4
親父の単身赴任にお袋がついていって、今は兄貴と二人暮らしの家に、その。
「ど、どうぞ」
初めて女性を連れ込んだ。いや連れ込んだという言い方は変だろうが。
「お邪魔しま~す」
「お邪魔します」
俺をソファにおろして、お茶の用意をする兄貴。
「勇希、今日の夕飯は何だ?」
「冷蔵庫に仕込み終わったビーフシチューとポテトサラダが」
「でかした♪」
四人分のお茶と正直渋すぎる和菓子。
兄貴の好みだけどどら焼きはやめときゃよかったかな、なんて思う。今日客がくるなんて知らなかったし思いもしなかったからしょうがないけど。
「うわぁ、おいしそ~などら焼き~♪」
「口に合うといいんだけど」
「お前の手作りを不味いと言う奴は殲滅してくれる」
「ちょ、待って、これ、まさか弟君の手作り?」
「はい」
女性陣が絶句している。どら焼き位簡単だろうに。
「うちの勇希は、いつ何処に嫁に出しても恥ずかしくないぞ」
「兄貴俺嫁になんて行かないから」
「そうだな、お前はずーっとにいちゃんの傍にいてくれるんだもんな♪」
「ブラコン」
「お前に言われたくないシスコン」
「兄貴」
「お姉ちゃん」
俺達に窘められて同時にぷいっと顔をそむける二人。
意外と仲がいいんじゃないだろうか、ほら、喧嘩するほどなんとやらと言うし。
そのまましばらく喋って、互いを名前で呼びあう程に打ち解けた(はむのお姉さんは瑠亜さんという名前らしい。ちなみにうちの兄貴は洸希だ。あと俺のはむへの呼び名は変わらない)いたが。
客がいると言うのに、いつの間にか、俺はソファで寝落ちてしまっていた。やっぱり疲れていたらしい。
明日学校ではむに会ったら、謝っておかないとな。