キュートな獣
今、全く見覚えのない場所に居る。
右側を見る。視界の果てまで輝く樹海。
左側を見る。右に同じ。前後も変わらず。
上には夜空。下はもふもふに包まれた…
「………ふぁ?!」
先ず、落ち着こう。落ち着いて、ツッコミ入れよう。
何で、樹が光ってんの?
いや、柔らかな白い光が、淡いパステルカラーの虹色に揺らめく幻想的な光景は、凄く神秘的で綺麗なので、しばらく見惚れていたいのも吝かではないのだが、現実に今、種も仕掛けもない樹そのものが光ってるなんて現状で、暢気に観賞するのは無いだろ?無いよね?
じゃなくて!混乱して、どうでも良い方から、ツッコミ入れてしまった。いや、森も気になるけどさ!
そんな事は最早どうでもよくなるくらい、更なる現実に遭遇しているだろう、俺!!
純白のふわっふわの毛!ウサギのような垂れ耳!
ハムスターサイズの体躯!額には燃えるような紅い石!
女子が見たら、『可愛い』を連呼しそうなキュートな小動物だ。俺も可愛いと思うよ?思わず、もふりたくなる魅惑の生き物だろうよ。
それが、俺の姿でさえなければな!
何なんだ、これは?
何で俺がこんなファンシーな姿で、こんなファンタスティックな森の中に居るの?ファンタジーなの?
…ファンファン言ってる場合じゃねぇな。
現象分析しましょうかね。うん、日本では無いね。それどころか、多分地球ですらないね。うん。
これは所謂、異世界に来ちゃった的なアレか。小説で色々読んだ事あるわー。現実に起こるなんて、微塵も考えてなかったがな!
召喚…では無いかな。勇者じゃないしな?どう見ても。
転生や憑依にしては、死んだ記憶無いんだけど。あと、神様から説明も無いんだけど。
覚えてる最新の記憶は、ふらっと出掛けようとして、バスに乗った時のもの。目的地までそう遠くなかった為、眠いのを必死に堪えてた覚えがある。
可能性としては、そのまま眠気に負けて転た寝してた時に、何らかなの形で気付かない内に死亡しちゃったって感じか…。泣けてくるわ!
兎に角、今の俺は、ウサギとハムスターのハイブリッドなキュートアニマルだって事だ。種族不明、性別不明、ついでに年齢も不明。
…誰か、説明書プリーズ!異世界の攻略本を寄越せぇ!
せめて、己の情報が欲しいよ!ステータスとか無いのかよ!
!?……………!!
ステータスあった。ありましたよー!あははははっ!
突然、ゲームのメニュー画面を開いたようなものが、目の前に展開されたました。突然過ぎて絶句したわ!ビビらせんな!
兎に角、ステータスを確認しようかね?えーと…
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【名前】なし
【性別】なし
【年齢】0歳
【種族】カーバンクル
【スキル】ブレス(炎)
【ユニークスキル】祝福
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名前無い。性別無い!年齢も0歳!!
ナイナイ尽くしか!!ちくしょう!しかも、カーバンクルって何??あれって、どっかの探検家が目撃したっていうUMAだろ?海外版ツチノコだろ!?