こうして始まる学園生活 2
‥
‥‥‥
ふられたか
まぁ、そりゃそうだわな。会っていきなり告白って、そりゃふられるわな。
俺は後悔していた。何でいきなりあんなこと言ったんだろう‥いや、ほんと考えられんわ自分のことながら。
「それじゃ」
「あっ‥ちょっ」
止める間もなく彼女は行ってしまった。
シーーーン‥‥‥
後に残ったのは静寂だった‥‥
「うわぁぁぁ!!なにしてんの俺カッコ悪ぅぅーー!!てかちょーハズい!!いやーーー」
バン! ドアが開く音がした
「お前教室戻れって言っただろうがこの野郎!!!もう入学式終わっちまったぞ!!!」
やってきたのは怒りに満ちた木村先生だった。
「す、すいませんです‥‥‥」
俺はもう怖いやら情けないやら色々な感情がせめぎ合っていてそれしか言えず、教室へと連行されたのだった。
「えー、このC組の担任を勤めることになった木村瞳だ。これから1年間は嫌でもこのクラスの担任だからな、全員覚悟しとけよ!!」
新しいクラスのHRが始まった。担任はもう玄関の貼り紙でわかっていたが、木村先生だ。そして、今日もあの人は絶好調だった。と、その時
トントン
肩をつつかれた。誰だろうと思って後ろを振り返ると
「おいてめこらぁぁ!お前のメールのせいで恥かいたじゃねぇかどうしてくれんだおらぁ!?」
この小声で啖呵を切ってきた男は高村という。去年からの付き合いで一番仲の良い親友だったりする。こいつも同じクラスだったのか‥しかも後ろってすげぇ偶然だな。
てか、こいつこの様子だと、マナーモード忘れてたんだな。
「おい、よく聞け。確かにメールした俺は悪い。だが、そもそもマナーモードに設定するのを忘れてさえいなければ恥なんかかかなかった、違うか高村?」
俺は説得しようと試みた。
「いや、確かにそうだけど‥ってかあんたがメールさえしなければそもそも恥かかずにすんだんだよ!」
「いや、悪かったってば。だからここは‥な?3:7でお前が悪いことで手打ちにしてくれ!」
「なんで僕の方が多いんだよ!百歩譲って2:8でお前が悪いわ!」
なんてやり取りをしてるもんだから、すぐ前に先生が接近していることなんて気づかなかったのだ。
「今はHR中だバカども!!」
俺と高村は同時に殴られて言い争いは終了したのだった。
そしてHRも終わり、下校時刻となった。明日から授業があると思うと、やるせない気持ちで一杯になった。
「高村は‥あれ、もういない?」
あ、そうか。あいつ部活入ってたっけ。バドミントンだったよな確か。今日は練習があるからさっさと行っちまったんだな。
「しょーがない、さっさと帰るかな」
考えなきゃいけないこともあるしな‥
帰宅して俺は今日の屋上のことを思い出していた。
「ふられたんだよなぁ俺」
言葉にしてみるとなお切なくなってくる。俺はベッドに横たわって枕に顔をうずめた。
「それにしても、すっげー美人だったよな、あの女の子」
鼻筋はスゥッと通っていて、左目には泣きボクロ。目はパッチリと大きく開いていてすごく顔が小さかった。
「可愛かったなぁ、付き合いたいなぁ」
ふられたのにも関わらず、俺はまだ付き合いたいとか思っていた。
「まだ諦めんのは早いよな?一回ダメだっただけだもんな?」
女々しい男だと馬鹿にされても構わない。俺は明日、もう一度彼女に告白しようと決心した。
俺は布団から起き上がって
「‥よし、やるぞ!俺は諦めないぞ!!絶対お前を落としてみせるーーー!!!」
ガチャ!
「さっきからご飯だって何回も言ってるでしょ!!早く下に降りてきなさい!!」
バタン!
‥‥‥
その後の夕食では俺の好きな料理の炒飯がでてきた。
「わぁー、うまそう。いっただっきまぁーす」
その後家族から冷ややかな視線を浴びながら夕飯を食べた。さっきの大声はどうやら一階にも響いてたらしい。
「全く、17にもなって何を恥ずかしいことを言ってるんだお前は」と、親父
「そんなんじゃこれからも彼女なんてできないよ」と、妹
俺は炒飯を一気に平らげると早々に部屋に戻った。恥ずかしかったのであの場にはいられなかった。
「どうやって明日告白するかなぁー」
考えようとしたのに
ガチャ! 「で、お兄ちゃん!どしたのさっきは??落としてやるぅーとか言ってたのはなんなのぉ??」
妹がニヤニヤしながら部屋に勝手に入ってきた。
「あーもうめんどくせー‥」
俺は、どうしても欲しいフィギュアがあってそれを明日、俺の手持ち300円を使ってガチャポンで落としてやるってことだ!と言ってしらを切った。
妹は白い目で俺を見ていた。どうやら嘘は通じないらしい。
その後も執拗な質問責めを受け、ようやく解放された俺はもう疲れ切って眠るしかなかったのであった。
翌日、学校にて
「いやー、どうしようかな」
とりあえず彼女に会わないことには始まらない。だが、何組なのかも知らない。同級生なのか先輩なのかも分からない。この学校の学年はAからHまでクラスがあるので、一人一人の顔や名前はとてもじゃないが覚えきれないのだ。
何の手がかりも掴めないまま昼休みになってしまった。
「うーん‥」
俺はとりあえず屋上に来ていた。ここにいればまた会えるかも。そんなことを思いながら彼女と会うにはどうしたらいいか考えていた。
「とりあえず廊下歩き回ってみようかな」
そう言ってドアの方へと足を向けた、その時
ガチャ
と、一人の女子生徒が入ってきた。顔をよく見ると、昨日の女の子と同じだった。
「好きだぁぁぁーー!!」
またしても俺は出会った瞬間に告白していた!
俺は学習しない男だった。
「あっ!、えっとすみません!昨日と言い今日と言い変なことばっか言って‥」
「‥‥‥」
女子生徒は答えない。何か話さなければ
「えっと、あの‥ですね?昨日あなたと初めて会ったときにですね?えっと‥一目惚れをしてしまったんです。だから」
ここで間を少し空けてから
「俺と付き合って下さい!!」
3回目の告白をしていた!
なんだこれ、何回告白すれば気が済むんだ俺カッコ悪っ!
とか思っている時に女子生徒が口を開いた。
「いや、昨日も言ったけど、私無理って言ったよね?何回も言われないと分からないのかな?ならもっと言ってあげるわよ。あなたのようなデリカシーの欠片もない品の無さそうな無礼男なんて付き合いたくないって言ってんのよはいこれで理解できたかしらこのドブ男!?」
この女子生徒はドSだった!
予想外の反撃に俺はしばし呆然としていた。やっぱ美人って性格悪いんだなぁ‥なんて思ってしまったが、これだけこっぴどくけなされても俺は彼女と付き合いたいという気持ちが消えていなかった。
俺ってもしかしてMなのかなぁ?そんなことはどうでもいいが、俺はもう一度彼女に食い下がった。
「お願いです!あなたのことが好きになってしまったんです!」
「だから嫌だっていってるでしょ!あなた馬鹿なの!?」
そんなやり取りを5分くらい続けたが、決して彼女は首を縦に振らなかった。
「お願いです!何でもやりますから!」
その言葉で彼女の口は一瞬泊まった。
「なん‥でも? 何でもってホントに何でもしてくれるの??」
「えっ‥まぁ俺のできる範囲なら何でもやりますよ!」
何だ?急に態度が変わったぞ?
俺は嫌な予感をせずにはいられなかった。
「じゃあ‥‥いいよ」
「!!?それじゃあ‥」
「あーちょっと待って、但し、私の言うこと聞いてくれた後なら付き合ってあげる。今ここであなたがYESと言って私のお願いを叶えてくれたらってことならいいわよ」
何だろう、YESって言いたいけど何をやらされるんだ?金盗んでこいとか職員室忍び込んでテスト問題を盗んでこいとかそういうのじゃないよな!?
でも、ここまできたんだ。付き合えなくなるくらいなら‥
「わかりました。それで構わないです!で、あなたのお願いとは何ですか!?」
さっさと叶えてあげてこの人と恋人になりたい。そんな考えで頭は一杯だった。
「よく言ってくれたわね!嬉しいわ!」
彼女は顔を綻ばせた。ああ、笑った顔が一番可愛いなぁ。俺はそんなことを思っていた。
そして、俺は彼女の願いとやらを聞いた。それは俺の斜め上の想像を行くもので、彼女が何を考えてそれを言ったのか。俺には全く分からかった。