過去の記録は、残っているのか?】
『ゲスト権限では、閲覧出来ません』
敵の衛星の為、最低限しか使えなようだ。
【衛星から私が見えるなら、周囲の地図を表示】
パワードスーツ内の全周囲表示画面に、現在地点が表示される。
GPSの機能は、ゲスト権限で使える様だ。
山脈を目指すと道があり、その先に町があるのが、確認できる。
とにかく情報が足りない。
人が住んでいる場所を目指さなければならない。
いない可能性もあるのだが……
『大気中ナノマシンの解析が、終わりました。
結果を表示します』
ディスプレイに流れる分析結果を見て驚く。
パワードスーツに使用されているナノマシンは、ver3.5なのだが、なんと大気中のナノマシンは、ver9.3であり様々な機能が追加されている。
情報通りだと人体への危険性はないので、パワードスーツの顔装甲部分を解除する。
顔を覆っていた装甲が、液状化して背中に流れていく。
「これが地球の空気か……」
生まれてから宇宙空間で過ごし、パワードスーツの訓練と実践のみを生きる糧にしていた私が、初めて地上を感じた瞬間だった。
まだエネルギー切れから、さほど時間がたっていないので、ブースターで空を飛ぶ程のエネルギーがない。
徒歩で、人が住んでいる場所へ目指す事にした。
いったん、解除した顔装甲部分を再構築して覆う。
1時間ほど歩くと道に出た。
舗装などはないが人の手で道として作られた形跡がある。
あまり手入れはされておらず、車輪などの通過した跡が数多く残っていた。
あとは、道なりに町を目指す。
衛星からの地図だと3時間ほどで到着するはずだ。
少し歩くと、パワードスーツの集音システムが人の話声を拾う。
曲がりくねった森の中の道のため、近くだと思うが視界には見えない。
聞こえてくる声は、連邦で使われていた標準語では、なかった。
わからない言語だったので、スーツの人工頭脳で解析を始める。
【翻訳可能か?】
『類似言語が、見つかりました。可能です。
西暦時代の英語に近い言語であると判定。脳に書き込みますか?』
連邦の軍人の一部は、脳に記憶データをそのまま保存できる。
脳内に記憶装置用チップとパワードスーツのアクセス用チップを埋め込んでいる為である。
学習は主にインプラント(埋め込んだチップ)に、書き込むだけで、すぐに終わる。
記憶データの書き込みと、引き出す時間は個人差があり、私は苦手であった。
【言語情報とその西暦での環境知識を、書き込んでくれ】
軽い目眩がして書き込みが終わり、聴こえてくる声の内容がわかってくる。
「護衛は倒したぞ」
「この薬だけは、渡せない!」
用心の為、パワードスーツの可視光線を透過させて、相手から見えなくなる光学迷彩に、変更して接近する。
パワードスーツが透明な靄のような状態になり、目視できなくなる。
過去のオーパーツに近い存在の衛星を発見!
今後のキーになるような高性能!
次話で、戦闘の予感!