3
「相川、弟が世話になった。相川の妹も、ありがとう」
「お礼言った……あの月村がお礼……」
はむの姉さん固まってるぞ。
いったい普段の兄貴はどんな感じなんだ。
「いぇっ、私、月村君が苦しそうなのに、何も、何もっ」
「そんなことない」
兄貴にだきしめられたまま、はむに手を伸ばし撫でる。
「心配してくれて、ありがとな、はむ。お姉さんも、ありがとう」
「うにゅ~」
「いいのよ、気にしないで」
撫でられまた涙ぐむはむと、優しく微笑んでくれるお姉さん。
「はむが名前か」
「そんな訳ないでしょ!あだ名よあだ名」
「お前にはとうていつかない可愛らしいあだ名だな」
「喧嘩売ってるの?良いわよ言い値で買ってあげるわ」
兄貴とお姉さんのかけあいを聞きつつ、兄貴の腕の中で目を閉じる。
「勇希、疲れたか?」
「……ちょっと」
いつものように俺を背負う兄貴。
口にするのは恥ずかしいので言わないが、世界で一番安心出来る背中を感じ安堵の吐息が漏れる。
来てくれてありがとう。
兄貴にだけ聞こえるように、小さく呟くと。いつものように大きな手が俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「相川、それと……」
「あ、えっと、梨亜、です」
「梨亜ちゃん。礼がしたい、用がなければうちまで来てくれないか」
「天変地異が」
「お前の分の礼は無しでいいな」
「ちょっと!なんでそんなに梨亜とあたしで態度が違うのよ!!」
「残念女と弟の友人じゃ態度が違って当然だろう」
「お姉ちゃん、ちょっとさっきから失礼だよ。
月村君のお兄さん、ここまで一生懸命走ってきたんだよ。それなのに、お礼言ったとか天変地異とか」
「兄貴もはむの姉さんに失礼だぞ。
俺の事をはむと一緒に心配してくれて、付き添ってくれたんだから。もうちょっとちゃんと対応してくれ頼むから」
俺達の言葉に、二人は渋々従ってくれた。
本当、普段はどんななんだ、兄貴。