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桜華帝国斎桜姫譚  作者: nan
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斎桜の桜

 明るい日差しに眩しさを感じ、目を覚ますと、外から鳥の囀りが聞こえた。昨日はぐっすり眠れたようで、頭もすごくすっきりしている。私はベットで伸びをすると、立ち上がる。


「麗癒さんが来るまでに準備しなくちゃ。」


 部屋に併設された洗面所で顔を洗い、髪をとかす。そういえば、寝間着はお風呂を借りた時に渡してもらったが、普段着は何に着替えればいいのか?と考えていると、ちょうど扉がノックされ、侍女が着替えを持ってきてくれた。


「ありがとうございます。」


私がお礼を言うと、侍女は微笑んだ。


「滅相もございません。着替えを何着かこちらの箪笥に用意しておきますので、こちらからお取りください。着られた服はそのまま置いてくだされば、洗濯をして、また箪笥にしまっておきますね。」


「助かります。ありがとうございます。」


私がまたお礼を言うと、侍女は扉の前で一礼すると、部屋を出て行った。全てのことを用意してくれるとは、まるでお金持ちのお嬢様にでもなった気分だ。私は早速、用意された服に着替えた。

ちょうど準備が調った頃に、扉のノックが聞こえ、外から麗癒の声が聞こえた。


「おはよう。愛優美ちゃん起きてる?もう準備できたかな?」


 私は扉を開き、挨拶をした。


「おはようごさいます。準備できてます。」


「よかった。じゃあ朝食の準備もできているようだし、まずは朝ご飯を食べに行こうか?もう無理していっぱい食べなくていいからね。」


「はい…」


 麗癒に釘をさされ、私は恥ずかしさのあまり俯き、小さな返事をした。


 朝食は昨日の夕食とまではいかずとも、やはり食べきれないほどの量がでた。私は頑張って沢山食べなければと使命感を感じ、腕捲りしたが、麗癒の視線を感じ、程々にしようと考えを改めた。

 

朝食を終えた私達は、昨日の約束どおり、麗癒に屋敷を案内してもらった。


「どこから案内しようか?この屋敷は客間も多いから、結構空き部屋で占めているんだよね。愛優美ちゃんの部屋もその一つだし。」


あの大きな部屋が他にも沢山あるのかと考えると、一般家庭に生まれた私とは住んでる世界が違うのだと改めて感じた。


「とりあえず、まずは愛優美ちゃんも使いそうなとこから案内しようか。」


そう言うと麗癒が歩きだしたので、私も遅れないよう後ろについて行った。

 それから近くにある部屋から、書庫や厨房、私が昨日使った一人用のお風呂とは別の大浴場や、困った時にはと常護の部屋などにも案内してもらった。麗癒はどうせ常護の部屋なんだからと不法侵入しようとしたが、しっかりと鍵が閉められ、とても悔しそうな顔をしていた。


「それじゃあ気をとりなおして、次は僕の仕事部屋兼私室に案内するね。」


麗癒は元気に宣言すると、歩きだした。しばらくすると部屋に着き、鍵を開ける。麗癒に続き中に入ると、私は目を奪われた。部屋の中には色とりどりの鉱石が置かれていた。


「綺麗。」


私が漏らした感想に、麗癒は自慢気に笑って答える。


「そうでしょ。今も綺麗だけど、日に透かしたり、夕陽に照らされたときも凄く綺麗なんだよ。」


「でも凄い数ですね。全部麗癒さんが集めたのですか?」


「さすがに一人でこの量は集められないよ。」


 麗癒はへにゃりと笑うと、一つを手にとる。


「僕はね鉱石の研究をしてるんだよ。鉱石にはそれぞれ不思議な力があるんだ。例えば、愛優美ちゃんの世界と繋いだのも鉱石って話したでしょ?他にも穢れを祓う力を増幅させたり、霊力を宿していたり、体を癒したりできる鉱石もあるんだ。僕はそれを見つけて皆のために役立てたいんだ。」


 そう語る麗癒の目はきらきらしていて、とても生き生きしている。


「それは素敵ですね。」


私が応えると、ありがとうと嬉しそうに微笑んだ。


「そうだ。これ愛優美ちゃんにあげるね。」


麗癒は部屋の奥に進と、ピンクがかった小さな鉱石を持って戻ってきた。


「この石はね守りの石って言われていて、身を守ってくれたり、斎桜姫の力を増幅させるとも言われているんだ。だからねプレゼント。」


「よろしいのですか?」


私がそう尋ねると、もちろんと微笑みながら、手渡された。


「ありがとうごさいます。大事にしますね。」


麗癒はにっこり笑い頷くと思い出したように奥の扉を指差した。


「僕に用事があれば、この部屋に来てもらえばいいんだけど、あの扉の向こうは私室だから開かないようにね。実は片付けができてなくて、散らかし放題なんだ。煌熙くん達にはナイショだよ。みんな片付けろって怒るんだ。」


彼は小さくウインクすると、いたずらっ子のように微笑んだ。


「わかりました。ナイショですね。」


私もつられて笑っていると、麗癒が何か気づいたように手を打った。


「もうこんな時間なんだね。昼食を食べに行こう。」


私達は麗癒の部屋を出て食事の間に向かう。


「昼食を食べたら次に案内するね。」


「はい。お願いします。」




「次は巫祝に案内するね。」


食事を終えた私は、麗癒の後を歩きつつ尋ねる。


「巫祝はどのようなところなんですか?」


「巫祝はこの国の霊力の強い術師であったり、巫女が集まるところなんだ。とりあえず、詳しい説明は後で、今は部屋に向かおうか。」


麗癒に案内され、私は屋敷の奥まった方の部屋へ向かった。

他の部屋と違い、重々しい扉を開けると、頭から布を被っていたり、口を布で覆った人など、怪しい格好の人や、私が知っているような巫女のようか格好の人もいる。様々な格好の人が、皆忙しそうに動き回っている。


「麗癒どうしたの?ここに来るなんて珍しい。」


鈴を転がすような声が聞こえ、そちらに目を向けると、プラチナブロンドの長い髪を一つにまとめ、澄んだ緑色の瞳、シンプルな和装に身を包んだ、絵に描いたような美人がこちらを見つめていた。


(すごく綺麗な人。でもどこかで見たような親近感がある。)


そう思い、ふと横にいる麗癒が目に入る。


「そうだ!麗癒さんにそっくりなんだ。」


つい大きな声をあげてしまい、麗癒と女性は驚いたようにこちらを見た。


「よくわかったね。僕の母なんだ。そんなに似ているかな?」


麗癒が少し照れたように尋ねる。とても母親とは思えないほど、若々しく美しい。


「とても美しいところとか、雰囲気がそっくりです。」


「う~ん僕も含めて美しいと言われるのは複雑だな…」


麗癒が苦笑し返すと、女性は嬉しそうに微笑んだ。


「あら、ありがとう。いくつになっても誉めてもらえると嬉しいわね。私は巫祝に籍をおいている麗華と申します。この可愛らしいお嬢さんは例の斎桜姫様よね?」


麗華が麗癒に尋ねるように視線を向けると、麗癒は微笑み頷いた。


「か、可愛いだなんて。そんな…」


こんなに美しい人に誉められると逆に申し訳なってしまう。


「謙遜しなくていいのに。愛優美ちゃん可愛いじゃない。煌熙くん達もきっとそう思っているよ。」


ニコニコしてそんなことを言われると、顔が赤くなる。


「麗癒さんまでからかわないでください。」


「からかってないんだけどなぁ。」


そんなやり取りをしていると、麗華が笑いだした。


「ほんとに可愛い人ね。こんなところではなんだから、あちらで少しお話ししましょう。」


そう言うと、椅子まで案内された。


「お仕事中なんですよね。お邪魔じゃありませんか?」


皆忙しく働いているところに来て、邪魔にならないのだろうか?と不安に思い尋ねると、大丈夫と微笑まれ、お茶まで出してもらった。しかし、先ほどからチラチラとこちらを見る視線とぶつかり、早く出てもらいたいと言われているようで、どうにも居心地が悪い。


「ここはね、呪術の研究であったり、穢れを広めないための結界であったり、穢れを祓ったり、そういうことをするため、霊力が高い人が勤めているとこなの。だから、私達からしたら、斎桜姫様の力は興味津々なの。だから皆、さっきからチラチラ見てるでしょ?」


それで先ほどから見られていたのかと思うと、心が軽くなった。確かに注意して見ていると、睨みつけるような視線ではないことに気づく。


「実はね、斎桜姫様に会うのは皆初めてなの。昔は絶えず斎桜姫様が生まれていたみたいなんだけど、ここ2、300年はずっと現れなかったの。その間、なんとか巫祝で繋いできたんだけど、どんどん斎桜の桜の力も弱まってくるし、待望の斎桜姫様だったのよ。」


「でも巫祝で繋げられたなら、斎桜姫の代わりとさて問題ないんじゃ?」


麗華は静かに頭を振る。


「いいえ。私達はギリギリで繋いできたの。私達は斎桜の桜に力を少し与えられたとしても、その力は少な過ぎて、ずっと元の元気な状態を保つことはできないし、穢れを祓えても完全に祓えるわけではないわ。少しでも穢れが残っていれば、そこからまた広がるし、ただの時間稼ぎにしかならないの。斎桜の桜を元気な状態に戻せるのも、穢れを完全に祓えるのも斎桜姫様だけなの。」


 私は彼女の目を真っ直ぐに見返すことができなかった。そんなに待ち望んだ斎桜姫が私じゃなかったら、もし私が斎桜姫だったとしても、力が使いこなせなかったらと思うと顔を上げられなかった。


「ごめんなさいね。プレッシャーをかけるようなことを言ってしまったわ。」


 彼女は私の様子に気づき、申し訳なさそうに頭を下げた。彼女が謝ることではないのだ、煌熙もずっと探していたと言ったくらいだ。皆の期待は相当なものだろう。私は頭を振る。


「すみません。私は自信が無いんです。」


「自信?力を使いこなせるかということ?」


彼女は不思議そうに頭を傾げる。


「それ以前に私が斎桜姫であるのかどうかにです…」


私が答えると、彼女はにっこり笑った。


「なんだ。それなら大丈夫よ。あなたを見つけたの私だもの。」


私は訳がわからず、怪訝な顔をしていると、彼女が胸を張って話しだした。


「私の夢見は外れたことないの。なぜあなたの世界に斎桜姫様がいるってわかったと思う?それはね、夢であなたを見つけたの。この子が斎桜姫様だって。」


「母さんは夢見なんだ。夢で未来の事や、知りたい事のお告げを見れる。この国の夢見のなかでも、母さんの夢見は外れないって定評があるんだ。」


麗癒も誇らしげに言うと、私の目をみて微笑んだ。


「だからね、心配しなくて大丈夫。君は間違いなく斎桜姫様だし、力を使いこなせるよ。」


私は二人に励まされ、今までずっと不安に思っていたことが、押し流され、心がふっと軽くなる。


「ありがとうごさいます。二人にそう言ってもらえると心強いです。」


 私が笑顔で返事をすると、二人は目を合わせて微笑み合った。


「そう言えば、麗癒さんのお父様もこの屋敷のどこかで、お勤めなんですか?」


私が気になったことを尋ねてみた。


「僕の父は僕が幼い頃に亡くなってしまってね。ほとんど覚えてないんだ。」


「すみません。私…」


麗癒は何でもないことのように答えたが、麗華の顔は寂しげな表情をしていた。


「体が弱い人でね。でも、とても優しくて誠実な人だったのよ。」


麗華は優しげな目で語る。その目を見だけで、言葉どおりの素敵な人で、麗華はとても愛していたんだと伝わる。


「でもね、父さんには会いたかったけど、寂しいとは思わなかったんだ。その分煌熙くんのお父さんが可愛がってくれてね。」


麗癒は昔を思い出すように言う。


「そうね。前皇帝にはとてもお世話になったわ。やっぱり兄弟なのね。とてもお優しい方で、麗癒の父親代わりにもなってくださったわ。」


煌熙がよく遊び相手になったと言っていたのはそういうことかと思い出す。


「でも前皇帝も10年ほど前に亡くなってしまって、奥様もその1年後くらいに亡くなってしまったの。前皇帝が亡くなってすぐ、皇帝に即位して、また母親まですぐ亡くなるなんて…今の皇帝はとても辛くて、寂しい思いをしたと思うわ。」


麗華の表情が暗くなる。煌熙の名前を呼んだときに女性から呼ばれないと聞いたのを思い出す。あの表情の理由がわかった。


「そうなんですね…」


そんな幼くして皇帝になり、教えを請える者も居らず、支えである母も亡くしたとなれば、幼心にかかる重圧は相当なものだっただろう。


「それでも彼はね、弱みを見せないのよ。とても強い子よ。私も少しでも母親代わりともいかずとも、支えになればと思ったのだけど、周囲は皆王と呼び、彼は王の表情を崩さなかった。だから私も王に対する対応をしなければいけないと思ったの。」


「でも…煌熙さんは名前で呼ばれたとき嬉しそうでした。やっぱり支えてくれる人が必要だったのではないでしょうか。優しい声で名前を呼んでくれる家族のような人が。」


私はポロリとそんなことを漏らしてしまった。私ははっとして、頭をさげた。


「す、すみません。何も知らない私が生意気なことを言って。」


私が焦って謝罪をしていると、二人は顔を見合せ、苦笑した。


「謝らないで。君は正しいよ。」


「そうよ。彼にはあなたが必要みたいね。もちろんこの国にもだけど。きっとあなたは彼の支えになるわ。私達の分まで彼を支えてくれるかしら?」


彼女は両手で私の手を包み込み、真剣な目で私を見つめる。私はしっかり、その目を見つめ返す。


「私にできるかわかりませんが、頑張ります。」


「もちろん僕達も煌熙くんのことも君のことも、できる限り支えるつもりだから、安心してね。」


そう言うと、麗癒も手を重ねてきた。私は力強く返事をする。


「よろしくお願いします!」


私達は手を取り合って笑った。少し前に出会った彼のことがどうしてこんなに気になるのかはわからない。でも私は心から彼の支えになれればと思った。


「さて、私はそろそろ仕事に戻らなくちゃ。長い間引き止めてごめんなさいね。」


「こちらこそお邪魔してしまってすみません。」


 私が頭を下げると、麗華はいえいえと頭を振る。


「あなたとお話しできてよかったわ。また来てちょうだいね、愛優美ちゃん。」


「はい!是非また!」


 私が元気よく返すと、麗華はにっこり笑って、扉まで見送ってくれた。



「だいたいこれで案内できたかな?あとは中庭と煌熙くんの執務室兼私室ぐらいだね。さぁ今から煌熙くんの部屋に行こうか。」


巫祝の部屋を出て、のんびり歩いていると、麗癒が提案してきた。


「でも煌熙さんは仕事中なんじゃ…」


私が止めようとすると、麗癒はいたずらっぽく微笑む。

「仕事ばかりはよくないから、リラックスさせてあげるんだよ。」


そう言うと、私の手を掴むとずんずん進んでいく。一つの部屋の前まで来ると、麗癒はどんどんと扉を叩き、扉を開く。


「煌熙くんお疲れ様。遊びに来たよ。」


麗癒が部屋に入ると、煌熙は机から顔を上げず、低い声で間髪いれずに返す。


「来るな。見てわからないのか?仕事中だ。」


「え〜せっかく仕事の息抜きになればと、遊びに来てあげたのに。ねぇ愛優美ちゃん。」


「でもお仕事中ならやっぱりお邪魔になるんじゃ。」


私の名前を聞くと、煌熙は顔を上げ、こちらを向くとため息をついた。


「大丈夫だ。そろそろ休憩にしようとは思っていた。お前も愛優美を巻き込むな。」


「違うよ。今日は愛優美ちゃんに屋敷を案内してたんだよ。誰かさんがほったらかしにしてるから。」


「お、お前な。」


「おや、煌熙様仲間外れにされて寂しかったのですか?」


隣に控えていた常護がさらに煌熙を煽ることを言う。煌熙が常護を睨みつけ、口を開こうとすると、麗癒が先に口を開いた。


「どうせ休憩にはいるなら、休憩がてら愛優美ちゃんに中庭を案内してあげてよ。後は中庭だけなんだ。」


「煌熙さん忙しいのにお邪魔になりますよ。」


 私が流石に悪いと口を挟むと、煌熙が手をあげて制した。


「それくらいなら大丈夫だ。」


そう言うとさっと立ち上がり、こちらまで歩いてくる。早速案内してくれるつもりらしい。私は煌熙のあとに続き部屋を出た。


煌熙は私達が何度か行き来した大きな扉の前に立ち止まると、鍵を取りだし、扉を開く。扉が開くと同時に風が吹き、咄嗟に目を閉じる。ゆっくりと目を開けると、目の前を桜の花弁が横切る。

私は顔をあげると、息をのんだ。そこには圧巻の桜が咲いていた。満開に咲ききった桜は生気に溢れ、きらきら輝いて見える。麗華から元気がなくなってきているとは聞いていたが、決してそんなふうには見えない。視界一面が薄紅色にそまり、私は美しさのあまり、何も言えず、ただ桜を見つめ続けた。


「愛優美、こちらに来い。」


声をかけられ、皆が中庭に出ていることに気づいた。


「ごめんなさい。あまりに美しすぎて。ぼっとしてしまって。」


「仕方がないな。俺も最初に見たときはそうだった。」


 煌熙が差し出した手を握ると、桜の根本まで案内された。


「この木が斎桜の桜だ。この国を守ってくれる不思議な力を宿している。その花弁ですら力を持っているとされているから、悪用されぬように鍵を掛けているんだ。」


「そうなんですね。」


 私はまだ呆然としながら桜を見上げ続けた。


「元々この辺りは穢れが蔓延していたそうだ。しかし、この桜の付近だけは清廉な空気で満たされていた。だからこの桜を中心に俺の祖先がこの国を作ったそうだ。」


私は引き寄せられるようにそっと桜の幹に手を置いた。


「不思議ですね。ずっと見ていたくなります。」


「ああ。不思議な木だ。」


私達はしばらく中庭に腰おろし、穏やかな時間を過ごした。


「愛優美、そろそろ行こうか?」


私は頷き、立ち上がると扉に向かって歩きだす。


「なんだか離れがたくなってしまいますね。ほんとに不思議です。」


私が呟くと、煌熙が少し考え話しだした。


「斎桜姫と斎桜の桜は繋がっていると言われているからかもしれないな。また、いつでも連れてきてやる。」


そう言うと、煌熙は優しく私の頭を撫でてくれた。私が赤くなり、俯くと、横の麗癒と常護から、からかいの声がかかり、煌熙が慌てて手を引っ込めた。


部屋に戻りみんなでお茶を飲んでいると煌熙がこちらを見て声をかけた。


「今からどうするんだ?」


「もう全部案内していただいたので、部屋に戻ろうと思います。」


「そうか。じゃあ夕食のときにな。」


麗癒がふと思い出したように、煌熙のほうを向く。


「煌熙くん、今日の夕食くらいは顔を出してよね。お客さまを招待しておいて顔を出さないなんて失礼だよ。」


麗癒はお茶を飲みほすと私に「それじゃあ夕食で」と言って立ち上がると部屋を出て行った。どうやらずっと気にしてくれていたようだ。


「わかってるよ。今日の夕食は俺も共に食べる。すまなかったな。」


 私はとんでもないと頭を振り、煌熙と常護に別れを告げると部屋に向かった。


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