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Gift  作者: 如月双
Phase.3 生徒会編
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Phase.3-9

パソコンの電源が急に落ちて、書きかけの今回の話が全部消えて2、3日地味に落ち込んだのは内緒。

 情報屋を名乗るにしては大した事のない情報でしかない。

 そう思わざるを得ないが、鏡介自身が同じ事をやれと言われても出来ない事をしているという事実に対しては何も言えなくなる。


 彼の態度を見て、習志野は自分の持ってきた情報では彼の眼鏡に叶わないと直感的に理解出来たが何も言わない。

 そもそも情報自体が人の視点が入ることで色々な齟齬などが発生する為、ねじ曲がって伝わってしまう事もある。

 今回の依頼は生徒会について。

 客観的なデータを持ってきても、それをどう見るかによって内容そのものが変化する可能性があるからだ。


 鏡介はCTを取り出し、金額の書いていない小切手データを習志野に送信し、感謝の言葉を告げると彼に背を向けた。

 習志野は受信された金額の部分が白紙のそれを見ると、固まるしかなかった。

 今までは自分が情報の量と質、そして掛かった労苦等から勝手に算出していたが、好きな金額を書けと直接ではないにしろ言われたのは初めてだった。

 法外な金額を提示しても恐らく、彼はその金額を支払うであろう。

 その誘惑が彼を蝕んでいた。

 お金では信頼を得られないそれは自分が良く知っていた。

 だが、自分の好きな金額を書き込めば、最新の機械などを導入し、これ以降の仕事がスムーズになる事は間違いない。

 さて、どうしたものだろうか。








 自分が行った軽々しい行動が一人の男を悩みに悩ませている事など知らずに鏡介は面倒だと思いながら、生徒会室へ向かう。

 そこに会長である神崎 神哉はいない。

 自分がいなくても役員は必ず集まるべきだと、そんなおかしな決まり事がある為に意味もなく生徒会室へ行かなくてはならない。

 行かなかったら行かなかったで、人の事を言えないはずの神哉からの糾弾。

 そんな事を何度も続けていると、交代で役員が教室にしばらくの間迎えに来ていたので諦めて、放課後にそこに向かっている。

 そこですることが無いのであれば、行く意味さえないのだが、連行されるように並んで歩かれる様はあまり人に見せたくない。

 撒く事は出来るだろうが、そんな事をする労力がもったいない。


 一種の拷問だと思えるような事を命令する神哉はと言うと、繁華街で女性を侍らせているのを一度見かけたことがある。

 それを副会長の真琴に伝えると、仕方ないと溜め息を吐くだけ。


「本日も何もなし」


 校内からのアラートは掛からず、平和な時間が無意味に流れる。

 鏡介はCTを操作してニュースサイトで気になったニュースを流し読んでいた。

 校内は平和であるが、最近どうも連続殺人が至る所で多発しているらしい。

 被害者に共通点や接点がない事から通り魔的な犯行として警察は見ているらしいが、何せ被害が広範囲である為に捜査も難航していると記されている。

 老いた人も若い人も男女関係なしに無差別に無作為に殺されている。

 共通している事と言えば、人間であると言う事だけ。

 殺害方法もバラバラで、何かを確かめるかのようにも取れる。


「物騒な世の中だな」


 思ってもない事を口にしていた。

 むしろ、物騒を物騒だと思えない世界で過ごしてきた彼にとっては大したことのない非日常(にちじょう)でしかないはずだ。

 そんな事を口に出来るようになったのは、この世界での暮らしに慣れたのかそれとも自分が衰えたのか。

 今そんな事を考えるだけ無駄だ。

 解散時間までまだ1時間以上ある、ニュースサイトの記事は粗方読んでしまった。

 何か校内で起きたら時間も少しは潰れるだろうと生徒風紀委員としては考えてはならない方向に思考が進み。


 派手な轟音が校舎を大きく揺さぶった。







 数時間前。

 一人の男はボロボロになった身体を引き摺りながら家路についていた。

 顔の殴られた跡が痛々しい。


「僕が何をしたって言うんだ」


 CTにチャージされていた電子マネーは違法のプログラムですべて吸い上げられた。

 アルバイトをしていないので毎月のお小遣いを少しずつ貯めているが、それもいつの間にか巻き上げられ、自分で使えるお金はほとんどなくなっていた。

 あいつらを見返してやりたい。

 しかし、自分にはそうするだけの才能も実力もない。

 だからこそ、こういった事が起きているのだ。


「才能があれば…」


 こういうときこそ、人並み以下の才能もしくは実力が欲しい。

 すぐにでも手に入れるには特別な薬が必要とされている。

 いまの自分の有り金ではそういったものは手に入れるには少な過ぎた。


「どうかしたのか?」


 意味もなく、通りかかった公園のベンチで項垂れていると一人の男が隣に座り彼に声をかけて来た。

 声だけを聞いていれば自分と同じくらいかプラスマイナス2歳といったところだろか。

 そんな人物が自分に何の用なのか分からないので彼は無意識のうちに警戒心を高めていた。


「私ならば貴方の願いを叶えられますよ」

誤字脱字がありましたらご連絡下さい。


読んで下さり有難うございます。

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