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Gift  作者: 如月双
Phase.1 入学編
6/77

Phase.1-4

ようやくファンタジー要素が入ってきました。

 いつから人は“それ”に手を出したのか。今となっては誰にも分からない。

 しかし、“それ”に手を出したが故に今の世界が存在するのもまた事実である。


 “それ”は遥か昔から存在したとされる。

 始まりに関してはただの落書きか、それに準じる何かであったのだろう。

 誰かが“それ”に力が宿ることを発見し、“それ”を研究。

 そして、“それ”に共通点があることを偶然発見し、まず、自分自身で試し成功したら自分以外の人間で試し、色々な現象を発現させてきた、と言われている。

 そこから今まで自分の身に起きてきた現象や不可思議な出来事を誇張して後世に伝えたとされる。

 今となっては昔の事過ぎて、学者も推測の域を出ない。


 そして、分かっていることと言えば、“それ”は才能が決定的な個人差を生み、そこからカーストを生んだ。

しかし、そのカーストは何代も続くものがあったり、上から下に転落する、下から上へと這い上がる者と言った入れ替わりの激しいものであった。


 そして近代で社会的な問題であると最下層出身でカーストの上位に成り上がった人物が議会に通告した事をきっかけに専門家なども駆け付け、日々対策に追われていた。

 それが何年何十年と続いた結果、それは誕生した。


 それの誕生により、才能依存の決定的な個人差が緩和され、才能に縛られなく人は“それ”を使えるようになった。

 そしていつの間にか人は“それ”を魔導と呼んだ。







 鏡介は教本を机に備え付けのノートパソコンの側に広げ、ぼんやりとディスプレイを眺めていた。

 教壇に立つ教師の説明を要約するとこんなものかと、半分聞き流していた内容を自分の頭の中で纏める。


「皆さんの持っているCT、正式名称Cast Terminalは、人々が魔導を使用する為の言うなれば機械にのようなものですね。化学における触媒ですかね。触媒って言うのは、その物質自体は化学変化を起こさないですけど、他の物質の化学反応を促進させる物質のことですね。

 中学校の理科の実験で過酸化水素水(オキシドール)から酸素を発生させる時に二酸化マンガンを加えましたよね。その二酸化マンガンが触媒に当たります。

 勘違いしないで貰いたいのはCT単体では魔導は使えません。

 あくまで魔導は自身で発動するものです。

 そしてあくまでCTは当初補助目的で開発された事を忘れないで下さい」


 そんなこと学年が上がるごとに言われてますから、分かってますよと口々に呟く声が鏡介の耳にも届いて来る。

 ちらりと視界を右に持っていくとCTをネットに繋ぎ、ネットサーフィンしてりメールを送ったりと授業を真面目に受けている者が少ないことに気付く。

 集団で何かを学んだことと言えば、効率的な人の殺し方と言った世界の裏側で起きている血生臭いもの。

 一応、普通に習うべき教養も教わっていたが、徐々に減っていく児童と、外見の変化していく児童の印象が強すぎる為、学べたかと言われれば微妙と答えるしかなかった。

 何もない夜、隣の部屋で男女が身体を合わせている時、凛に勉強を見てもらった時の事を思えば、平和な世界に暮らす人間はなんて贅沢なんだろうと平和ボケに呆れるしかなかった。

 それが悪いとは思えない。

 ただ、何も起こらないからこそ起こる弊害を目の当たりにしただけだ。


「今では携帯端末型が主流ですが、戦時中は武器型、戦後はカード型が主流ですね。

 と言う私も携帯端末型が主流の時代で生まれ育ちましたけど」


 ちゃっかり自身がまだ若いと暗に告げているところをみると意外に年齢を気にしているらしい。

 顔のパーツは整っているのだから出会いの機会が少ない教師を職業として選択しなければ早ければ今頃家庭に入っていたかもしれない。


 今、鏡介の手元に授業の話題であるCTはない。

 今まで使っていた武器型のCTを非殺傷の魔導に書き換えれば十分に使えるのだったが、凛が入学祝いとして新しいものを用意すると言って聞かなかった為、鏡介が折れて彼女の言う通りにしていた。



 物心付いた時から常に身に着けていたものが手元に無いのはいささか落ち着かない。

 無くても問題はないのだが、技術発展による不便な点が多く出てきた為、問題ないとは一概にも言えなくなっている。

 電子マネーや出欠席の確認と言った、様々な要素が今のCTに組み込まれているのだ、それを忘れたと教師に告げた時のあり得ないものを見たときの顔をされた時、鏡介は軽くショックを受けた。


 視界を前に戻すとノートパソコンがスクリーンセーバーを起動させ画面がブラックアウトして、中性的な顔が鏡のように映り込む。

 自分の顔を見て嫌なことを思い出した鏡介はマウスに触れ、スクリーンセーバーを解除する。

 するとディスプレイの端にメールを受信しましたとメーラーからのサインが表示される。

 それにポインターを合わせダブルクリックし、受信トレイを選択。


 差出人は習志野 弘。

 内容は、要約すれば一言ですむようなことにもかかわらず何故か婉曲的に書いてある。

 アドレスを教えて下さい。何故そう書かないと、読解力のある者は差出人の方へ視線を動かし、無い者は首を傾げるしかなかった。

 その様子を壇上で見ていた教師は自分が何か変なことを言ったないししたのではないかと必死に考えていた。

誤字脱字がありましたらご連絡下さい。

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