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救急車が来る頃にはもう発作は落ち着いていたので、だるい体をおこし、過換気症候群であり、発作をおこしている時に急病で倒れていると思われ、友人が救急車を呼んでしまったことを説明しお詫びする。
「申し訳ありませんでした」
一緒に謝ろうとした二人を手で制し、俺一人で頭をさげる。二人は善意でやってくれたことであり、謝る必要はない。どう考えても発作を起こす要因を自分で引き起こした俺が悪い。
仕方ない、今度から映画はDVDになってから見よう。
「いえ、何事もなくなによりでした。では」
頭をさげ、救急車が帰っていくのを見送るのとちょうど同じタイミングで。
「勇希!!!」
部の遠征で都内にいた筈の過保護兄貴が、汗を拭きもせず俺の元へ全力疾走してきた。
「あに」
「あああやっぱり発作起こしてた救急車呼ばれるって事はほんっと酷かったんだろうごめんなにぃちゃんそんな時に側にいられなくてこんな事なら遠征なんて断っておくんだったよし明日にでも退部届けを」
「とりあえず落ち着け過保護兄貴」
ただでさえ部員ぎりぎりなのに、これで兄貴がやめたらそれこそ部が潰れる。
「お前が一人で苦しんでたってのに落ち着けるか俺はそこまで薄情な兄貴じゃ」
「まわり見ろ。一人じゃなかった」
「え」
周囲をみた兄貴は、はむ達を見て固まった。
「あの、別人じゃない……わよね?」
「……あぁ」
恐る恐る聞いてくるはむの姉さんに、俺をぎゅっと抱きしめて背中をさすりながら、ぶっきらぼうに兄貴が返事をする。聞いたところによると、はむの姉さんは兄貴のクラスメイトらしい。
ほんと、家族以外にはとことん愛想ないな、兄貴。