おじいさんと男の子
小さな惑星の小さな飴屋さん。
今日もたくさんの飴を売っています。
ある日、おじいさんがいつものようにキラキラとした欠片をとっていると、男の子が話しかけてきました。
「おじいさん、何をしているの?」
おじいさんは笑いながら答えました。
「みんなが食べている飴の素をとっているのさ。この小さな欠片があの飴になるんだよ。」
「すごい!どうやったら、あんな甘くておいしくなるの?」
「着いてきてごらん。君には最初から教えてあげよう。」
おじいさんは男の子と一緒にお店に戻ります。
「君は飴の材料を知っているかい?」
「うん、女の子に教えてもらったよ!優しい気持ちだよね!」
「そうだよ。覚えていてくれて嬉しいなぁ。」
そういうとおじいさんは男の子の頭を撫でました。
男の子は嬉しそうに笑顔を見せたあと、こう尋ねました。
「それで、飴はどうやって作るの?」
「そうだったね。まずは、“ありがとう”の飴を作ろうか。」
「ありがとうの飴?どの飴のこと?」
「まんまるでいろんな色の飴があるだろう?それのことさ。…さて、ありがとうの飴は、ミルクとこの欠片を一緒にコトコト煮込むんだ。」
「何か気をつけなくちゃいけないことはある?」
「そうだなぁ…。焦がしてしまわないようにかき混ぜつづけること、あとは呪文を唱えるのさ。おいしくできるようにする、呪文。」
「それってどんな呪文?」
男の子は目を輝かせて聞きました。
おじいさんは、また男の子の頭を撫でて言いました。
「決まった言葉は無いんだよ。でも、何味の飴を作りたいか、ちゃんと言いながら混ぜるんだ。こんな風に。」
そう言うと、おじいさんはミルクと欠片を鍋に入れて、歌い始めました。
「ありがとう、ありがとう。おいしくなぁれ、あまーくなぁれ。」
「…おいしくなぁれ、あまーくなぁれ。」
男の子も一緒に歌い始めました。
おじいさんは少し笑って、歌い続けました。
「「ありがとう、ありがとう。おいしくなぁれ、あまーくなぁれ。」」
しばらくすると、鍋の底にまんまるでいろんな色をした、いつも並んでいる飴が出来上がっていました。
「おじいさん、出来たよ!」
「うん、上手に出来たね。さぁ、ひとつ食べてみるかい?」
「うん!食べる!」
男の子が嬉しそうに飴を食べているのを見て、おじいさんはとてもよろこんでいました。
「他の飴の作り方も教えてあげよう。」
「うん、たくさん教えて!」
男の子とおじいさんは、夜になるまでたくさんの飴を作っていました。
おじいさんが男の子に飴の作り方を教えてからしばらくした朝、おじいさんはお店を畳んでいました。
惑星に住んでいる子供達はみんなさみしがって、「行かないで」と言いました。
おじいさんは、
「いつかまた来るから、それまで待っていておくれ。飴の作り方を知っている子に教えてもらいなさい。みんなの作った飴を楽しみにしているよ。」
そう言って、おじいさんはお店と一緒に次の小さな惑星に行ってしまいました。
おじいさんが行ってしまった後、男の子が言いました。
「みんなでおじいさんの飴を作ろう。僕、作り方を知っているから。おいしい飴を作ろう。」
小さな惑星の小さな飴屋さん。
おじいさんがいなくなった後も、お店には楽しそうな歌声が響いています。
「「「おいしくなぁれ、あまーくなぁれ!」」」