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~喋る大災害コミュ障とシエラ1~


聖アルディラ王都。ここは南に位置する人間達の大国だ。年中、暖かい、否暑い気候で、時に干ばつにすら晒される人間にもエルフにも厳しい土地。けれど、私はこの王都が好きだ。


「やあ、シエラちゃん。今日の仕事はもう終わりかい?」


いつものシュークリーム屋台のおじさんが、私を呼び止める。


「うん、まあね。今日は簡単な雨呼びだったし♫」

「簡単ねぇ…。いやいや、流石は王室最高の魔術師様だねぇ」

「やだな〜、そんなに褒めても、シュークリーム10個くらいしか買わないんだから♫」

「まいどあり〜」


すぐさま、おじさんはシュークリームを10個箱に入れて、渡してくる。私は銅貨と金貨1枚を渡して、受け取る。


「おじさんも、シュークリーム売りガンバ♫」

「んじゃ、私、この後、騎士団のソラニンとご飯だから、食後に食べるね♫」

「騎士団のソラ様なら、広場のお気に入りのティーショップにいたよって、分かるかぁ」

「人探しも私の仕事だもん♫ソラニンの居場所なら、魔界に行っても分かるよん♫でも、ありがと、おじさん♫ティーショップにいるってことは、ソラニン、約束ブッチする気だなぁ。そんじゃ、ぶっ飛ばしていくよ!」


私は魔術式を組み上げて、展開。術式は風魔術と重力魔術を複合して、このローラーブレード用に調整した特別な魔術だ。空気抵抗を無くして、ローラーブレードを滑走させる。


「いっくよ!さあ、ローラーブレード!はっしれぇー!」


私の体だけ空気抵抗がなくなり、ローラーブレードが急発進する。熱風が屋台街を貫いていく。

やば…周りの事考えてなかったあああ。


「ごめんなさあああい!!」


私の周りの屋台が軒並み、熱風を受けて、巻き上げられていく。スカートをまくられたご婦人が悲鳴をあげる。


「きゃああ!」

「ごめぇぇん!!」


術式展開を早期にキャンセリング…。まあ、いっか。早く着かないとソラニン行っちゃうし。

そう考え直して、私は屋台街を抜けて、広場へのショートカットをかける。

アクセサリーショップのおじさんが、頭をいためる仕草をするのが見えた。あのパチモンショップ、いつか潰す。

お土産ショップのおじさんがいつもの事だ、と観光客に笑いながら話している。

なにそれ、いつも失敗してるみたいじゃない。

おっと、ここは右に曲がらないと!

私は焼き鳥屋台の横をローラーブレードで駆け抜ける。猫耳フードが外れそうになって、慌てて、猫耳フードをぐっと被りなおす。

横道に入ると、ほとんどの人がいない。よし、これなら、ソラニンに逃げられないかも♫

今日こそ、ソラニンにはガールズトークとか、服とか一緒に買いにいく約束を守らせ…。

と、思った瞬間、広場へ続く出口に馬鹿者が飛び出してきた。


「馬鹿馬鹿!どきなさーい!」


そんな一瞬じゃ、人間なんかが逃げられるはずなんかなくて、私は何者かによって、弾き飛ばされた。


「きゃ!エア!とにかくなんとかして!」


私は慌てて、術式を組み直して、飛躍。壁に激突して、乙女の身体に痣なんて作りたくないし。


「よっと」


無事に着地。

うん。いつもの猫耳半袖パーカーにも、猫尻尾付きのハーフパンツにも、どこにも傷なし。

私は一通り確認した後に、私の魔術を跳ね返した人物を睨めつけた。

まあ、確かに私が悪いんだけど、跳ね返すとか酷いんじゃない?並みの術者なら死んじゃったりするかもしれないわけで。


「ちょっと、あなた!」

「あの、僕ですか?」

「あんた以外だれが居るのよ!突然、カウンターかけてくるなんて良い度胸してるじゃない」

「カウンター?」

「あんた魔術でカウンターしてきたじゃない!なんなの?私くらいの魔術師が相手だったから良かったものの、もし、素人だったら危ないじゃない!」

「…?」


そいつはキョロキョロと周りを見て、所在なさげにブツブツと言い出した。


「そ、そりゃ、い、いるよな。夢だし。異世界とか美少女とか、夢見すぎ」

「はあ?あんた大丈夫?」

「美少女が僕みたいなクソニートに話しかけるとか。マジ自分乙」

「言ってる事、理解できてますかー?」

「美少女可愛い乙」

「あの、さっきから会話噛み合ってないんだけどー?」

「マジ可愛い。ヤバイ目合わせたら逃げられるかも。僕キモいし。マジ自分乙」

「あんた、何者なわけ?」

「美少女に話しかけられてる?ヤバイ」

「あーもーウザったいなー!あんたの名前!」

「ぼ、僕はハルト。えっと、ハンネとかでいいよね?」

「ハンネが良く分からないけど、ハルトさん?この国で勝手に魔術使えるのは私だけで、魔術学校の…生徒ではないみたいね」


彼の服装を見ながら、私は考えを変えた。彼は黒く長いパーカーを着ていた。このクソ暑い中、長袖長ズボン。しかも、ほとんど黒。


「ハルトさん?あなた、もしかして異世界人?」

「美少女から異世界人とか言われたワロス。夢乙」

「ちょ、ちゃんと答えて!」

「僕と美少女が会話するとかないワロス」

「確かに、私は自他共に認める美少女だけど、会話進行してないから!美少女とは会話したくないなら、別にゴツイおっさんと喋ってもらうけど?」

「美少女に罵しられた。ご褒美ブヒ」

「ちょっと、本当、なんなの!ちゃんと会話しなさいよ!からかってんの?」

「美少女オコ、ワロス。オコでもカワユス」

「ちょっと、いい加減にしなさいよ!」

「夢だし、多少のラッキースケベ期待」

「夢夢言い過ぎ。まあ、いいわ。あなた、異世界人ね。ようこそ、この世界へ」



この世界には唐突に何の前触れもなく、異世界人が来訪する事がある。ある者はローラーブレードを、ある者はシュークリームを…、多岐に渡り、色々な物をこの世界へもたらす。それは、世界からの贈り物と私達は思い、異世界人を歓迎する慣わしがある。

さて、ハルト、貴方は一体、この世界に何をもたらす為に現れたの?

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