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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第1章 始まりの日
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第6話 オーク討伐クエスト ・ギルド登録を終えて




森の奥深く、Cランクオークが縄張りを守るように立ちはだかる。

周囲の空気が一変し、森のざわめきも一瞬止まったかのように静まり返る。


「……やっぱり、簡単には行かんやろな」

俺は小声で呟きながら、斧を構えたティナを見つめる。


ティナは斧を肩に担ぎ、微動だにせずオークを見据える。

その赤い瞳は冷たく光り、まるで感情をほとんど表に出していない。


「まずは、俺の魔法をやな…っておい!!」


自分の支援魔法の詠唱をよそに、ティナは一瞬で敵の懐に潜り込み───────


斧を振り下ろす。

一撃でオークの腕が地面に叩きつけられ、次の一撃でその巨体はバランスを崩す。

あっという間に、圧倒的な力で戦場を支配していく。


俺は本来なら全力で支援魔法を使いたいところだが、ティナの動きを邪魔したくない。

ほんの少し、「筋力増強」の支援魔法を使うだけにとどめる。

オークの足が一瞬止まったその隙に、ティナはさらに斧を振る。


しかし、斧がトドメを狙う直前、ティナの目が僅かに揺れる。

オークが子供を背後に隠しているのを見つけたのだ。


その瞬間、幼い村で、守れなかった過去の光景がフラッシュバックする――

師匠の死、村人たちの悲鳴、あの時握った斧の感触……


一瞬の油断。

オークが反撃し、肩に一撃が入る。




「…ティナ!」




俺は慌てて「時空間」支援魔法を重ね、敵の動きをほんの一瞬だけ止める。



…出来ればこの魔法は使いたくなかった。




斧を握り直したティナは、わずかに息を整え、再び冷静を取り戻す。


斧が振り下ろされる。

オークの身体、そして子供ごと斧に巻き込まれて言った。

ティナは微動だにせず立ち、まるで戦闘前と同じ表情に戻る。



その様子を見ていたギルドマスターは、遠くから視線を細める。

「……あの動き……伝説の戦士の面影……間違いない……」

過去の英雄の影が、ティナの冷静かつ圧倒的な戦闘に重なった瞬間だった。



ティナは無表情で斧を肩にかける。


けれど、ほんの僅か――

過去の影を振り切るように、深呼吸しているのが分かった。




─────────────────────


ギルドに戻ると、マスターはにこやかにティナに向き直った。


「ティナ、君をEランク冒険者として正式に登録する。…おめでとう」


ティナは微動だにせず、淡々と答える。


「……わかりました」


「ユウト」

マスターは俺を見て言う。

「君も同行者として認められている」


「おおきに、任せときや」



その日の午後、俺たちは王都ブレイビアの商店街を歩いていた。

石畳に並ぶ店舗、魔法灯に照らされる人々、冒険者たちの活気――

まさに王都の喧騒と繁栄が混ざった通りだ。


「……いろんな店があるな」

ユウトは笑いながら、片手で地図を見つつ歩く。


ティナは、肩にかけた師匠の斧を軽く握りながら、静かに周囲を観察する。

人混みに慣れないのか、少し緊張した背筋のまま歩いている。


「よし、装備調達や。まず防具屋、次に薬屋、最後に武器屋やな」

「ティナ、何か欲しいもんあるか?」



「……別に」

ティナは斧を軽く肩で支えながら、淡々と答える。

商店街の喧騒にはまだ慣れていないようだ。



武器屋に着くと、俺は笑みを浮かべて言った。


「せっかくやし、お祝いに新しい斧、奢ったろか?」


ティナは肩で軽く斬るように返す。


「……いらない」


「え? どうして?」


「これは、私の斧だ」

肩にかけた斧を軽く叩く。

「師匠が、私に託したもの。替えは効かない」


俺は少し驚く。

「……そ、そうか。でも、金はあるし、祝いやからなぁ」


ティナは無表情で言う。


「……気持ちはありがたい。けど、譲れないものは譲れない」


ユウトは少し照れ笑いを浮かべつつ、頷く。


「わかったわかった……しゃあないな」

「そやけど、その師匠の斧、ほんまに大事にしてるな」


ティナは軽く斧を肩にかけ、頷くだけだった。


「……当たり前」



その後も商店街を巡り、ティナは鎧や冒険用の小物を淡々と選ぶ。

ユウトはできるだけ軽口を交わして、彼女の緊張をほぐすように心掛ける。


石畳の上、二人の足音だけが響く――

王都ブレイビアの喧騒に紛れ、少しずつティナが俗世のリズムに馴染み始める瞬間だった。

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