0-2 エピローグ〈中〉
「では、今日のホームルームを始めます」
数学の授業が終わってからまた数回の授業があり今は帰りのホームルームである
「連絡事項は……」
先生が今日話すべき連絡事項を話しているのが聞こえる。まぁ、自分とはほとんど関係ない事なのでそこはスルー
「では、ホームルームを終わります。道には気をつけて帰りなさいね。」
そう言って先生が片付けを始めると生徒もざわざわと自分のことを始めた。ある生徒は部活にある生徒は教室で雑談をそしてある生徒は帰る支度を
「……」
俺も帰る支度をして家に帰ろうかとしていると
「春くん待って!私も帰るから!」
そう言って急ぐように幼馴染はカバンに教材を仕舞っている
梓は他にも友達がたくさんいるのにも関わらず俺が帰ろうとするとその度一緒に帰ろうとしてくるのである
そうこう考えているうちに仕舞い終えたのか走ってこっちに来た
「お待たせ。帰ろっか」
「おう」
それだけ返事をして教室を一緒に出る。その時に背後から「気をつけろよおふたりさん」と言われて梓がクラスメイトに手を振り返している
俺と梓の家は高校からそこまで遠くない。歩いて30分と掛からない距離なのでいつも2人で歩いて帰っている
「なぁ、いつも俺なんかと帰ってないで他の友達と仲良く帰ったりしないのか?」
「何度も言ってるけど私は春くんと帰りたいからいいの」
そう、同じことを何度も言っているが梓は自分がやりたいからと言ってきかない
「ふーん。ならいいんだけど」
俺も同じことを聞き同じ答えなので適当な返事で返す。いつもはそれで終わりなのだが今回はいつもと違った
「春くんこそさ、他の男の子とか女の子と一緒に帰ったりしないの?」
梓の方からそんなことを聞いてきた
「俺はいいんだよ。そんなに仲良くするような奴はいないし。梓こそ友達多いんだからもっと他の奴と仲良くいればいいんじゃん」
「いいの!私は春くんと帰りたいんだから」
梓が怒ったかのように大きな声で言ってくる。あまり見ない光景にこちらが少し凄む
「あ、ごめん。急に大きな声出して」
自分が大きな声を出してしまったことで悪いと思ったのか梓が謝ってきた
「いや、こっちこそごめん」
こちらとしても強く言いすぎたのでお互いに謝りあうという形になった
結局、どうしてやけにムキになったのか理由が分からないままゆっくりと家への帰り道を2人で並んで歩いた
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「(あぁぁぁぁぁー!なんで!?なんで怒鳴っちゃったの!?)」
梓は梓で春樹と2人で帰る中でパニックになっていた
「(こんなこといままでなかったのに……どうして怒っちゃったの!?)」
そう、いままで大きな声で喋ることはあっても春樹に対してこんなにも怒りをあらわにして怒ることなど1度もなかったのだ
というより人生の中でもほとんどないのでほぼ初めてだった
「(そうだよ!春くんが急に俺なんかなんて言ったからだよ!)」
春樹は他の子と仲良くしたらとはよく言ってはいたが今回のように自分自身のことを悪く言ってまで勧めるようなことはなかった
それが梓にとっては琴線に触れてしまったのだ
自分自身のことをそんなに価値のないものだと言っているかのように
梓にとって幼馴染の春樹という存在はかけがえのないものとなってしまっていることに
小さい頃から一緒に育ち、小学、中学、高校と同じ道を一緒に歩いてきた取り換えも出来ない重要な存在に
その事を女の子の友達に相談したことがある
その友達はニヤニヤとしながら恋なんじゃないかと言っていたがいまいちわかっていない
この心が恋なのかそれとも幼馴染としての親愛なのか。そんなことを考えながら夕焼けで赤くなった街の中を2人で歩いていった