仲間、ナカマ
「やっぱ、外の空気はいいなー」
何度も外に出てはいるが、そういうことではない。閉塞感からの解放感がたまらなくいいのだ。
「しかし、まあ何をするかな?」
仲間はいない。
辛い時も、楽しい時も一緒にいたのに。
ゼロからの再スタート。気が滅入る、その言葉が当てはまるが、それだけでは済まない。
救いと言えば、神剣と宝珠がこの手にあることだろうか。
ロストの表示は確かに出た。しかし、その物は残ったのだ。
もちろん、かつての様に大地を切り裂き、万の敵を斬り伏せるような力は宿っておらず、あらゆる災厄から、攻撃から身を守ることも出来ない。
ここに在るのは輝かしい過去の遺物だった。
その亡骸だけが、残された。
とはいえ、あの攻撃に巻き込まれて傷一つ付いてないのは流石というべきか。
着ていた勇者専用の鎧は跡形もなくなったというのに。
「誰に気を使うってわけでもねえし、気ままにぶらぶらするか。とりあえずは、そうだな。うまいもんでも探してみっかな」
俺は一人だ。その寂しさと悲しさを深く考えずに前を見た。まあ、ただの現実逃避だがな。
思い付きで言葉にしてみたが、勇者としての義務もなく、誰かに左右されることもなく、自由にファンタジーな世界を楽しむってのもいいな。
「よし、行くか!」
「おう、やっとかい? 行こうか、婿候補!」
そういってやけに太い腕が俺の右腕を絡め取った。
「え!? お前誰だよ」