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俺は、過換気症候群、俗に言う過呼吸発作持ちだ。
ある程度の年齢になってからは自分で対応出来るようになったし、変に同情されるのも嫌なので、友人にすら話した事はない。
俺が発作持ちなのを知っているのは、家族とかかりつけの先生位だった。
「月村君っ、すぐ救急車来るから、すぐだから、っ、しっかりしてぇ」
発作をおこし公園のベンチでうずくまり身動きがとれなくなっている所を、はむに目撃されるまでは。
「……は、む?」
「喋っちゃだめぇぇぇ」
そこまで苦しそうに見えるのだろうか。
兄貴も最初は驚いてたし、やっぱり見えるんだろうな。
だけどこれだけは聞いておかないと。
「きゅう、きゅう、しゃ、……よん、だ、のか?」
「今こっちに向かっているわ、だからもう大丈夫よ」
えぐえぐ泣きつつ、発作の所為で息絶え絶えな俺の背中をさすっているはむの傍に、十人中十人が綺麗だと言うだろう美少女がいた。
よく見るとはむもそれなりにかわいいんだよな、よく見れば。
発作中なのに、傍に誰かいるだけで随分と余裕がある自分が笑える。身体は正直つらいの一言だが。
「おねーちゃああ」
「しっかりしなさい、友達が苦しんでるのにあんたがそこまで取り乱してどうするの!」
「でもおおおおお」
「は、む」
吸って、吐いて、吐いて、
吸って、吐いて、吐いて。
呼吸法を行いつつ、小刻みに震える手ではむの頭を撫でる。
「月村君、動いちゃ駄目だよっ」
「だいじょう、ぶだ。なれてる」
「ふぇ?」
「いつもの、ほっさ、だから。
しんぱい、かけて、ごめんな?」
「ふえええええええええ」
どうにか笑ってみせたのに余計泣いた。何故だ。