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~異世界の車窓からハルト2~


何故か、ため息をつきまくる謎の魔法使いの美少女シエラと共に僕は半ば無理矢理に旅に出ることになった。別に魔王を倒すわけでも、ダンジョンを攻略するわけでもなく、もちろん人間を脅かす他種族を殲滅するわけでもなく、僕のカードを探し出すという、ものすごく平坦な理由だ。

一応、説明しておくと、僕がこの異世界に持ち込んだTCGカードは計50枚(内2枚は行方不明)いずれかの発動条件を満たすことによって、効果を発動できるようだ。どこかの大きな広場を吹っ飛ばして、山をえぐるような大魔法を発動した龍波動りゅうはどうはカードのフレーバー・・・、いわば、カードに記載されているセリフ的なものを読み上げることで発動した。他にも同じ条件で発動しないかと、カードのフレーバーを全部読み上げてみたが、発動するものはなかった。どうやら、発動条件がわかって、使えるようになったカードは黒い状態から元のイラストが書かれた状態に戻るようだ。いくつかはすでにイラストが戻っているので、推察になるが、発動条件をすでに達成していて、無条件に発動しているのだろう。

と、まあ、これがいままでの出来事であり詳細は省くが、僕は理不尽極まりない旅を強いられていて、今はどこに向かっているのか分からない馬車の中というわけだ。

僕はようやく清々しいけれど、乾いた空気を存分に吸いながら、暑さに辟易していた。

確かに、麻袋の中よりはとてもいい。カラリとした空気に、岩だらけの大地に時折見える緑のコントラストは癒される。そして、目の前には猫耳フードを被った美少女シエラがいて、僕を始終監視いや、見つめてくるわけで、この光景を傍から見れば天国極まりないのだろうが・・・。

10分で十分である。はっきり言って、ここはクソ暑いし、女の子に見られているという緊張感でさっき取った水分も即効で蒸発していくレベルだ!

おまけに、僕の服装はいつものボロボロの長袖パーカーと長ズボン。しかも、真っ黒。

現実世界リアルは冬なのだったから仕方ないとはいえ、汗で張り付く服はお世辞にも気持ちいいとは言い難い。

どこかで、半袖で動きやすい服を手に入れたい。

ついでに、お風呂とかも入っておきたい。

このままだと、シエラにまで衝撃的な一言を言われそうだ。

例え、魔女だとしても、女の子の口からあの言葉を聞きたくはない。

そう・・・。

それは、カードプレイヤーはクサイ!!

確かに、今の僕は汗臭いだろうし、麻袋の中の変なにおいまで一緒で悪臭を放っているだろう。

だが、カードプレイヤーがクサイなど、異世界にでも一般常識として浸透してしまった場合、次回に同じ境遇になった同胞がどんな冷遇をうけるかと思うと、僕は心の底から恐怖でしかない・・・。


『異世界に来ちゃいました。てへぺろ』

『あなたは何者ですか?』←原住民(主にシエラのような凶暴な)

『TCGプレイヤーです』

『クサイ!!火炙りだ!!』←原住民(主にシエラみたいな酷い奴)


こうして、尊い命が火炙りにされる光景しか僕には想像できなかった。

恐怖だ。恐怖しかない。なんとか、この恐ろしい状況を回避しなければならない。

僕はおずおずと手を上げた。


「あの・・・、風呂に・・・」


アイスブルーの瞳を凍らせるように鋭くして、僕を見張っていたシエラは僕の言葉に繭一つ動かさずに言った。


「却下」


おいおい!!まだ言い終わってませんよ!?まだ言い終わってないよ!!

会話しろってさっきから言ってたじゃん!


「でも・・・におい・・・」

「私別に気にしないから」


何ということだ。異世界において、異世界人の人権はないのか!?

いや、逆に考えると・・・。

『私、別にあなたのにおいなんか気にしてない。っていうか好きだし』

とも取れるツンデレ属性なのかもしれない。

案外シエラはSっけが強いのに属性的に・・・。


「違うし!!」


シエラは顔を真っ赤にして怒っているようだ。

僕はなにか言ったのだろうか?

悪癖で独り言をつぶやいてしまうのだが・・・。


「お風呂!?入りたいなら、入ればいいじゃない!!今、ここで!!」


僕の思考がしばしば停止した。

馬車の中で!?いやいや相手は魔法使いだぞ。魔法で風呂くらい作りそうだ。

しかし、女の子のまでマッパになるなどできるか!!


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