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Gift  作者: 如月双
Phase.3 生徒会編
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Phase.3-12

 一体今何が起きたのだろうか?


 自分は確かに冷たい瞳をした生徒風紀委員会―通称生徒会―役員が回避不可能の状態で剣を振るったはずだった。

 そして、手に握った剣は彼の身体を切り裂き、臓物を空気中に撒き散らしているはずだった。

 だが、何故、自分の右腕の感覚が無くなり、顔の右側が濡れている。

 大量の血液を撒き散らしながら、巨大な肉片が地面に落ちる音が耳に入り込んでくる。


 恐る恐る右下を見てみるとそこには先程までCTを力強く握っていた自分の右腕。

 鏡を見れば、自分の顔が蒼ざめていることだろう。

 それでも右腕を拾い、切断面同士を合わせ、治療を施している自分の冷静さを今は褒めてあげたい。


 切断面が非常に綺麗だったのが幸いか、それともこのCTの魔導が強力だったのか、そこまで考えるまで気が回らない。

 自然と足は後ろへ移動している。

 対して生徒会役員は何も変わらない。

 自然な一歩も、自分には死神が近付いているように錯覚していまうよう。


 ◇


 剣に触れるは一瞬で十分だ。

 指先、最低でも爪にでも触れればそれでもいい。

 感覚が鋭くなり、体感時間がゆっくりと流れる。

 引き延ばされた時間。


 その中で余裕をもって、魔導の剣に触れる。

 魔導の剣は疑似物質から魔力への変化を行うのは本人の認識下で行う為に、男が認識出来ない以上の速度で動く鏡介はその剣に触れることが出来る。

 鏡介の無意識に覆っている魔力と剣を構成する魔力が触れ合う事で、小さな火花と稲妻が走る。

 それを気にする事なく、剣に直接手を―指を伸ばす。

 小さな火傷が付く事を気にせずに剣に触れると、その剣速が次第に低下していき、しまいには動きが逆転し、剣が跳ね上がる。

 その瞬間に鏡介は、左腕に形成した鏢を加速させて投擲。


 肉を裂く抵抗さえ感じないまま、鏢は彼の身体を貫き、右腕を地面に落とす。

 そこで、体感時間の引き延ばしが終わる。

 右腕を拾い、切断面を合わせ治療を施している。

 その魔力の流れを見ると治療の速さに驚く。

 だが、その魔導式が軍用と分かれば、少し本気(・・)を出し、痛めつけても問題ないと考える。


 自分の中でスイッチをイメージし、自分自身を切り替える。

 昔の自分と今の自分は差異が生じているが、それも切り替えている自分が長くなれば長くなる程、その差は縮まり、やがて昔に戻るであろう。

 本当ならばそれは避けたい所だが、軍用の魔導を相手にするには一般用の魔導だけでは力不足である。

 それに対抗するならば、自分の力を少しだけ開放する必要と考えざるを得ない。


 治療を施し終えた彼は他の魔導を起動する為にCTに魔力を流しこんでいる。

 そんな一瞬の硬直さえも戦場においては命取りであるが、目の前の男は何だかんだ言って、鏡介にとっての非日常の世界にいる人物であるという事を認識する。

 地面を蹴り、自分自身に加速の魔導式を付加し、距離を一瞬で詰める。

 魔導で硬化させた拳を振りかぶり、鳩尾に向かって振り抜く。


 インパクトの瞬間、重ねた魔導式を起動させ、男に伝わるだろう衝撃を加速させる。

 しかし、その衝撃を加速させるタイミングが速過ぎた所為で、拳が振り抜かれる前に加速させたられた衝撃によって背中から落ちて地面を何mか滑って停止する。

 一年弱、戦場から遠ざかっていただけなのに、自分の動きがここまで鈍っているとまでは思えなかった。

 一度しみついた動きはどうあっても身体に残っていると思っていたので、タイミングがここまでズレるとは考えもしなかった。

 鏡介のイメージでは一撃で戦闘不能に追い込むはずだったが、今のでは浅い。

 自分の動きのイメージをそのまま身体で再現する。

 それが出来て当たり前の事が出来なかったという事実が彼を拳を振り抜いた状態で固まらせた。


 咳込み、時折口から血を吐き出しながらも立ちあがる男の姿を確認した鏡介は振り抜いた状態から体勢を元に戻す。

 今の敵は目の前の男ではなく、自分だった。

 このまま、イメージ通りの動きが出来ないのは自分とってマイナスでしかない。

 この世界では必要ない技能だと分かっていても自分が生きる為に文字通り必死になって頭に身体に覚えさせたことだ。

 鈍ったという事だけでそれを捨て去るようなことだけはしたくなかった。

 男がフラフラと立ちあがり、口に溜まった血液を地面に吐き捨てる。

 

「?」


 立ち上がった男―正確には男の持つCTに流れる魔力に違和感を覚え、注意深く見てみると、魔力の流れ自体が不安定なものになっている。

 魔導式によって、CTに流し込む魔力の量は変わってくるが、その流れ自体が不安定になることはない。

 一瞬だけ薬物の可能性も考えたが、それでは流れ自体に変化はない。

 あるのは流れる量が異常に増えるだけ。

 その流れる量に身体が耐えられず、ボロボロの状態ではあるが、その状態を薬が異常なしと脳に判断させる為に最終的には廃人街道をまっしぐらというのが一般的な見解だ。

 ただし、廃人といっても日常生活に支障を来すものではないというのがせめてもの救いだろう。

 とは言っても、やはり犯罪行為とされ、社会的には問題になっている。


 そういう事を思い出しても目の前の男にその様な症状は見受けられない。

 ならば、やはり軍用のCTなのだろう。

 誰かから受け取ったと言っていたが、この国では軍隊で用いられるCTは一般用の魔導を独自にアレンジしたものなので、厳密には軍用のそれを使用および保持していない。


 男が簡単に吐いてくれる思えない。

 ならば、吐かせるしかないと、上着の内ポケットに手を伸ばした。 

誤字脱字がありましたらご連絡下さい。


読んで下さり有難うございます。

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