白が動き黒も動く、始まりの鼓動
北野山の修行を終えた俺は、爺さんに部屋に来るように言われ部屋に向かうと、なにやら爺さんと誰かの楽しく喋る声が聞こえてきた。「はははは、本当に久しぶりです親父さん。」と爺さんの口から親父さんとのフレーズが聞こえてきた。俺は驚き部屋を勢い欲く明け驚く爺さんと、もう1人は「君か、あの山以来だな。そうか、お主の孫かどうりで懐かしい匂いがした。」その声と顔を見た俺は大きな声で「何でここに居るんだよ。親父さん。」「おい、乙矢少し落ち着きなさい。」「はははは、驚くのも無理は無い。まぁ、少し落ち着きなさい乙矢君。」俺は、二人に言われ深呼吸をして落ち着き爺さんの椅子に座った。「で、なんで着ているのですか。親父さんはあの土地から動けなにのでわ?」「そうなんだ、私はもう死んでいるのだが。魂となってこの世の中と白と黒を見ていたところに、この青年が私の前に現れたのだ。」と、なんだか話が長くなりそうと、俺は思いつつ聞いていた。親父さんは、北野山で刀鍛冶をしていた。日本屈指の鍛冶屋とも言われ、数多くの名剣を作っていた。だが、「私は、最後の仕事に白鉄と黒鉄を作った。そう、私の技能を全て叩き鍛えたこの2振りには、乙矢君も知っての通り意識がある。」「俺も、不思議に思ったんだ。なぜ刀が喋るのかを。」「私の作る刀は、皆に絶賛されていたのだが。私はまだ、納得してなかったのだ。私の理想は刀心一体を追求し刀を作り、それなりの刀は作れたのだが何かが足りなかったのを感じ、北野神社で悩んでいたところに、神主が私に一言。」「会話ですね。」「この一言が、私に最高傑作を作れたきっかけになった。そして出来たのが、白鉄と黒鉄だ。二振りには、いろいろなことを見せ聞かせた。その学習能力は、とても早く言葉も喋れるようになった時に、私の命が尽きようとしていた。そう感じた私は、北野神社にこの刀達を奉納したのだ。」「元々は、この二振りは御神刀だったんだ。まぁ、俺も黒鉄と出会ったのは神社だったからこの話で納得だ。で、なんでここに?」俺は、話を戻すように話すが「この青年は、北野神社の神主であり、貴方のお爺さんの甥っ子であるのでね。私のことを、受け入れてくれたのだよ。」「ははは、親父さんの魂を受け入れる者はなかなか居なくてな。ワシが幼い時に、親父さんに出会いその話を聞き試したのだが。無理じゃた。ははは」俺の爺さんは、北野神社の次男で霊感がとても強く他の霊とかを、見たり払ったりとしていたらしい。そんな時に、北野山を散歩していると、古い建物が在ったというそこで親父さんに出会ったんだ。その時から爺さんは剣術と習い今に至る。そう、俺が北野山で修行の時寝泊まりで使っていた小屋は、親父さんが鍛冶屋で使っていた家だったのだ。爺さんが大人になって、今の剣術道場が出来たと同時に、親父さんと再会し立て直したというのだ。「そうだったのか。だから、黒鉄とも知り合いだったのか。」「まぁ、知り合いというか、ワシがこの地に道場を建てる時にこの土地から出土してきたんじゃ。ワシが、黒鉄を手にした時に話しかけてきたのじゃ。その時はまだ、黒鉄の封印は頑丈にされていたのじゃ。だが、声ははっきりと聞こえたのじゃ。」「そうだ、それで私のところに来たのだな。」「あの時は、ワシも驚いた。慌てて親父さんのところに行き確認をとったのじゃ。まさか伝説の刀がこんな近くにあるとは思わなくてな。そして、親父さんに聞き乙矢が出会った。あの神社に奉納したのじゃ。」「あの神社は、北野神社の分家みたいなもので、鍛冶屋の神様が祀られといるんですよ。私は、おじいさんにそのことを伝えたというわけです。」「そして、ワシはお前と出会ったのじゃ。乙矢よ。」と、昔話はここまでで、爺さんと親父さんの顔を見ると何かを思いつめたような表情と刀気がビリビリと俺に伝わってきた。「同したんだよ。急に・・・。」と俺は声をだし、唾液を飲み込んだ。「乙矢君、君は私に聞いたよね。何故、ここに来れたのかと。そう、私は北野山からはでれない。だが、ある条件を満たせばこうして自由に出入りができる。その条件とは・・・。」「ワシ達の封印が解けるときじゃな。」と親父さんは黒鉄を見た。「知っていたのか。」「何千年と生きていれば自然にわかる。」「それもそうだな。」「乙矢君、君が黒鉄に選ばれそして、白鉄と出会ったことで私は完全に力を使えるようになったのだ。この青年の力も乙矢君と同様な刀気があるので、私はこの子に話しかけ、体を借りたというわけです。」「でも、親父さん。」「なんだい。」「まだ、戦いは始まっていないのですよ。こんなに世間は平和だというのに。」俺は、親父さんに聞くと、お茶を啜り深く息を吐く「君は、まだわかっていないようですね。」親父さんが話しているのか何か雰囲気が「今は、親父さんではないのです。初めまして乙矢君。私は永木明宣ともします。で、話を戻します。貴方は本当にこの世の中は平和だと思いで?」「そうだと思います。」「そうですか、ですがそれは思い違いです。今貴方の目の前は平和でしょうが。ですが世界は、確実に混沌になっています。白鉄とともに、汚れを無くすという事」「それが、良い事じゃないですか。それで世界は平和になる約束を交わせたのですから。」と、俺は言葉を軽くはしった。「乙矢君、汚れがを無くすということは、言葉では綺麗な事に聞こえるが、現実に考えてみなさい。汚れとは人間に付いては慣れないもの、必ずしも大小の汚れを持っている。それを全て消すと白鉄の持ち主は言っているのです。」「それじゃ、」「そう、今君が想像した事が今現実に起きているのです。乙矢君、ニュースを見ましたか。」「いや」「でしたら、今テレビをつけなさい。」と、言われるままに俺はテレビをつけた。そこには、汚れを排除し神秘な空気に変える映像がそこには流れていた。「乙矢君。君はこれを見てどう思う。」俺は明宣の質問に答えられなかった。なぜ、それは汚れを排除された者の眼を見てしまったから、その者たちの眼には光はなく影もない何か抜け落ちたような表情で、空を見上げるその姿は何か虚しさを感じた。
「これが、彼らが求めている世界。人間がもつ感情そのものが彼らには汚れの根源と見たのでしょう。人間の感情がある限り、怒り憎しみ悲しみこれらはやがて大きな汚れとなるのですから。乙矢君、これでも君は世界が平和だというのか?」「・・・」人間の感情が汚れ・・・。俺には、そんなことは分からないが、感情をなくした人間のあの表情には、平和と言う言葉は似合わない。人間の感情を無くしたときはそれは、死だ。「乙矢よ、お前の父もおんなじ事を思っていたのじゃよ。」「オヤジが・・・。」「そうじゃ、お前の父も静かな所を求めていた。だが、こうも言っていた。」「なぁオヤジ。」「なんじゃ。」「人は感情を無くすと死んでしまうんです。感情こそは人の魂その者なのだから。」俺の父は五歳の俺を残し、交通事故で死んでしまった。それ以来じいさんが、俺の父代わりとして育ててくれた。俺の記憶の中では、優しく微笑む父の顔しか記憶にない。けれでも、じいさんは俺のオヤジを知っている。この話をしたじいさんの眼は、優しく潤んでいた。「乙矢よ、お前は似ているな。さすがに親子だな。」「じいさん・・・。」俺は嬉しかった。五年間しかオヤジと暮らしていなかった。オヤジが死んでからは、学校では参観日や運動会の時周りの親子が羨ましかった。けれども今日、オヤジと俺の親子だと、血の繋がりがあるのだと実感した。
その高揚感に浸っていたが、我に戻った俺は凛のやっていること、平和には見えなくなっていた。凛のやっていることは、人は一滴の血も流さない、そこだけを見ていれば争いはなく平和な解決方法と世界は認めるだろうな。けれども、少し視点を変えてみると、人の感情を無くすとそこには、何が残るのかな?温かな心を無くす、そんな世界は本当に平和だというのか、俺とオヤジの意志は体を動かし、この近くで凛が争いの種をまた鎮圧したと、テレビのニュースが伝えていた。
そこで見たものは、感情が全く感じないそれどころか、人が生きているのかという暖かさを感じない。まるで、白いキャンバスに黒の線で描かれた空白の絵のように、俺の目にはそう映り込む。「乙矢、怒りの感情をその感情は、今は伏せろ。でないと、お主もあの者たちと同じになるぞ」「黒鉄これが、白鉄と凛が・・・。」「そうじゃ、白き世界と言っておったようじゃがそれは、お主の言っておった温かな心そういったもの全てを無にすることじゃ。」
俺は黒鉄と、凛が制圧した街を散策していた。そこにはやはり、温かな気は全くなく人はいるのに空気みたく何も感じない。この街は大きな商店街のようだが、全く活気はない。「ここまでも、凛は全世界を無くすのか。」「そうです。久しぶりですね。黒の使い。」俺の耳に聞こえてきた声は、商店街に響き渡った。「その声は・・・。」と俺は後ろを振り向いた。「そんな顔をしないでくださいよ。この人達の血の一滴も流してないんですよ。これを、平和というものではないでしょうか。」「血は流れてはいない。だが、俺には感じる。ここに居る人たちの心の血が・・・暖かさが俺に伝えている。」「何をですか。黒の使い。貴方に何をこの者達は伝えているのですか。私には、この人達がなんの縛りも無く自由に暮らしているように見えますが。」凛は言葉を出すと同時に、白鉄を抜刀この俺に刃先を突きつけた。「黒の使い永木乙矢、君は私をどうしたいの。」「・・・。」「その目を見たらわかります。私の邪魔をするのですね。黒鉄とともに、私の作り上げたこの白き世界を貴方の刀で壊すつもりですか。」その答えを俺は、黒鉄を抜刀し刃先を凛に突き付けた。「俺は、お前のしていることはいいことだと思う。だが、気に喰わないことがある。この者達の感情を俺は黒鉄とともに取り戻す。」「はははははっは、良いでしょう。明後日初めて出会ったあの場所で、会いましょう。」
ついに、黒鉄と白鉄の使い手の直接対決・・・。俺の感情があの二人を超えられるのかわ分からないが、人々の感情のない世界の空白感は居心地が悪い。静かな所を求めている俺には、皆には良い事だと思うが、俺はそんな静かなところは何もない、白いキャンバスに一人いるみたいなそんなところは求めていない。生命が生き生きしている暖かさのある静かなところが、この世界の本当の平和と呼べるのでわないのかな。俺個人の願いなのかもしれないのだが・・・。「お主を、選んでよかった。その心を胸に明後日の対決の鍵となる。」俺は黒鉄を、抜き月灯りに照らす。黒真珠のように光る刀芯そこからは、温かな気が感じる。この気を皆に俺は伝えたい。「よろしくな。黒鉄。」
優しく光る夜空を眺めながら、始まる鼓動が聞こえる。