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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
2章 雪解けと瓦解
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1話 臨時収入 ・プレゼント

ギルドの受付嬢は、今日も書類や伝票の山に囲まれて忙しそうにしていた。

「ユウトさんティナさん、今日の物資運搬の手伝い、お願いできる?」

「おお、任せときや!」

俺は大きく返事しながら、ティナの方を見た。


ティナは肩に斧を担ぎ、静かにこちらを見つめるだけ。口数はほとんどない。

「…やる…」

「ほな、荷物はこっちの馬車に積むで。数は多いけど、二人なら大丈夫やろ」

受付嬢は荷物の一覧表を俺たちに渡す。


馬車の荷物は半分ほど積み終わり、俺たちは息を整えながら休憩がてら荷物の整理をしていた。


ティナが斧を肩にかけ直し、じっと俺を見つめる。

「…あの時…戦いで使ってた魔法…」


「ん?」

「…時を止めたり…敵の動きを遅らせてたやつ…あれ、何…?」


俺は箱の隙間に視線を落とし、軽く笑う。

「…なんや、そんなこと気にしてんのか?」


ティナは斧を握り直し、少しだけ目を細める。

「…気になる…」


俺は肩をすくめ、関西弁でごまかす。

「まあ…別に…教えんでもええけどな」


ティナは少し顔を傾け、疑わしそうにこちらを見つめる。

「…なんで…教えてくれないの…」


『…こいつ、まだ俺のこと全部信じてへんな…』

俺は心の中でそう思いながら、荷物の箱を手で押し直す。


「ほら、そんな深刻な顔せんでええって。俺の魔法は…便利やけど、使い方は…言うたら色々めんどいねん」


ティナは斧を肩に担ぎ直し、黙々と作業を再開する。

「…めんどい…か…」

そのわずかな言葉の裏に、怪しむ気持ちがにじんでいる。微かに眉をひそめたり目を泳がせたりすることで、疑念が読める。


俺はにやりと笑い、箱を整理しながら肩を軽く叩く。

「まあ…お前には、いずれ必要になったら教えたるわ。今は荷物積む方が先やろ?」

「…うん…」

ティナは短く答え、また黙々と作業に戻る。


少しバツが悪くなった俺は、冗談で口を滑らせた。

「まあ…※魔竜と戦うときには教えたるわ〜」


※(魔竜とは)ただの巨大な竜とは違い、自然界や魔法の力を異常に宿しており、一国を滅ぼすほどの戦力を持つ存在


ティナは一瞬、肩の斧を握り直して俺を見つめる。

「…魔竜…?」

「戦ったこと…あるの…?」



俺は思わず息を呑む。

『ま、まさかな…』

心の中で固まったまま、でも表情は平然を装う。


「…いや、まあ、話半分でええわ…今は荷物積む方が先やしな」

俺は心の中でそう自分に言い聞かせ、軽く肩をすくめた。


ティナは無表情のまま黙々と荷物を整理し、でも目はどこか遠くを見つめている。

『…あの子…一体どんな過去を背負っとるんや…』

疑念と興味が入り混じった思いを抱えつつ、俺は荷物を押し直す手を止めなかった。



──────────────


荷運びの作業を終え、ギルド受付嬢から報酬を受け取った俺とティナ。

「お疲れさん。今日はちゃんと馬車の荷物、全部運べたね」


「…当たり前…」

ティナは肩に斧を担ぎ、無表情のまま俺の隣に立つ。


俺は小さく笑いながら財布を取り出した。

『まあ、今日はティナに奢りたかっただけやけどな』



「ほな、せっかくの臨時収入やし、装備を見に行こか」


「…必要…?」


「せや、せっかくの収入やし。せやけど俺の金で買うんや」

ティナは斧を肩に担ぎ、黙って俺の後ろに付く。街の人混みに紛れると、まだ少し落ち着かない様子で目をきょろきょろと泳がせる。


露店に近づくと、俺は早速関西弁で値切り交渉。

「おばちゃん、このバッグ、ちょっと安うならへんか?」

「まあ…いいけど…」


「そやろ? ほな二つでこれくらいにしてくれや!」


おばちゃんは少し困った顔をしながらも、笑って折れてくれた。俺は上機嫌でバッグを受け取り、ティナに手渡す。


ティナは受け取り、ぎこちなく手で触れながらも荷物を肩にかけ直す。



「…使える…」

「せやろ、やっぱ俺の目利きやで」





商店街を歩いていると、街ゆく人々がちらりとティナを見て、小声で囁き合っている。



「…隻腕…」「村出身の変わり者らしい…」



俺の胸の中で怒りがじわりと湧き上がる。

『いやいや…なんで俺、ティナのことでマジメにキレとんやろ…』

でも目の前のティナを守るため、声を張った。

「おい、誰が何言おうと関係あらへん! ティナに口出すんやったら、俺を通ってからや!」



ティナは無表情のまま俺の後ろに立つが、わずかに目を細める。


「……」


何を思ったのか分からないが、ちらりと俺を見た。


俺は肩に軽く手を置き、ティナに小声でささやく。

「…ほら、もう大丈夫や。安心して歩けや」

「…うん…」

ティナは短く答え、また黙って俺の後ろを歩く。


街の雑踏は賑やかだが、俺たちの間には少しだけ静かな空気が流れた。

今日の臨時収入で買う装備は、ただの道具以上に、二人の距離を少し縮める時間になりそうだった。


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